「ブギウギ」 第60回
第12週「あなたのスズ子」
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＜村山興業・東京支社＞
愛助） お母ちゃん。
ご無沙汰してます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
トミ） 元気そうやな。
愛助） はい、おかげさまで。
トミ） そやろな。
便りのないのは、元気な証拠や。
愛助） すいません。筆無精で・・・。
トミ） うわさは、いろいろ耳に入って
きますけどな。うわさやないことも、
坂口から聞きました。
愛助） うわさやないことて・・・？
トミ） 何もかもいうことや。
あんたの本分は、今は学業や。
愛助） 分かってます。
トミ） 分かってるんやったら、手短に
話します。福来スズ子と会うんは、
もうやめなはれ。隠し事はいつか
必ずバレますのや。山下のマネー
ジャーの話もなしや。
愛助） ま・・・待ってください！ じいは
もう村山興業の人間やないで。何で
じいが福来さんのマネージャーをし
たらあかんのや。
トミ） あきまへん。山下が福来スズ子
のマネージャーをしてたら、あんた
と福来スズ子は続きますやろ。
愛助、あんたは、村山の跡取りや。
歌手があんたを支えることはできま
へん。ふさわしい人がいてます。
愛助） そんな先のこと、
何で今考えなあかんねん。
僕は、福来さんを好きなんや！
トミ） ほなら、会わせなさい。
愛助） え・・・？
トミ） ワテを、福来スズ子に
会わせなさい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜事務所＞
小夜） 会ってどうすんだ？
おめえにふさわしいか見んのけ？
だったらそっちが来い！
スズ子） 小夜ちゃん。愛助さん、
ワテ、お母さんにお会いしますわ。
どんな話になるんか分かりまへん
けど、ないしょにしとくいうんは、
気持ちええもんやないし、いつか
は会わなあきまへん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（下宿に帰ったスズ子）
スズ子） ふう～。
（ツヤの写真を見つめる）
スズ子） 本番より緊張するわ・・・。
（手の平に「人」という漢字を
書いて飲み込むスズ子）
スズ子） ふう～。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜村山興業・応接室＞
愛助） だ・・・大丈夫や思います。
母も、話せば分かる人やから。
スズ子） そやとよろしんですけど・・・。
緊張して口の中カラカラやわ。
（お茶を飲む）
スズ子） ふう～。
（ノック）
愛助） はい。
スズ子） あ・・・はい。
愛助） お母ちゃん、
こ・・・こちらが・・・。
スズ子） 福来スズ子と申します！
初めまして！
トミ） 村山、トミだす。
お掛けください。
スズ子） はい。
（2人の前に座るトミ）
トミ） あんたはんのことは、
よう存じております。
ええ歌を歌いなはる。
スズ子） は・・・はい。
恐縮でございます。
トミ） ＵＳＫの下積みで、苦労もして
はるやろし、ように分別のあるお人
や、思います。愛助は、村山興業の
後継ぎになる人間だす。そのことを、
重々、ご理解ください。
スズ子） それは、
重々承知しております。
トミ） ほなら、話は終わりだす。
坂口） えっ！？ えっ！？
愛助） 終わりなん？
トミ） あとはよう2人で話なはれ。
ほな、失礼します。
（出ていくトミと坂口）
愛助） ど・・・どういうことや・・・？
ぼ・・・僕らに、
任せてくれはったんかな？
スズ子） ちゃうわ。
きっぱり別れろ、いうことや。
愛助） え・・・？
スズ子） そらそやな。
たったお一人で、会社を切り盛り
して、あそこまで大きして・・・それ
を、愛助さんに託したいんやから。
そら、先の先まで見据えてはりま
すわ。ワテみたいな歌手は、ふさ
わしないと思いはるのも、分かり
ますわ。
愛助） そ・・・そんなんで・・・
福来さんと交際でけへんのは、
僕は嫌や！ 僕は、今この瞬間、
福来さんが好きなんです！
せやから交際したいんです！
もし・・・もしも結婚いう話になれば、
僕は絶対に福来さんのことを
お母ちゃんに認めさせます！
その上で、福来さんには歌手を
やめてほしくありません！
絶対できると思います！
僕はどんなにお母ちゃんに反対
されても、福来さんと恋人でおり
たいんです！
スズ子） ぎょうさん・・・
つば飛びましたがな。
愛助） あっ、ごめん・・・
ごめんなさい。
（ハンカチでスズ子の顔を拭く）
（その手を握るスズ子）
スズ子） ワテも、
おんなじ気持ちだす。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜愛助の下宿＞
愛助） 福来さん。
僕、もう少し戦況が落ち着いたら、
大学をやめようかと思うているん
です。
スズ子） 何ででっか？ もったいない。
愛助） 大学やめて、はよう村山で
働いた方が、福来さんとのことを
認めてもらえる気ぃがするんです。
スズ子） 愛助さん、ワテのことより、
自分の夢を、見失わんようにして
くださいね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜羽鳥家＞
善一） しかしマネージャーか・・・。
誰か探してあげたいところなんだが、
実は僕、日本を離れることになってね。
スズ子） ええ！？
りつ子） 先生、まさか戦地に？
善一） 陸軍の、報道班員という身分で
上海にね。慰問活動をしたり、音楽会
