「舞いあがれ！」 第105回
第22週「冒険のはじまり」
変わってもええと思うで
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舞） 起業するって、
決めたわけちゃうで。
御園さんが、
提案してくれはってん。
貴司） 御園さんが？
舞） 私が、企業するんやったら、
御園さんも、一緒にやりたいって。
めぐみ） どんな仕事すんの？
舞） つなげる仕事。
町工場同士をつなげて、
新しい、ものを作りたい。
作ったものを、
必要としてる人に届けて、
町工場と、人を、つなげたい。
めぐみ） それは、仕事になんの？
舞） 分かれへん。
けど、仕事にしたい。
めぐみ） 社長としては、
IWAKURAの仕事続けてほしい。
そやけど、母親としては…。
舞のやりたいこと、
やってほしいと思う。
舞） お母ちゃん…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜デラシネ＞
（連載の企画書を見ている貴司）
（客が出ていく）
貴司） ありがとうございました。
（セーラー服の学生が来る）
貴司） 陽菜ちゃん。
待って！ お茶、飲む？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜デラシネ・奥の部屋＞
貴司） どうぞ。
（辞書を広げた陽菜）
陽菜） 言葉ってさぁ…。
貴司） うん。
陽菜） こんなにいっぱい、
要らんくない？
貴司） そうか？
陽菜） うん。
中学入って分かってんけど、
みんなに合わせて、やばいと、
かわいいと、キモイだけ言う
とったら、やっていけんねん。
貴司） キモいって、そんなに言う？
陽菜） 言うで。
大ちゃんにも言うた。
大ちゃんのスケッチブック、
クラスの子が見つけてもうて…。
みんながキモいって言い始めて…。
私も言うてしもた。大ちゃん言い
返したりせえへんし…。
陽菜） 帰るわ。
貴司） もう？
陽菜） うん。
大ちゃんに会いたないし。
貴司） 陽菜ちゃん。
言葉がいっぱいあんのはな、
自分の気持ちにぴったり来る
言葉を見つけるためやで。
陽菜ちゃんの気持ちにぴったり
来る言葉はどっちやろ？
会いたないんか、
合わせる顔がないんか。
（出ていく陽菜）
貴司） 気ぃ付けてな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜カフェ・ノーサイド＞
店員） ごゆっくりどうぞ。
悠人） ありがとう。
めぐみ） 仕事、どない？
悠人） 俺やで？
いい感じに決まってるやん。
めぐみ） フフフフ…
そやったらええけど。
悠人） 今は地道に投資して、
コツコツ資金増やしてる。
めぐみ） うん、そう。
悠人） で、話って何？
めぐみ） うん…。舞がな、
起業、考えてるみたいやねん。
悠人） ホンマあいつは…。
そばにおったら退屈せえへんやろ。
めぐみ） フフフフ、うん。
悠人） 何の会社やんの？
めぐみ） 町工場と、人、
つなげる仕事やて。
悠人） ふ～ん…。
めぐみ） 悠人、あんた、起業する人、
ぎょうさん見てきたやろ？
そういう仕事、どやろ？
悠人） さあ？ 具体的なことは、
聞かな判断でけへん。
めぐみ） せやな。
ほな、本人に聞いてみてくれへん？
悠人） だから俺忙しいねんて。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夜・岩倉家＞
悠人） 起業ってな、簡単じゃないねん。
たった１年生き残んのも難しい。
舞） うん。
悠人） お前もよう見てきたんちゃうんか。
社長ってもんがどんだけしんどいか。
それでもやりたいっていうんか？
舞） うん。
悠人） 何で？
舞） しんどそうな社長さん、
いっぱい見てきたから。
町工場はな、ホンマに、ええもん
作ってんのに、そのよさに、目ぇ
向けてもらえへんまま、どんだけ
安くできるか、競争させられる。
周りに合わせて、言われるままに、
値段下げてくうちに、自分のええ
とこ、なくしてしまうねん。
そうやって、一軒ずつ、町工場が
消えてく。私な、それ、なんとか、
したいねん。
悠人） お前にどうこうできる
問題ちゃうやろ。
舞） やってみな分からんやん。
悠人） 理想だけあっても、現実的な
プランがないとビジネスにはならん。
舞、どうやって利益出すつもりや。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜昼・デラシネ＞
（庭で絵を描く大樹）
（ちゃぶ台でパソコンに向かった舞）
貴司） あんま根詰めんようにな。
舞） ううん、頑張らな。
お兄ちゃんを納得させられる
プラン、立てたいねん。
貴司） うん。お義兄さんの
目は厳しいからな。
舞） うん…。
けど、プラン立ててたら、
ぼんやりしてた夢が、
はっきり、形になってきた
気ぃすんねん。
