「虎に翼」 第40回
第８週「女冥利に尽きる？」
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寅子たちは、直言の工場の
社員寮に引っ越しました。
優三） あっ、お待たせしました。
寅子） 小泉さん。
小泉） 先輩、
ご無沙汰しております。
女子部の後輩が、
引っ越した登戸まで、
訪ねてきてくれました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（引っ越す前に東京の家の
前で撮った家族写真）
小泉） いい写真ですね。
寅子） ありがとう。
それで小泉さん、今日は？
小泉） 実は･･･女子部が閉鎖
されることになりました。
寅子） そう。でも高等試験は
受けるんでしょ？
小泉） 今年は、高等試験自体
が行われないらしく･･･。
寅子） そう。
小泉） 先輩の後に続けず、
申し訳ありません。
寅子） そんな頭上げて。
小泉） 高等試験が再開された
暁には、また必ず、挑戦する
つもりです。
寅子が10年以上かけて
切り開いてきた、
女性法曹の道は、完全に
途絶えてしまいました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（工場の炊事場で夕飯を
作るはるや工員の家族）
女性） 塩お借りしても
よろしいですか？
はる） あっ、は～い。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（屋外の作業場で遊ぶ子供たち）
これでいいんだ。
心に蓋をして、
忘れる･･･それだけです。
寅子） ごはんですよ～。
直言） おお、トラ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（直明からのハガキを、
家族写真と一緒に飾るはる）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
家族と共に、
この戦争をまずは乗り切ろう。
（防火訓練に参加する寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜多摩川の河原＞
優三） よいしょ、こっち来い。
寅子） やだ？
優三） あ～
寅子） あ～。
アハハハハ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
そう思っていた矢先でした。
男性） ごめんください。
寅子） は～い。
男性） 佐田優三さんの
お宅はこちらでしょうか？
寅子） はい。
男性） おめでとうございます。
（薄桃色の紙を見る
表情のない寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
花江） おめでとうございます。
優三） ありがとうございます。
直言） 優三君、出征前に、何か、
しておきたいことはあるかい？
優三） そうですね･･･。
あっ、じゃあ明日、少しだけ、
トラちゃんとお出かけさせて
もらえたら。
寅子） えっ。
直言） そんなことで、いいのかい？
もっと、ワガママ言ってくれても、
なあ？
はる） そんなことが、
いいんですよね。
優三） はい。
花江） 優未は私が見ています
から、安心して。
（ぼんやり優未を抱いている寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
この日がいつか来ることは、
寅子も分かっていました。
私は、この人に何をして
あげられるんだろうか。
いや、何かしてあげられ
たんだろうか。
（優未に添い寝をしている優三）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜青空の河原＞
（弁当箱を開ける優三）
優三） うわ･･･！
全部おあがり。
優未にお乳あげないとね。
トラちゃん？
（土下座をする寅子）
寅子） ごめんなさい！
優三） えっ！
寅子） 私のワガママで、私なんか
と結婚させてしまって。普通の
結婚生活を送らせてあげられな
くて。あと、高等試験を諦めずに
続けてくださいって、ちゃんと、
説得しなくてごめんなさい。
あと･･･。
優三） 待って！
待って待って、待って！
落ち着いて、深呼吸。吸って～
吐いて～吸って～吐いて～。
トラちゃん、どうしちゃったの？
寅子） 私、自分が、弁護士として
出世したいばかりに、優三さん
の優しさにつけ込んで、結婚して、
でもすぐやめて、優三さんに甘え、
て子供作って、結局優三さんは、
戦地に行って、大好きな優未とも、
離れ離れになって･･･。だから、
私にできるのは、謝ること、くらい
で･･･。
