「舞いあがれ！」 第82回
第18週「親子の心」
愛？愛・・・愛やて・・・
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荒金） 菱崎重工の、荒金です。
舞） 菱崎重工…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
荒金） 航空機に使われる、新型エンジン
用のボルトを試作する話が来ています。
御社でこのボルトを作ってみていただけ
ませんか？
舞） え…社長。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
舞） お願いします。
先代の夢、挑戦させてください！
めぐみ） やってみましょ。
舞） 皆さん、よろしくお願いします。
一同） っしゃ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（試作のボルトが完成）
笠巻） ええんちゃうか？
どうぞリーダー。
舞） アハハハハ、
ありがとうございます！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
舞） どないしたん？
貴司） 僕の短歌が、
長山短歌賞、受賞したて…。
舞） すごいやん！
おめでとう！
貴司） ありがとう！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（夜七時から貸し切りの梅津）
（一人、お好み焼きを食べる悠人）
悠人） うん、うまい。
やっぱうめづやな。
梅津） うれしいなぁ。
今をときめく悠人君のそんなん
言われたら、自信つくがな。
悠人） これから貸し切りやろ？
団体？
梅津） うん。なあ。
雪乃） せやねん。
めっちゃめでたいことがあってな。
悠人） へえ～。
貴司） おかんお待たせ。
雪乃） ああ来た来た！
主役の登場や。
舞） お兄ちゃん！ えっ帰ってたん？
めぐみ） 悠人、いつも言うてるけど、
うめづ来んねやったら、
うちにも寄りなさい。
悠人） これ食べたら東京帰る。
めぐみ） 仕事忙しいのはええけど、
たまにはお父ちゃんにも
顔見せたって。
悠人） はいはい。
めぐみ） はいはい…。
♪（クラッカーの音）
雪乃・梅津） 貴司！
長山短歌賞受賞、おめでとう！
（拍手）
雪乃） イエ～イ！
（拍手）
貴司） 大げさやねん。
梅津） 何言うてんねんお前。
今日は、歌人梅津貴司の門出を
祝う会やないか！
お好み焼き食べ放題やで！
雪乃） さあさあ…
さあさあさあ、座って座って。
梅津） 焼くぞ！
めぐみ） ありがとう。
梅津） みんな食べてな。
いっぱい食べてや。
悠人） 団体って、
いつものメンバーやん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
梅津） 乾杯！
一同） 乾杯！
舞） おめでとう。
貴司） ありがとう。
雪乃） ああホンマ舞ちゃんも
めぐみさんも、ありがとうな。
今日は貴司のお祝い来てくれて。
悠人君もな。
梅津） おおきにな。
悠人） いやだから俺は東京帰るて。
めぐみ） まだええやないの。
あんたかて、貴司君のことちっちゃ
い頃からよう知ってんねから。
舞） お兄ちゃん座って。
梅津） うん。
舞） 貴司君の歌が、
立派な賞に選ばれて、
ホンマにうれしいです。
雪乃） せやなぁ。なんちゅうたかて、
短歌界の芥川賞やからね！
（笑い声）
貴司） おかん長山短歌賞のこと
知ってんの？
雪乃） 当たり前や。
梅津） お母ちゃんな、貴司が、短歌
作り始めた頃から、何やあの短歌
の雑誌やら何やらぎょうさん買い込
んできてよう勉強しとったんやで。
雪乃） そらあんたもやろ。
梅津） 俺のことはええがな。
ハハハハ。
めぐみ） 貴司君は親孝行やな。
貴司） おとん、おかん、ありがとう。
こんな賞もらえたのも、好き勝手してた
僕を、ずっと見守ってくれてたからです。
ホンマに感謝してます。
（頭を下げる貴司）
雪乃) ちょ…あかんあんたこんな時に
そんな急に…。やめえもう…お母ちゃ
ん泣いてまうやんか。（泣）
梅津） アホやなお前、泣いてまうやんか
言いながらもう泣いてもうてんがな。
雪乃） そやかて…ホンマによかったわ。
ホンマによかった！ （泣）
梅津） よかったよかった。
雪乃） うれしいねぇ！ （泣）
