「ブギウギ」 第112回
第24週「ものごっついええ子や」
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昭和26年（1951） 11月
羽鳥善一、作曲二千曲記念、
ビッグパーティーの日が
近づいてきていました。
スズ子） あの～先生、まさか、
こないなことで、茨田さんとワテ
を呼んだんとちゃいますよね？
麻里） ごめんなさいね。2人とも
お忙しいんだからって言ったん
だけど・・・。
善一） 何を言ってるんだい。
これは大問題だよ。
よく見てごらん。
このすばらしいポスターを。
こんなのが2つも出来上がって
しまったんだ。そりゃ頭を悩ま
せるってもんだよ。いや～どっ
ちかは三千曲記念の時に残し
ておきたいんだが・・・。
りつ子） やだ先生、そんな先の
ことまで考えていらっしゃるの？
善一） 当たり前でしょう！ それに
君たちなしでは僕の音楽人生は
語れない。君たちには選ぶ義務
があるんです。
りつ子） まあ。
スズ子） 義務って・・・。
ガムやったら欲しいでっけどね。
あっはっはっはっはっは！
すんまへん。せやけど、どっちも
ホンマによう出来てますさかい、
どっちでもよろしいんとちゃい
まっか？
麻里） ねえ。
善一） 何を言ってるんだい！ こう
いうところから全て楽しむのが、
真のエンターテイナーなんだよ。
これからの歌手っていうのはね、
歌ってりゃいいってもんじゃない
よ君たち。全てにおいてセルフ
プロデュースしなきゃ。
りつ子） そこはしっかりやって
ますから。この方と違って。
スズ子） 出た！ 得意の嫌味。
善一） よし、こっちにしよう。
麻里） 結局自分で決めて
るんじゃない。
善一） やっぱりどう見てもこっちだ。
スズ子） こっちですね？
善一） やっぱこっちにしようかな。
スズ子） こっちですね？
善一） こっちかな？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜喫茶店＞
店員） お待たせいたしました。
スズ子） おおきに。
ホンマ先生はいつまでたっても
お子ちゃまなとこありますなあ。
りつ子） アイスクリーム
お代わりしてるあなたも、
立派なお子ちゃまよ。
スズ子） 茨田さんかて、
ホンマは欲しいくせに。
りつ子） でも、先生があんなに楽し
んでるなら、私たちも楽しまなきゃ
損よね。
スズ子） そういえば、今日はポスタ
ーに夢中でしたけど、ター坊になん
ぞ余興を考えとけ言うてたらしいで
っせ。
りつ子） 柴本君、余興するの？
スズ子） んなわけありまへんがな！
あの子は何の芸もありまへん。
ワテらですがな。
りつ子） あら、私たちが？
そうねえ・・・。
だったら、先生があっと驚くような
ことしてやりましょうよ。
スズ子） あっと驚くことって、
何でっか？
りつ子） そんなの分かんないわよ。
あなたが考えなさいよ。
そういうの得意でしょ。
スズ子） 驚くことなあ。
（ウエハースとアイスクリームを
食べるスズ子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
大野） 驚ぐようなごどって言われでも、
そったなごど私には分がりませんね。
わだしの人生はもう、何があっても、
驚ぎませんがら。
スズ子） いやいやそんな深刻な話や
愛子） 待って～。
スズ子） は～い。
タケシ） 手品なんかどうです？
スズ子） おっ！
タケシ） 僕ね、こういうこと
できるんですよ。
見てください。小銭があります。
うぇい！
（手の中のコインが消える）
スズ子） えっ！
大野） おっ！
（タケシがクシャミをすると鼻からコイン）
大野） あっ、あっ！
スズ子） えっ！
大野） どこさ隠した。
タケシ） いやいやいや・・・。
スズ子） すごい！
せやけど、茨田さんやるか？ これ。
大野） こったことでいいんだば、
茨田さんと、漫才とかやってみ
だらどんですか？ スズ子さん、
喜劇お得意だもの。
スズ子） それええな！
せやけど、ネタが作られへんわ。
タケシ） 僕が作りましょうか？
スズ子） おおっ！
いやええわ。
愛子） マミー、見て！
これ着て踊るねん。
スズ子） あ～！ ええやん！
大野） めごいな～！
タケシ） 幼稚園のお遊戯会は、
どんなことするのかなあ？
愛子） こんなん。
