「舞いあがれ！」 第80回
第17週「大きな夢に向かって」
今のIWAKURA、見てほしいんです
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＜昼・休憩室＞
（パンを持ったまま居眠りをする舞）
山田） ちょっと！ 大丈夫？
舞） ああ…ごめんなさい。
山田） 遅くまで頑張り過ぎとちゃう？
舞） やることいっぱいあって…。
章） 何でうまいこといけ
へんのですかね？
笠巻） やっぱりうちの機械で
やんのは厳しいねわ。
土屋） ニッケルやなかったら、
もっと簡単なんですけどね。
宮坂) いや、あんな、ジェット機の
エンジンいうたら1000度以上にな
んねんで。ニッケルやなかったら
そないな高熱耐えられへんがな。
相良）へえ～。
宮さん分かってますやん。
宮坂） 勉強しとんねん。
垣内） 珍しい。
宮坂） アホか。
今回の試作、成功さしたいやろ？
笠巻） いっぺん長井さんとこ
相談してみよかあっこやったら
ニッケルも扱うてんのとちゃうか。
章） ああホンマっすね。
垣内） 長井金属いうたら…。
宮坂） 小森。
垣内） うん。
宮坂） 元気にしてんのかな…。
（回想）
小森） 働けたらどこでもええ
ちゅうわけちゃうねんぞ。
ここで働いてるっちゅうことが、
俺の自慢でな。
舞） 戻ってきてもらえるように、
精いっぱい、頑張ります。
小森） そんなん無理やろ。
信じたいけどな。
舞） 小森さん…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜うめづ＞
梅津） いらっしゃい。
雪乃） いらっしゃ～い。
梅津） どうぞ。
（奥の座敷に笠巻と舞）
舞） 小森さん…。
小森） ご無沙汰してます。
笠巻） 久しぶりやな。
長井さんどないしてん。
小森） ああ…急用で。代わりに
行ってこいって言われまして。
笠巻） ああそうか。
ハハ…まあまあ、座って。
小森） はい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（小森にビールをつぐ笠巻）
笠巻） ほな。
元気そうや。
小森） おかげさんで、
なんとかやってます。
ああそれで、相談て何ですか？
笠巻） うん…。
今なぁ、うちで、ニッケル基合金
扱うてんねん。
小森） ニッケルを？
何のねじですか？
舞） 航空機の、
エンジン用のボルトです。
笠巻） せやけど、頭部成形が、
うまいこといかへんねん。
小森） ヘッダー使てやろうと
してはんのですか？
笠巻） せや。
けど、素材が金型に
焼き付いてしもてな。
小森） うちでは、ニッケルはあっため
て加工してるんです。プレス機使て、
電気炉から出したもん直接たたいた
ら、加工しやすなるんです。
笠巻） うん…なるほどなぁ。
小森） まあ、IWAKURAにある機械
では、無理や思いますけど。
舞） あの、そちらの機械、
使わせていただけませんか？
航空機の部品作るて、
父の夢やって…。
笠巻） まあ小森も、知ってるわな。
小森） （頷く）
舞） そやから、今回の試作、
絶対に成功させたいんです。
小森） 長井さんがええねやったら、
俺は別に。
笠巻） 小森から頼んで
もらわれへんかな。
小森） 分かりました。
舞） ありがとうございます。
（頭を下げる舞）
小森） 勘違いせんといてな。
あくまで、先代と、
笠巻さんのためやから。
舞） はい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜長井の工場＞
（プレス機で、ボルトを作る）
（出来上がったボルトを見る章）
尾藤） どうですか？
章） う～ん…。
長井） 頭が、張ってへんな。
章） ほな、もう10度ぐらい、
上げてみましょか。
長井） おう。
舞） 長井さん、
すいません、お忙しいのに。
長井） ハハハ、かまへんかまへん。
この機械も喜んでるわ。最後に、
浩ちゃんの夢のために働けてな。
舞） 最後？
長井） あれ？ 言うてへんかったっけ？
うち、来月、会社畳むことにしたんや。
章） えっ、そうなんですか？
舞） えっ。
長井） 後継いでくれる子供も
いてへんしやな…。
ここらが潮時やろ。
あっほんで、職人らの、
再就職先探してるとこや。
舞） そやったら、小森さんは…。
長井） まだ、どこ行くか決まってへん。
ああそやからこないだ、IWAKURAさん
ところに戻られへんか聞いてみぃ言う
たんやけどな。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜IWAKURA・事務所＞
舞） その話してくれへんかったってことは、
小森さん、戻ってきたないんですかね。
めぐみ） うちは、いっぺん、小森さんに
辞めてもろてんねよってな。
笠巻） あの時はそうするしか
あらへんかったんや。
舞） けど、小森さん前に、言うてくれはっ
たんです。IWAKURAで働いてることが、
俺の自慢やて。そういう会社になれるよ
うに、これまで、頑張ってきましたもんね。
めぐみ） そやね。もっぺん、