優三） はて？
寅子） ちょっと･･･ふざけないで！
優三） フフフフ･･･。
トラちゃんの「はて？」、
便利なんだね。
寅子） 真剣に話してるのに！
優三） ハハハハハ。
(立ち上がる寅子）
優三） トラちゃんが僕にできる
ことは、謝ることじゃないよ。
寅子） えっ？
（寅子の手を握る優三）
優三） トラちゃんができるのは、
トラちゃんの好きに、生きること
です。また弁護士をしてもいい、
別の仕事を始めてもいい。優未
のいいお母さんでいてもいい。
僕の大好きな、あの、何かに無
我夢中になってる時のトラちゃん
の顔をして、何かを頑張ってくれ
ること。いや、やっぱり頑張んな
くてもいい。トラちゃんが後悔せ
ず、心から人生をやりきってくれ
ること。それが僕の望みです。
寅子） 何で･･･
そんなこと言うんですか。
もう、そんな･･･もう帰って
こないみたいな･･･。
もう会えないみたいなこと
言わないでよ。
優三） フフ･･･ごめん。
そんなつもりじゃなくて。
うん･･･帰ってくるから。
トラちゃんと優未のもとに、
必ず。
寅子） うん。
優三） よし。
トラちゃん、食べて。
（弁当箱の中に
かぼちゃ饅頭が2つ）
（優三に一つ差し出す）
寅子） おいしいものは一緒に。
優三） だね。頂きます。
寅子） 頂きます。
優三） ん～っ！
寅子） アハハハハ。
優三） おいしい。フフフ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夜＞
（優三と優未が眠るそばで、
縫い物をする寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜出征の日＞
優三） 気持ちよくなったねえ、
優未。ハハハハ。
（優未のおむつを取り替える優三）
（微笑み、2人を見ている寅子）
（抱き締めた優未に
顔を埋める優三）
寅子） 優三さん。
優三） うん、もう少しだけ。
寅子） あの･･･。
（五銭玉と十銭玉を縫い付けた、
布を差し出す寅子）
寅子） これ。
優三） えっ？ 作ってくれたの？
寅子） 虎は千里を行って千里を
帰る･･･。五黄の寅生まれの私
が、力を込めた、お守りです。
（布には31個の赤い結び目）
優三） 心強いなあ･･･。
（両手で包み、胸にあてる優三）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜表＞
（優三にカバンを渡すはる）
優三） はるさん、
ありがとうございます。
（優未を抱いた表情のない寅子）
（ほっぺたを掴み、
変な顔を作る優三）
優三） トラちゃん。
（優三を見る寅子）
優三） あれ、駄目だな。ハハッ。
トラちゃんみたいにいかないな。
寅子） らしくないことしちゃって。
優三） ごめん。あと･･･
ありがとうね、トラちゃん。
（優三を見つめる寅子）
優三） トラちゃんと優未を頼みます。
はる） どうぞ、ご無事で。
優三） 優未と遊んでやってね。
2人） はい。
優三） では、行ってまいります。
（お辞儀をし、歩き出す優三）
直言） 佐田優三君の
武運長久を祈って、万歳！
一同） 万歳！
直言） 万歳！
一同） 万歳！
直言） 万歳！
一同） 万歳！
寅子） お母さん、お願いします。
お父さん。
（駆け出す寅子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
寅子） 優三さん！
（振り向く優三）
（「ほ」の口で目を剥く寅子）
（笑い声）
（変な顔でお返しをする優三）
（笑い声）
（涙をこらえ、
頑張って笑う優三）
優三） 行ってきます！
（歩き出す優三）
（涙をこらえ、優三の後ろ姿を
いつまでも、いつまでも目で
追う寅子）
昭和19年。
この年の冬には、日本本土
各地への爆撃が本格化。
日本はいよいよ、窮地に
追い込まれていくのでした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
寅子が手作りしていたお守りの、５銭
玉と10銭玉の意味がわからなくて･･･。
５銭は死線(４銭)を、
10銭は苦戦(９銭)を越える。
という意味だったのね。31個の結び目
は、寅子の年の数だったことも、ネット
情報で知り･･･いろいろあるのね～と。
いや～寅子と優三の変顔の別れの破
壊力たるや･･･中の人が上手すぎて！
頑張って笑顔を作る優三の泣き笑いが
素晴らしすぎた。ヤバイよヤバイよ・・・
トゥリー トゥ ワン ゼロ！
あさイチのツヨポンに、救われたよ～。
ありがとう。気持ちが切り替えられた。
優三さん、どうかどうか帰ってきて～！
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