スズ子） あ～上手や！
（拍手）
スズ子） かわいい！
大野） めごいなあ。
タケシ） よし！ 僕も踊るか！
エッホ、エッホ！
スズ子） やめなやめな！
大野） みっともねえ、いい大人が。
愛子・タケシ） エイ、エイ、
エイ、エイ、エイ！
（盆踊りみたいなラインダンス）
スズ子） これや。これやがな！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜喫茶店＞
りつ子） 本気で言ってるの？
スズ子） 冗談に聞こえます？
りつ子） 帰りま～す。
スズ子） いやいやいや・・・
ちょちょちょ・・・！
待ってくださいよ～。
先生が驚くようなことしたい
言うたんは、茨田さんでっせ！
りつ子） だからってあんたね、
私にそんなまね・・・。
一人でやってちょうだい。
スズ子） いや～ちょちょ・・・
ちょっと待ってくださいよ～。
茨田さんがやるからええんや
ないでっか。先生腰抜かしま
すよ。腰、抜かせたりましょ！
ワテ、先生がひっくり返るとこ
見たいですわ！
（仏頂面のりつ子）
スズ子） 一緒にやりましょ！
えへへ！
りつ子） 「えへへ！」じゃないわよ。
やっぱりあんたなんかに相談する
んじゃなかった。本当、ろくなこと
考えないわよね。
スズ子） やってくれはります？
りつ子） そのかわり、
この貸しは大きいわよ。
スズ子） んもう、またまた！
ワテも見るんが楽しみですわ。
んふふ！ あっ、次、何飲まれ
ます？ コーヒー？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
そして、あっという間に、
羽鳥善一、作曲二千曲記念、
ビッグパーティーの日を
迎えました。
男性） この度は、
おめでとうございます！
女性） おめでとうございます！
善一） いや～うれしいねえ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
スズ子） ほなら・・・
よろしゅう頼んまっせ！
男性） よし！
男性） オッケー！
こいつは楽しみだ！
りつ子） 私、やっぱり
やめようかしら。
スズ子） 何を言うてるんでっか
いまさら！ ほなら・・・。
男性） よっしゃ！ いくぞ！
タケシ） ワクワクしてきました！
スズ子） なあ！
お願いいたします。
（仏頂面のりつ子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
司会者） 二千曲はまだまだ通過点
とのことで、これから、三千曲、四
千曲目指して、羽鳥善一先生は、
日本の歌謡界を引っ張ってくださ
るとのことです！
（拍手）
善一） はっはっはっは！
どうもどうも！
いや～僕個人としてはね、こういう
派手なことは性に合わないんだけ
ど、どうしてもやりたいって歌い手
の皆さんが言うもんですからね。
（笑い声）
善一） しかし我ながら、すばらしい
曲の数々を作ったもんですね。
ではまず、この曲からいきましょう。
トゥリー トゥ ワン ゼロ！
（拍手と歓声）
（ダイナミックな踊りでステージを
駆け回るスズ子）
スズ子） ♪「東京ブギウギ
リズムウキウキ 心ズキズキ
ワクワク 海を渡り響くは
東京ブギウギ
ブギの踊りは 世界の踊り
二人の夢の あのうた
口笛吹こう 恋とブギのメロディ
燃ゆる心の歌 甘い恋の歌声に
君と踊ろよ 今宵も月の下で
東京ブギウギ リズムウキウキ
心ズキズキ ワクワク
世紀のうた心のうた
東京ブギウギ ヘイー」
（拍手と歓声）
善一） すばらしい！
（拍手）
スズ子） おめでとうございま～す！
一同） おめでとうございます！
善一） やあやあやあやあやあ！
すばらしい！ ははははっ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜控え室＞
りつ子） （ため息）
フン！ 腹立つお顔。
（タクトを構えた、善一のポスター）
りつ子） （ため息）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
りつ子） ♪「むせぶ心よ
はかない恋よ
踊るブルースの 切なさよ」
（拍手）
（ニッコリ指を鳴らすりつ子）
♪（「東京ブギウギ」）
（パンツスーツに早替わり）
善一） どうしたんだい？ これは。
（スズ子も登場）
スズ子） 羽鳥先生、
