「ブギウギ」 第80回
第17週「ほんまに離れとうない」
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愛助） スズ子さん！
スズ子） うふふ・・・。
愛助） あはははは！
あ～かわいい！
スズ子） いやっ！
（シャッター音）
（シャッター音）
愛助） あはは。
スズ子） 何枚撮りますんや。
ワテにも貸して。
愛助） ほな・・・。
（湖のほとりで写真を撮り合う）
スズ子） 愛助さん。
愛助） はい。
（シャッター音）
（笑い声）
（シャッター音）
（笑い声）
スズ子） あっ！
愛助） スズ子さん！
早く来ないと僕は、
消えてしまうよ！
スズ子） いやっ！
お待ちになって～！
愛助さ～ん！
（笑い声）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（寄り添い、湖面を眺める2人）
愛助） いつか、僕らに子供が
でけたら、家族で来よな。
スズ子） 愛助さん・・・。
あのな・・・。
愛助） 何や？
スズ子） いや、何でもないわ。
愛助） 僕は、はようにきょうだい
亡くしたから、4人は子供欲しい
な。そんなにいらんか？
スズ子） ワテ・・・
そんなに産めるやろか。
愛助） まあ、何人でもええけど、
家族で、楽団や劇団みたいな
の作って、おもろいことやるん
も楽しそうやな。
スズ子） 家族劇団ですかいな。
愛助） そんな想像してる時が、
僕はいっちゃん幸せや。
（愛助の腕に顔を寄せるスズ子）
（肩を抱く愛助）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（湖畔で抱き締め合う2人）
愛助） 離れとうない。
ほんまに離れとうない。
スズ子） ワテも・・・ワテもや！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜東京支社＞
坂口） 福来さん。福来さん！
スズ子） はい。はい。
坂口） 聞いてまっか？
スズ子） え～っと・・・
何でしたかいな？
坂口） せやから、箱根で、ボンが
具合悪なったりしてまへんかっ
て聞いてまんねや。
スズ子） ご・・・
ごっつい元気でしたわ。
いや、ホンマもう、病気、治って
しもたんちゃうかいうくらいで。
坂口） ほならよかった。箱根行きは、
社長には、ないしょですさかいな。
山下） ほなら、今後の仕事の話
しましょか。どないしましたん？
スズ子） いや、何でもないです。
山下） ほしたら、
羽鳥先生の「ジャズカルメン」は、
やるいうことでスケジュール組ん
でいきまっせ。
スズ子） はい。お願いします。
山下） 稽古が始まるんは年明け
やろから、そこまでになんぞ
入れるか・・・。
スズ子） すんまへん。
ちょっと、失礼します。
山下） え？
（出ていくスズ子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
スズ子） ただいま。
（誰もいない家）
（茶の間に入るスズ子）
（長押にかけた愛助の丹前に近づく）
スズ子） 愛助さん・・・。
（おなかに手をあてる）
スズ子） やっぱりやったで。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（ソファーでのけぞる山下と坂口）
スズ子） すんまへん。
驚かせてしもて・・・。
お二人の言いたいことは、
よう分かります。
山下） い・・・言いたいこと、いうか・・・。
失礼なこと聞きまっけど・・・
産みはるおつもりでっか？
スズ子） はい。
山下） ボンは、このことはもう・・・？
スズ子） まだ知りません。
手紙、書こうと思います。
坂口） こんなん、
社長の耳に入ったら、
どえらいことでっせ・・・。
山下） 福来さん、ボンに手紙を書くん
やったら、まだ社長には、ないしょに
してもらった方がよろしい思いますわ。
今は、ピリピリしとる時やさかい、
これで子供まででけたやなんて聞い
たらどないなるか分かりまへん。
坂口） せやけど、困ったわ・・・。
山下） そやな・・・。あ、いや・・・
めでたい話、なんでっけどな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（家に帰ったスズ子）
スズ子・手紙） 「愛助さん、驚かんと
いてくださいね。今、ワテのおなか
には、愛助さんとの子供がいます。
お医者さんから聞いた時は、何や、
不思議な気持ちになりました。まだ、
全然知らん子が、このおなかの中
におる・・・男の子かも、女の子かも
分からん・・・あんたは、どこの誰？
何で、ワテのおなかにおるん？ そ
んな気持ちになりましたけど、１日
たつと、まだぺったんこなこのおな
かの中の子が、愛おしくてたまりま
せん。ただ・・・こないな時に、愛助
さんが近くにおらんいうんは、想像
もしてまへんかったし、山下さんも、
坂口さんも、お母様に、このことが
知れたら、どないしょいう心配ばか
りで、ワテは、初めての妊娠やし、
ほんの少しばかり、心細い気持ち
になってしまいます・・・」。
スズ子） あかん！ こんなこと
書いたら心配させるだけや。
（書き直すスズ子）
手紙・スズ子） 「とにかく、子の子が、