梅津） よかったよかった。
雪乃） うれしいわぁ！
悠人） ああ、鼻水鼻水。
めぐみ） はい、雪乃さん。
雪乃） おおきに。
梅津） すんませんめぐみさん。
ああよかったよかったよ。
舞） 貴司君、ホンマにおめでとう。
貴司） うん。
梅津） そやけど、舞ちゃんも
すごいて聞いてんで。
梅津） ん？
あの飛行機部品の、
プロジェクトリーダーなんやて？
舞） はい。やっと、ボルトの試作品
も完成して、来週は強度の試験が
あるんです。
梅津） ほう～！
貴司） うまいこといったらええな。
舞） 大丈夫。職人さんらが一生懸命
作ってくれはったねじやから。
梅津） そら浩ちゃんも喜んでるわ。
なっ、めぐみさん。
めぐみ） あっ…。（頷く）
梅津） そうか。
（戸が開く音）
久留美） あっ、こんばんは。
舞） 久留美、遅かったなぁ。
久留美） ごめんな、
仕事全然終わらんかって。
貴司君、おめでとう。
貴司） ありがとう。
久留美） ちょっと今日は、
みんなに紹介したい人がおって…。
雪乃） 紹介？
久留美） どうぞ。
八神） お邪魔します。
久留美ちゃんとおつきあい
させていただいてる、
八神蓮太郎と申します。
雪乃） へえ～！
舞） えっ、久留美、これ…。
（久留美の手に指輪）
久留美） 婚約しました。
（拍手と歓声）
舞） 久留美おめでとう！
（久留美に飛びつく舞）
雪乃） ああ、こらあかんこらあかん！
もうこれお父ちゃん、
お好み焼きバンバン焼かな！
今日はお祝いの、オンパレードや！
梅津） せやせやせやな！せやな。
雪乃） 焼こ！ 焼こ！
梅津） 座って食べて。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（お好み焼きを食べる八神）
八神） うん、おいしい！
雪乃） よかったぁ。
もうお口に合うかどうか
心配やってん。
梅津） お医者さんにもファンド
マネージャーにもお墨付き。
それがうめづのお好み焼きや。
悠人） ありがとう。
梅津） はい悠人君。
八神） ファンドマネージャー？
久留美） 舞のお兄さん。
知らん？ 今時の人やねんで。
八神） え？
ああ！ もしかして、岩倉悠人さん？
テレビよう出てますよね！
悠人） どうも。
八神） いや～感激です。こんな
とこで、有名人と会えるなんて。
雪乃） こんなとこはないんちゃう。
梅津） そやで。
八神） あっ…すいません。
久留美） もう…。
八神） すいません。
舞） けど久留美、婚約って、
いつの間にそんなんなったん？
久留美） ああ、こないだな…。
八神） 僕から、プロポーズしたんです。
雪乃） いやぁ～。
八神） ストレートに結婚してほしいって。
久留美） ちょ…ちょっともうやめて！
もう恥ずかしい。
舞） 八神先生。久留美の、どんな
とこが好きになったんですか？
久留美） 舞！
雪乃） 聞きたいなぁ。
八神） 久留美ちゃんは、ホンマに細か
いとこまで気ぃ付く子で、僕はいっつも
助けてもらってて…。
久留美） 最初はな、
ただの職場の同僚やってん。
八神） 何より、しんどさも吹き飛ばして
くれる笑顔に引かれて、気ぃ付いたら
僕は、久留美ちゃんを愛してました。
悠人） 愛？
めぐみ） 愛…。
雪乃・梅津） 愛やて…。
舞） あかん…胸いっぱいや。
久留美） ちょっともう…
ホンマに恥ずかしい。
蓮太郎さんふだんそんなん
言えへんやん。
八木） ふだん言われへんから、
久留美ちゃんの大事な人らの
前で言いたかってん。
雪乃） あら～！
八神） 皆さん、これからどうぞ…。
（携帯を見る悠人）
悠人） （舌打ち）
八神） よろしくお願いします。
雪乃） もう、いつでもお好み
食べに来てや。
梅津） 来てや。
悠人） ごちそうさん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
悠人） ん。
雪乃） え…ちょ…え…えっ、ちょ…。
こんなに！？ えっ！？
悠人） ええから取っといて。
貴司君の受賞祝いと、
久留美ちゃんの婚約祝い。
おめでとう。
貴司） ありがとうございます。
悠人） お幸せに。
久留美） ありがとうございます。
悠人） じゃあ行くわ。
舞） お兄ちゃんまたな。
悠人） ああ。
八神） 今日はありがとうございました。
悠人） とんでもない。
梅津） おおきにな、悠人。
（悠人を目で追うめぐみ）
八神） お代わり、お願いします。