を開いたりするんだけど、上海には優
秀な音楽家が集まっているから、僕も
もっといい曲を書いて、演奏してきま
すよ。それが僕なりの戦い方かな。
りつ子） 先生、何だかワクワクしてる
ように見えますわ。楽しそう。
善一） いやいやいやいや・・・。
だから、申し訳ない。マネージャーは
すぐには探せないかなあ。
スズ子） しかたありまへんわ。せやけど、
そろそろ仕事入れていかな、楽団員に
も、お給料、払えまへんので・・・。
りつ子） そうだ。モデルしてみる？
スズ子） モデル？
りつ子） そうよ。
美術学校でヌードモデル。
スズ子） ヌ・・・ヌード！？
りつ子） 私、音楽学校の学費を
稼ぐためにやってたのよ。
スズ子） あ・・・せやけど、ワ・・・
ワテ・・・ヌードは、ちょ・・・。
りつ子） 冗談よ。
その華奢な体じゃ無理。
魅力的じゃないもの～。
スズ子） し・・・失礼やな！
ワテかて、脱いだら・・・。
善一） まあまあまあまあ。
僕も心当たりの人間には聞いて
みるつもりだから。ねえ？
福来スズ子のマネージャーなら、
やりたがる人間もいるんじゃない
かな？
りつ子） 本当に甘いですわ。
スズ子） すんまへん。
善一） みんな苦しいけど、
乗り越えて、また3人で何か
やろうじゃないか。ねえ。うん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ですが、
昭和19年の暮れにもなると、
東京にも、敵機が度々襲来
するようになりました。
チズ） あれ？ スズちゃんは？
小夜） 愛助んとこだ！
チズ） 全くどっちに住んでんだか！
行こう！ 小夜ちゃん！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
愛助） 福来さん！ 福来さん！
何してるんでっか！？
かわやからはよ出てきてください！
スズ子） そやかて！ そやかて・・・。
先に行ってください！
愛助） お・・・大きい方なんでっか！？
スズ子） そんなん・・・聞かんといて！
愛助） とにかく、はよ逃げな！
福来さん！ おへその下、指3本分
空けて押してください！ 僕、出え
へんようになったらお母ちゃんに
そうされとったんです！
スズ子） な・・・何やそれ！
ホンマに先行って！
愛助） 行けるわけないやろ！
福来さん、おへその指3本下や！
スズ子！
スズ子） やってるわ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
愛助） スズ子！ はよう！
スズ子） 先行ってって！ もう！
愛助） 何してんねん！
スズ子） ちょ・・・。
（スズ子を抱き上げて走る愛助）
男性の声） 解除！ 空襲警報解除！
解除！ 空襲警報解除！
（見つめ合ってしまう2人）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
スズ子） 何や安心したら
またおなか痛なって・・・。
愛助） はははははは！
スズ子） 何笑てるん？
愛助） せやかて、福来さん、かわや
から全然出てけえへんから、
ははははは！
スズ子） 恥ずかしいこと
言わんといて！ もう！
愛助） すんまへん。
せやけど、何やおかしなって。
福来さん、ごっついわめいて
はったし。ははははっ！
スズ子） スズ子でええ。
愛助） え・・・？
スズ子） さっき、
スズ子て、言うたやろ。
スズ子でええ。
愛助） ス、ス・・・スズ子・・・さん。
ワテ・・・あんさんのこと、
ホンマに好きや。
（微笑む愛助）
（顔を近づけるスズ子）
（唇が触れ合う）
（目を閉じた2人）
（そっと目を開ける）
スズ子） 何や・・・
おなかすきましたな。
愛助） あっ、パンが・・・。
とっておきの、
パンがありましたわ！
（咳き込み）
スズ子） 大丈夫でっか？
愛助） 思い切り走った・・・。
（咳き込み）
（口から離した手の平に、
真っ赤な血）
スズ子） 愛助さん！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
さすがラスボス。余計なことは言わない。
でも、分かる人にはちゃんと伝わる言葉
で伝えてくる。つまりは、よ～く考えろと。
ＵＳＫの下積みで、苦労もしてはる
やろし、ように分別のあるお人や、
思います。愛助は、村山興業の後
継ぎになる人間だす。そのことを、
重々、ご理解ください。
分別があるなら分かるやろ？ってことよ
ね。まあね、少なくともスズ子は、トミが
言いたいことは分かってしまうよね。愛
助には分かっていないみたいだけれど。
そこに愛助の甘さ、未熟さが見えてくる。
でもね～そちら側の気持ちが分かった
からって、その通りにする義理もないｗ
義理と人情も大事だけど、時に愛情は
それを上回ってしまうものだからね～。
反対されればされるほど、燃え上がっ
てしまうのも恋。しかもまだ、若いしっ！
地震の時もよく想像してしまうのだけれ
ど、空襲の時だって、トイレから出られ
ない時はあるなぁと。お腹を壊しやすい
ので、地震がきたらどうしようと思うし。
とはいえ、空襲中にトイレは、意外と描
かれてこなかったんじゃないかしらね。
そんなコミカルの場面も、福来さんから
スズ子呼びになるきっかけとなるのが、
世界は2人だけのもの～っぽいよね～。
そして、ついに、愛助の身に不穏な影。
ずっと変な咳をしていたものね。女より
体のことを気にしてやれよ坂口～！と
言いたいｗ スズ子と愛助のラブラブな
ところが、まだまだ見られますように～。
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