おなかにおるいうだけで、ワテの体
には活力が湧いてきます。元気い
っぱいだす。それと、男の子の場合
と、女の子の場合、両方の名前を、
愛助さんが、考えてくれませんか？
おなかの上からでも、めちゃくちゃ
かわいいのがよう分かります。男の
子やったら、愛助さんに似て、男前
に。女の子でも、愛助さんに似て、
えらいベッピンさんになりまっせ。
ワテ、早くも親バカですわ。
あなたのスズ子」。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜病室＞
愛助） 僕らが・・・親になるんか・・・。
トミ） 具合はどないや？ あんたが
好きやった鶴亀屋のおはぎ、
無理言って作ってもろたで。
愛助） お母ちゃん・・・。
トミ） ホンマこっちに帰ってきてよか
ったわ。顔色が全然ちゃいます。
あのまま東京におったら、治るもん
も治らん・・・。
愛助） 僕な、父親になるんや。
トミ） な・・・何やて！？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜東京支社＞
電・坂口） 分かっとるわい！
いちいち、報告してこんでええん
じゃ！ ガキの使いやあらへんど！
電・矢崎） 社長はそんな感じです
が、ボンは福来さんのことをとて
も心配されています。くれぐれも、
体を大事にしてくださいとのこと
です。
電・坂口） 分かっとるわい！
（電話を切る音）
坂口） ボケが！
山下） 矢崎かいな？
坂口） 社長・・・怒髪天らしいですわ。
山下） 当たり前やな。
坂口） それと、ボンが、福来さんの
こと、えらい心配してるらしいて。
山下） せやけど、
何で、バレてもうたんや？
坂口） ボンが言うてもうたらしい
ですわ。子供がでけたからには、
何があっても、福来さんと結婚
するいうて・・・。
山下） まあ・・・言うてまう
気持ちも分かるわな。
スズ子） あの・・・ワテ、
大阪に行ってきます。
坂口） は？ あんたが行って、
どうしまんのや。
スズ子） ワテから、お母さんに
お話ししますわ。
坂口） いや・・・
話してどうしまんねや？
スズ子） ワテは、きちんと、愛助さん
と結婚してから、この子を産みたい
んです。この子を、父（てて）なし子
だけには、しとうないんです。
あの・・・。ワテの両親は、
ホンマの親やないんです。
坂口） ど・・・どういうことでっか？
スズ子） ワテ、もらい子ですねん。
ホンマは、香川の片田舎で、ええ家
の父親と、女中の間に生まれまして
ん。まあ、そこは、どうでもよろしい
んです。どうでもよろしいことあらへ
んけど、今は、よろしいんです。幸い、
ワテは、ええ両親にもらわれたから
よかったんでっけど、この子は・・・。
坂口） どっかに、やるいうんでっか？
スズ子） そんなん絶対しまへん！
ただ、父親がおらんと、心ないこと
言わはる人もいてますやろ？
もちろん、ワテは、必死に育てます
けど、この子が、ちょっとでも、嫌な
目に遭うかもしれへんし・・・。この
子には、ちょっとも傷つかんように、
つらい思、生きてほしい思てるん
です。甘い言われるかもしれまへ
んけど、ホンマに、そう思うてるん
です。せやから、ワテから、ちゃん
と、お母さんに事情を話して、結
婚を許してほしいんです。
坂口） ボンは、知ってるんですか？
福来さんの事情。
スズ子） 話したことはないです。
知る必要もない思てましたけど、
こういう状況になってしまいまし
たし、愛助さんにも、きちんと、
話しとこうと思います。
山下） 福来さんの気持ちは
よう分かりました。まずは、
ワシが大阪行って、社長と
話してきます。
坂口） 山下さんが？
山下） うん。
今、身重の福来さんが向こうに
行ったら、えらいことになるんは、
火を見るより明らかや。
ワシが行った方がええ。
坂口） せやけど、山下さん、
社長に嫌われてますわ。
山下） まあ確かに、社長とはいろ
いろあったけどもやな、まあ言う
ても、先代の頃からの古いつきあ
いや。よう話したら分かってもらえ
るはずや。ははは！
任しときなはれ。
スズ子） すんまへん・・・。
よろしゅうお願いします。
（泣きそうな顔で頭を下げるスズ子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
うふふ、あははと追いかけっこし合う、昔
の少女漫画のような旅行シーンに笑・・・
いや、萌えました。最近は、こんなベタな
デートシーンなんて見ることがないからｗ
写真を撮り合っていたのもいい。やっぱり
心の中だけじゃなく、ちゃんと形に残るも
の・・・写真も残さないとね。2人の幸せな
時間を閉じ込めた、宝物となる写真も・・・。
そしてそんなラブラブな時間を過ごしたら
そうなるよね～のセオリー通り、ご懐妊♪
もらい子ではあったけど、実子と変わらな
い、いやそれ以上に愛されて育ったと思
われたスズ子でも、自分の子供には、用
意できるはずのベストな環境を望むのだ
なあと。それも当たり前なんだけどね。た
だ、愛助にも話していなかったのは意外。
言う必要はないと思うのも分かるけどね。
トミさんは・・・怒るよね。それも仕方ない。
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