Only one love(8) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「来月の予定表です。」

練習にやって来た有吏は楽団員ひとりひとりにコピーを配っていた。


そして

茜に手渡す時は

少しドキドキする。



「ありがとう、」

いつも彼女は目を見てニッコリ笑ってくれる。


「・・ソロの方の練習は順調ですか?」

有吏は彼女に言った。


「うん。 なんかね。 すっごいやる気が出てきたってゆーか。 どんどん音も良くなってきてる気がして、」



ついこの間まで

少し落ち込んでいたような彼女とは

全く違って

明るい表情だった。



そんな彼女を見て

有吏はホッとした。



「あ・・ねえ。 今日はこの後会社?」

そう言われて


「いえ・・。 もう8時ですし。 玉田さんからは直帰していいって言われています。」

有吏は時計を見た。



「ゴハン。 食べて行かない?」



いきなり誘われて



「え・・・、」

思わず胸を押さえた。


「この前のファミレス。」

茜はニッコリと笑った。



「やっぱりハンバーグ、好きなんだね。」


この前は茜が勝手に注文してしまったのだが、有吏はデミグラスハンバーグを注文し

茜はそれを見てクスっと笑った。


「え・・あ。 ハイ。 好きなものが・・カレーとかエビフライとか。 ハンバーグで。 友達から子供の好きなものばっかじゃんって笑われて。」

八重歯が見える口元をほころばせた。


「なんか瀬能くんっぽいよ、それ。」

茜は笑う。


「夏にはハタチなんですから。 いちおう、」


「ごめんごめん。」

茜はパスタを食べながらクスっと笑った。



そして



「ねえ、」



フォークを置いて改まったように有吏を見る。



「え?」



「・・・結城さんって。 どっから来た人なの?」



結城の名を出されて、少し戸惑った。



「ええっと。 元々、聖朋音大の助手をしていたって聞きました。 ウチの北都マサヒロさんや沢藤絵梨沙さんと昔コンクールも一緒になったとかで。 けっこうコンクールで優勝したりだとかの実績はあったみたいです。」


「なんで・・ピアノ辞めちゃったんだろ。」


「さあ。 ぼくはよくわかんないけど。 前に玉田さんがチラっと言ってたのは、真尋さんのピアノを見てショックを受けて辞めたとか・・」


「へえ・・そうなんだ。」


「結城さんってすっごいナゾが多い人で。 ぼくもよくわかんないんです。 実家は新橋の老舗の料亭だとか・・そんなことしか。」


「新橋の・・料亭。」


「営業の仕事はすっごくできるみたいで。 南さんも感心してました。」


「そう・・・・」

茜はグラスの水を少し飲んだ。




「年はいくつなの?」


「30くらいだったと思います。」


「結婚とかしてるのかな、」


「いいえ。 独身って。 彼女もいないとか言ってたんですけど。 みんな疑ってましたよ、」

有吏は笑ったが、茜は真面目に視線を遠くに置いていた。



そこでハッとして



「結城さんがどうかしたんですか?」

と言った。


「あ・・ううん。 なんか・・不思議な人だなって、」

我に返って笑ってごまかした。






結城は自分の上着にそっと手を伸ばして、タバコを取り出した。



「タバコ。 吸うの? 見たことなかった・・」

ベッドに横たわった麗子が言う。



「・・たまに。」

上半身を起こして、タバコに火をつけた。



「全然、タバコの香りしなかった。 キスしてるときも、」

麗子も身体を起こして彼に寄り添った。



ベッドサイドにあった灰皿を引き寄せながら

「今度の定期公演の構成は・・ちょっと地味な感じだな。」

結城はポツリと言った。



「でしょ? あたしも思ったんだけど。 指揮者の澤田さんはあんまり派手な演奏とかさせないから。 あたしはもうちょっと華やかにしたほうがいいと思うのに、」

麗子は以前から不満だったらしく、一気に結城にそれをぶつけた。



彼はふっと笑って

「・・不満の多い女王様だな、」

タバコを灰皿に押し付けた。



「ひどい、」



そうしてまた彼女を抱きしめて、キスをした。


茜が結城に思いをつのらせている頃・・彼は・・


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