「それでね。 二人が結婚して、ひなたたちが生まれて。 もう・・どんだけあんたたちを愛してきたかってことも見てるし。 ひなたはいっぱい幸せを貰って育ててもらったから。 きっと幸せな恋ができるよ、」
南は優しくそう言った。
幸せな恋かあ・・・。
ひなたにはまだまだわからなかったが。
両親がどれだけの愛情を自分に注いでくれたかは
わかっている。
「おまえ~~。 ひなたに妙なことを吹き込んだらアカンで~~。」
いつの間にか後ろにいた志藤がくわえタバコでペシっと南の頭を叩いた。
「いったいなァ・・もう。 妙なことってなに? あんたの女癖が悪い話とか?」
南がニヤっと笑うと、
「余計ないことをいうなっつの!」
また、叩かれた。
「ちょっとぉ~。 パパ、ヤバいって。 ママ怒るとすんごい怖いし~~、」
ひなたにも笑われた。
「だからっ! おれが何をしたってゆーんだっ! ほんまにもうこの頃は夜も早く帰ってきて家でメシも食ったりしてるのに・・」
「ようやくマイホームパパになれたな。 もう男としては終わりやな、」
「終わってへん!」
妙なところで威張って、二人を笑わせた。
「おじゃましました~~。」
浩斗が帰ろうとすると、
「またおいで。 子供がいっぱいいてうるさいトコやけど、」
南が家の主のように笑って手を振った。
「ほんっま・・腹立つし、」
志藤は忌々しそうに彼女を見た。
「あ、あたし。 ノート買ってくる。 そこまで一緒に行こう、」
ひなたも慌てて靴を履いた。
「また無駄遣いする気だな、」
浩斗は笑った。
「うるさいな・・・。 この前はあんたがよけいなものをすすめるからだよっ!」
いつものように口げんかをしながら二人は出て行った。
「けっこうお似合いとちゃう~?」
南は二人を見送ったあと、言った。
「すっごくいい子なんです。 ウチで子供たちの面倒もよく見てくれて。 男の子っぽくて、でも優しくて。 母子家庭なんでお母さん忙しいからたまにウチでゴハンも食べたりするんですけど。 まっすぐないい子になったなーって。」
ゆうこは浩斗を褒めちぎった。
「ま、でも。 納得いかない男がひとり?」
と、南は志藤を指差して笑いを堪える格好をして笑わせた。
「なあ・・」
浩斗は歩きながらひなたに声をかけた。
「ん?」
「・・・マジで。 ほんとマジな話なんだけど、」
「なに・・?」
いつもと違う彼の様子にひなたは怪訝な顔をした。
浩斗はピタっと足を止めて。
「おれとつきあってくんない?」
思いっきり真正面からひなたに言った。
「えっ・・・・」
大きな目がもっと大きくなって。
「ひなたとつきあうなんて。 なんか学校の先輩とかに・・つるし上げられちゃいそうだけど!! でもっ。 おれは・・ずっと、ずっと前からひなたが好きだったんだ!」
つ・・
つきあうって・・
ナニ?
ひなたは頭が混乱した。
ちょっとは意識することはあったとはいえ。
本当に小さい頃からの付き合いの彼と
そーゆー意味でつきあおうと言われても、正直どうしていいかわからなかった。
浩斗はじっとひなたを見つめたあと、いきなり手をぎゅっと握ってきた。
「なっ・・ナニっ!?」
それには激しく驚いた。
「だからっ! こーやって! 手え・・つないで歩きたいとか! そーゆーことだよっ!」
若干、赤面しつつ
怖いもの知らずの少年は、思いっきりの『愛の告白』をした。
ひなたはもう
ドキドキがとまらなくて、身体の中からガーっと熱くなるものを感じていた。
またしても浩斗に告白されるひなた。 幼なじみとしか思えなかった彼ではないようで・・・
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