Star gather(10) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

当面の大目標だった

真尋との契約は無事に済み、彼はフェルナンドと共にウイーンに帰った。




それにしても。

キョーレツな人だったなァ。




ゆうこは嵐がやってきたようなこの1週間を思い出す。



でも

あとは。

クラシック事業の立ち上げのプランが取締役会議で通れば・・・。



ゆうこは一生懸命、企画書を書く真太郎を見ながら思った。



専門的なことを相談するために、沢藤絵梨沙の母・沢藤真理子と会うことになった。
真太郎とゆうこは彼女が講師を務める音大へ向かった。




「初めまして。 沢藤です。」



その人は

40後半くらいだろうか。

姿勢のいい、背の高い美人だった。



あの

『美人ピアニスト』と誉れ高い絵梨沙とよく似ている、と真太郎は思った。




「北都真太郎と申します。 お忙しいところ、ありがとうございます。」

真太郎は頭を下げる。


「ホクトエンターテイメントの白川ゆうこと申します。」

ゆうこも頭を下げた。


「どうぞ。 お座りになって。 今、美味しい紅茶を淹れますから、」

「い、いえ、おかまいなく。」




二人は遠慮しようとしたが、

「私、お茶の時間はきちんととるようにしてるの。 学生たちも呼んでここでよくお茶にするのよ。」

と、品のいい笑顔を向けた。



彼女の入れてくれた

ダージリンティーは

香りが良くて。

ゆうこはホッとした気持ちになった。



「絵梨沙から事情は聞いています。 ホクトエンターテイメントでオーケストラを作りたいとか、」

真理子から切り出された。


「はい・・・。 そして、クラシックの専門の部署も立ち上げたいのです。 来月の初めに取締役会に掛けられて・・決定すると思うので。 もっと具体的なことを詰めておきたい、と思いまして。 ぼくはクラシックはよくコンサートに行ったり、CDを聴いたりしてましたけど。 なにぶん素人ですから。 先生のお力を借りたい、と。」

真太郎はざっと説明をした。


「若くても腕のいい演奏家はたくさんいると思うんです。 若々しくて、瑞々しいオケを作りたいんです。 だから一般オーデションでも学生さんたちにも参加してもらって、」


さらに続けると、


「それは私たちにとっても嬉しい話です。 こうやって音楽を勉強しても、演奏家としてやっていける子は一握り。音楽で食べていくのは大変だから。 才能のある子もその力を発揮できる場がなくて。 仕方なくやめることになったり・・。 そんなオケができたら、素晴らしいでしょうね、」

真理子はニッコリと微笑んだ。



「もちろん、絵梨沙さんもこの部署に所属してもらって。 オケと競演したり、ソロで活動してもらったり・・。いろんなプロデュースができます。」

真太郎は嬉しそうに思いを語った。




「そういえば。 あなたの弟さんの・・真尋くんも契約したんですってね。」



「弟を・・ご存知ですか?」

真太郎は意外な顔をした。



「大学1年生の時の夏休みだったかしら。 ウチの大学のオケの合宿があってね。 ミニコンサートもかねているんだけど。 そこに娘を呼んだら、マークが・・・ああ、元のダンナがね。 彼も一緒に連れて行ってくれないかって、」




「え・・・」




「すっごく。 才能のある子だからって。 絵梨沙よりも。」



真理子は紅茶に口をつけた。


真太郎もゆうこもハッとした。



「娘とはいえ。 絵梨沙はずっとあたしが指導してきて。 子供のころからコンクールは優勝を何度勝ち取ったかわからないほどの実力があったの。 あたしは彼のこと全く知らなかったから、ジョーダンでしょって。 思っていたの。」

と、クスっと笑った。



「でもね。 彼のピアノを最初に聴いたとき。 ほんっと・・びっくりして。」




真太郎はあのDVDを見た時と同じ感想をこの人も持ったのだろう、と思った。



「口では言い表せない、なんだかわからないけど・・・人の心をひきつけてやまないというか。 あんな表現力を持った子は、ウチの生徒にもいないし。 ・・絵梨沙にもないものだったわ、」


ゆうこは

改めて真尋のピアニストとしての腕を思い知る。




「彼と契約したのは正解ね。 たぶん・・あと1年位したら、海外のプロダクションからも引っ張りだこよ。 NYの公演も素晴らしかったって。 マークも言っていたし。」



その言葉に

真太郎は自分の判断が正しかった、との想いが胸いっぱいに広がった。




「マークはね、絵梨沙にないものをたくさん持っていた真尋くんと競わせるようにして、彼女に人の心を揺さぶるピアノを弾かせたかったんだと思うの。 だから、二人はいつも一緒に練習をして、二人で試験のためのデユオを組み・・。 そうやっていくうちに、惹かれあっていったんだと思うけど。」



「兄である自分が言うのもなんですけど・・弟は本当に変人で。 絵梨沙さんとおつきあいをしているだなんて、今でも信じられなくて、」

真太郎は恥ずかしそうに言った。



すると真理子は明るく笑って、

「絵梨沙だって立派な変人よ。  ・・ピアノばっかりだったし、」

と言った。



そして、



「真尋くんと付き合うようになってからの絵梨沙は変わった。 人間としても演奏家としても。 それは親としては本当に嬉しいこと、」



ひとりの母になり、彼女は優しい笑顔を浮かべた。




北都フィル創設に重要な関わりを持ってくる絵梨沙ママも登場です。

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