二千曲、おめでとうございます！
（拍手）
りつ子・スズ子） おめでとう
ございま～す！
善一） 驚いたねえ。
（お揃いの衣装で踊るりつ子と
スズ子とダンサーたち）
一同） ♪「東京ブギウギ
リズムウキウキ 心ズキズキ
ワクワク 海を渡り響くは
東京ブギウギ
ブギの踊りは 世界の踊り」
善一） やあやあこれは
やられたねえ。
（足を上げてラインダンス）
一同） ♪「二人の夢の あのうた
口笛吹こう 恋とブギのメロディ」
（足を上げてラインダンス）
善一） やあやあ、すばらしいねえ。
一同） ♪「燃ゆる心の歌
甘い恋の歌声に 」
善一） よ～し、
やられたらやり返すぞ！
（善一もステージにあがる）
一同） ♪「君と踊ろよ
今宵も月の下で
東京ブギウギ リズムウキウキ
心ズキズキ ワクワク
世紀のうた心のうた
東京ブギウギ」
善一） これは、
こうやってやるのか。
よし！ 僕だってできるぞ！
僕だって！
一同） ♪「リズムウキウキ」
（善一も客席も、
みんなでラインダンス）
一同） ♪「心ズキズキ ワクワク
世紀のうた心のうた
東京ブギウギ ヘイー」
（派手に転んでしりもちをつく善一）
りつ子） 先生！
スズ子） 先生！
（拍手と大歓声）
善一） これが本当のサプライズだ！
（笑い声）
スズ子） 大丈夫でっか？
善一） これが本当のサプライズだ！
「目には目を、歯には歯を」だ！
（笑い転げる麻里）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
善一） いや～ね、しかしねえ、
茨田君、君、これやった時、
頭がおかしくなったと思ったよ。
りつ子） 頭おかしくなきゃ
こんなことできません。
スズ子） 茨田さんが、なんぞ
先生が驚くことしたい言うて。
善一） 驚くどころじゃないよ。
心臓止まるかと思ったね。
麻里） 私だって踊りたく
なっちゃったわよ。
善一） 君も？
スズ子） 愛子が幼稚園でやる、
お遊戯会の練習見て思いつ
いたんです。先生驚かすには、
これしかないやろって。
善一） そうか。
いや、よくぞやってくれたね。
りつ子） この年になってこんな下品
なダンスのお稽古するなんて思い
ませんでしたわ。この人、お稽古
になると容赦しないんです。
（回想）
スズ子） はいはいはいはい！
はいはいはいはい！
（愛子も一緒にお稽古）
スズ子） もっと上げる！
もっと上げる！
りつ子） 上げてます。
スズ子） 空目指して上げなあかん！
茨田さん！ 上げてますか！？
りつ子） 上げでます！
スズ子） 上げてません！
もう一回！ はいせ～の！
はいはいはいはい！
りつ子） はいはいはいはい！
（笑い声）
善一） いや～本当に、それに
してもね、すばらしかったよ。
こんなことは僕じゃ絶対に
思いつかない。完敗です。
さすが福来君と茨田君の
ゴールデンコンビだ。
りつ子） 私たちのコンビは
今日一日で解散ですから。
スズ子） えっ！ ワテは、
続けてもよろしいでっせ。
りつ子） はい！？
スズ子） えっ？
りつ子） えっ！？
スズ子） えっ？
善一） まあまあまあ・・・。
それじゃあ三千曲に向けて、
お楽しみはこれからだ！
（拍手）
羽鳥善一、
茨田りつ子、福来スズ子。
3人は、この先もまだまだ、
日本のエンターテインメント界を
引っ張っていくのでした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
あの、茨田りつ子がラインダンス！ 驚く
よね～それは。何より、りつ子のモデル、
淡谷のり子さんが、本当に踊ったことに
驚く。写真を見たら、ドラマのようにおと
なしい服装ではなく、ラインダンサーの
衣装だったので、さらにビックリ！羽鳥
先生がひっくり返っても不思議じゃない
サプライズ。そして、しりもちをついてみ
せる羽鳥先生の中の人の運動神経の
良さ！ 素晴らしい転び方だったよ～♪
りつ子とラインダンスの練習をする姿が、
スズ子が昔、ラインダンスを練習してい
た時を彷彿させて懐かしかったし、一緒
に跳ねている愛子がとても可愛かった。
おそらく2、3歳児を演じる愛子ちゃんの
姿が見られるのは今回まで。ありがとう
愛子ちゃん。幼児役、お疲れさまでした。
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