梅津） はい。
八神） そや、舞さん貴司さん、
今度の日曜空いてます？
僕らとダブルデートしましょうよ。
舞・貴司） え？
八神） お二人とは早く
仲良くなりたいし。
舞） ああ…いや…。
八神） あれ？
僕、何か変なこと言いました？
舞） いや、貴司君とは、
ただの幼なじみなんです。
なあ？
貴司） うん。
八神） あっ、そうなんですか。
すみません。
舞） 全然。
八神） ほな舞さん、もしよかったら、
若いドクター紹介しますよ。
独身いっぱいいてるんで。
久留美） （小声で）ちょ…やめて。
雪乃） いいやん舞ちゃん。
紹介してもらいや。
貴司） おかん！
久留美） もうええから。舞は今、
仕事大変なとこなんやろ？
舞） うん。
久留美） なあ？
食べよ。なっ。
八神） うん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜近所の公園＞
貴司） はあ…今日はホンマに
ええ日やったな。
舞） ホンマやな。
何や、貴司君、久留美、私の、
新しい門出の日って感じやったな。
貴司） みんなこれから
ますます忙しなるな。
舞） うん。
うれしい忙しさやわ。
貴司） 強度試験、頑張って。
舞） うん。
（星空を見上げる２人）
舞） きれいやな。
貴司） うん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
貴司） 「君が行く 新たな道を
照らすよう 千億の星に
頼んでおいた」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
そして、週末は終わり…
IWAKURAで作った、
航空機エンジン用ボルトの
品質試験の日を迎えました。
（車から降りる舞たち）
舞） ここが、朝霧工業…。
章） 何か、緊張してきたな。
笠巻） 引け目に感じることあらへん。
俺らかてちゃんと完成さしたんやから。
舞） そうですよね。
よし…自信持っていきましょう。
章） そやな。
ここ、朝霧工業は、
航空機部品だけに特化した会社で、
今回、同じボルトの発注を受けて
いる、ライバル会社です。
植田） IWAKURAさんですな。
お待ちしておりました。
舞） 今日は、よろしくお願いします。
植田） こちらこそ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
笠巻） うちの10倍ぐらい
敷地あるんとちゃうか？
舞） すごい…。
工程ごとに建物分かれてるんや。
（足を止め、工場を覗く舞）
舞） うわあ…。
男性） あの…。
舞） ああ、すいません、つい…。
植田） ええやないか。
見られて困るもんやなし。
どうぞ、お入りください。
舞） すいません…。
わあ…すごい…。熱処理まで、
御社でされてるんですね。
植田） はい。
弊社は、材料調達から完成検査
まで全て、一貫生産できるように
なってますんで。
章） 本気で航空機部品を扱うね
やったら、こんだけの規模が
いるっちゅうことや。
舞） そうですね。
荒金） ライバル社の視察は
どうですか？
植田） 荒金さん。
荒金） お疲れさまです。
舞） いや…すごいです。
けど、本日は弊社も、自信を持って、
お見せできる製品を、お持ちしました。
正々堂々、戦わせていただきます！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
舞は胸いっぱいと言ったけど、臆面もなく愛
を口にする八木先生には不安しかない～！
どうも誰かさんを思い出すというか…劣化さ
せた柏木学生というか…悪い予感しかない。
それより何より、気になるのは悠人。小さい
頃から、うめづが彼の帰る場所なんだなあ。
いつでも帰れる、迎えてくれる場所というか。
息子がやりたいことを理解できなくても、理
解しようとしながら、見守り続ける梅津夫妻
のように、めぐみも浩太も、もう少し、悠人に
関心を持ってくれたらよかったのに…と、つ
いつい思ってしまう。愛情の感じ方、伝え方
は人それぞれだから…難しいんだけどね…。
ただ、悠人は、一番褒めてほしい人に、まだ
褒めてもらっていない気がするんだよね…。
実質的には、会社を救った一番の功労者な
のに…。悠人が報われる日が来ますように。
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