貴司） そう。
舞） うん。
（メイクをした奇抜なファッション
の陽菜が来る）
貴司） いらっしゃい。
舞） 陽菜ちゃん。
陽菜） 古い本のにおいがする。
貴司） 古本屋やからな。
陽菜） うん。
ここ来たら、息すんの楽やわ。
貴司） そっか。
陽菜） 大ちゃん、おる？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（奥へ行く陽菜）
陽菜） 大ちゃん。
（絵を描く大樹の手が止まる）
陽菜） ごめんな。
大ちゃんのこと、
ホンマはキモイなんて、
思ったことない。
これからも、思わへん。
大樹） もうええよ。
変わってもええと思うで。
けど…ありがとう。
（陽菜に微笑み、絵を描く大樹）
（そっと２人を見ている舞と貴司）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜岩倉家・二階＞
（お守りのねじを見つめる舞）
貴司） 舞ちゃん。
舞） ん？
貴司） あんな…。
舞） うん。
貴司） 連載、
引き受けようって思う。
舞） そっか。
貴司） あっけど、デラシネは
閉めたないねん。
せやから、これ…。
（「この小舟 守ってほしい月七日
ときどき本の 売り買いもして」
と書いた張り紙）
舞） バイトさん雇うん？
貴司） うん。
北條さんに頼んで、旅すんのは
月７日だけにしてもらった。留守
の間は、バイトさんに店番任せ
て、のんびり連載させてもらうわ。
舞） うん。
貴司君のペースでやれるん
やったら、ええな。
貴司） ああ…。いろんな子に
短歌教えんの楽しみやわ。
舞ちゃんにはさみしい思い
させるかもしれへんけど。
舞） そやな…さみしいわ。
けど、貴司君が、新しい何か、
見つけてくるん、楽しみや。
貴司） ありがとう。
舞） うん、頑張ろな。
貴司・舞） うん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜カフェ・ノーサイド＞
舞） 一緒にやりたいって、
思ってもらえます？
御園） うん、すごくすてき。
やりたいことがシンプルに
見えてる感じ。舞ちゃんは、
社長に向いてると思う。
舞） いや…。
御園） よろしくお願いします。
舞） よろしくお願いします。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜岩倉家＞
舞） IWAKURAにとってのねじ
みたいに、町工場の多くは、
部品を作ることに特化してい
ます。
御園） でも、いつ値段下げられるかも、
発注がなくなるかも分かりません。
私の実家もそうでした。
舞） そやから、町工場一つ一つの個性
を生かした、新しいお金の稼ぎ方を探
ることを、私たちの仕事にしたいんです。
御園） 東大阪の強みは、多様な技術を
持った町工場があることだと思います。
私たちの会社が、町工場と町工場を
つないで、まだ世の中にない商品を
作り出します。
舞） オープンファクトリーの模型飛行機
や、小堺さんのハンモック、そういった
ものを、商品として企画して、販売す
するところまで考えてます。
めぐみ） なるほどね…。
舞） 私も、御園さんも、この仕事に
かけたいと思ってる。
分かってもらえた？
悠人） まだ分からん。
（事業計画書を見る悠人）
舞） お兄ちゃん…。
悠人） ………。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
陽菜と大樹の居場所をなくさないように、旅に
出ないことを選択する目もあるのかなぁと思っ
ていたら、居場所を残しつつ、旅に出て、子ど
もたちに短歌を教えつつ、自分の短歌も作る
新しいスタイルを見つけたのね。良き良き～。
変わってもええと思うで。
ずっと変わらないでほしいと思っても、変わっ
ていくものだし…変わることは悪いことじゃな
い。変わりながら、残っていくものもあるしね。
変わっていくからこそ、今を大事にしようと思
えることもあるし。新しい風は…必要だよね。
中学入って分かってんけど、
みんなに合わせて、やばいと、
かわいいと、キモいだけ言う
とったら、やっていけんねん。
やばいとかわいいとキモい。確かにね、それ
だけで、会話が成立してしまうかもしれない。
言葉がいっぱいあんのはな、
自分の気持ちにぴったり来る
言葉を見つけるためやで。
せっかく、たくさんの言葉が…とても素敵な
言い回しの日本語があるのに…自分の気
持ちを表現できる言葉がきっとあるのに…
それを使わないのは、もったいないと思う。
もちろん、短い、ストレートな言葉でもいい。
伝えてあげたい言葉、伝えてもらえたら嬉
しい言葉。言葉は、凶器にも薬にもなるか
ら…なるべく優しい言葉を見つけたいなあ。
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