小森さんと話してみよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜数日後＞
めぐみ） 小森さん、IWAKURAに、
戻ってきてくれはりませんか？
小森） 俺いっぺん、
要らんて言われたんです。
あん時どんだけ悔しかったか、
悲しかったか…。
笠巻） 長井さんとこ出て、
次の当てはあんのか？
小森） いえ。
めぐみ） 小森さん。会社の都合で、
つらい思いさしてしもて、本当に、
申し訳ありませんでした。
（頭を下げるめぐみと舞）
めぐみ） IWAKURAでは、もう誰にも
そんな思いさしたないて考えてます。
安心して、気持ちよう働いてもらえ
るように、この4年間で、会社、変え
てきました。
舞） 前に、小森さんが言うてた、
働いてることに、誇りを持てる
ような会社にです。
めぐみ） 一日だけ、IWAKURAに
来てもらえませんか？
小森） 一日だけ？
めぐみ） 今のIWAKURA、
見てほしいんです。
それでも、ここで働きたないて
思いはんねやったら、
私たちは、諦めます。
（ホワイトボードに、「IWAKURA・夢」
プロジェクトの工程表や図面）
（4年前の小森の記憶）
小森） これな、俺が作って、
初めて褒められたねじや。
あんたのお父さん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜五島・みじょカフェ＞
信吾） いやどがんしても、こん島
に来てくれる人ば増やしたか。
そんためのアイデアば、下さい。
木戸） そがなアイデアがあれば、
とっくに出しちょっさぁ。
祥子） 一太ごたぁこん島に残って
くれた子たちに、こんままここに
住んでほしかもんね。
さくら） なんとか人ば呼ばんば。
知嘉島もそのうち…。
昔撮影のロケ隊が来た時
盛り上がっちょらんかった？
木戸） ああ…。
さくら） 島にハリウッドみたいな
撮影所ば作れば？
信吾） そがんな予算はなか。
さくら） 映画館でもよかよ。
信吾） そっだけの予算もなか。
木戸） あっ、昆虫博物館どがんな？
世界中の、カブトムシば集めてさ。
祥子） 大人がカブトムシば見に
島まで来るか？
木戸） じゃあ、ばらもん凧美術館。
祥子） 水族館はどうね。
さくら） 櫓人形の館（やかた）。
信吾） うん、いっぺんあの…
館（かん）および、館（やかた）から
離れてもらってもよか？
さくら） あっ、島のよかとこば、手紙に
書いて10人に送ればよかじゃん。受
け取った人や、更に10人に送って…。
信吾） そっや不幸の手紙たい！
却下！
一太） 腹減ったぁ～！
さくら） いらっしゃい。
信吾） よかとこに来た。ちょ…ちょ…。
一太） 何？
木戸） 島に、人ば呼ぶアイデア、
何かなかか？
一太） 無人島にテーマパークば作る。
信吾） そがんな予算やなか！
一太） 若い子が遊びに来るような島
やったら、凛も慶太も、福岡行かん
かったっち思う。
むっちゃんの気まぐれパスタ１つ。
さくら） ごめん、
むっちゃん昼寝ばしちょる。
一太） 気まぐれすぎん？
さくら） 昨日２人で夜釣りに行ったけ
んさぁ。むっちゃんがさぁ、夫婦にな
ってもデートは必要っち。
木戸） あっ、釣りさ。
ここは、釣りの聖地たい。
釣りばしたことんなか、
都会の若者たちに向けて、
釣り教室ば開くちゅうとやどうね？
信吾） おっ。
ファイナルアンサー？
祥子） 舞にも聞いてみらんば。
信吾） あっ電話…。
木戸） おお電話…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（大阪市内の駐車場に舞）
電・舞） もしもし、信吾さん？
ああ、ばんば？
釣り教室？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜みじょカフェ＞
電・祥子） およ。若者向けの、釣り
教室ば開けばよかとじゃなかかっ
ち、豪さんが思いついてな。
電・舞） ああ…ええと思う！
一同） お～！
電・舞） 営業先でもな、釣りが興味
やって若い人、結構おんねん。
その人らに、五島の話したら、
みんな行きたい言うてたよ。
五島で釣り教室やったら、
都会の人も、来てくれると思う。
私も昔さくらさんに釣り教えても
ろて、めっちゃ楽しかったしな。
電・祥子） そうね。あっがとね。
忙しいところ悪かった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
電・舞） ううん、電話うれしかったで。
ありがとう。ほな、みんなによろしく。
うん、またな。
舞） よし…。
（駐車場を出発し、大阪の町を走る舞）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
さくらちゃんがむっちゃんと結婚していた～♪
おめでとうさくらちゃん！ そしてついに顔出し。
イラストだけど…。めっちゃイケメンじゃない？
ここまでハードルをあげてしまうと、あっと驚く
キャスティングか…最後まで顔を出さないか。
見たいような見たくないような…ちょっと悩む。
リストラの時に、最後まで抵抗していた小森さ
んを再獲得に動く舞とめぐみ。誘われたから
と言って…喜んで戻りますとは言えないよね。
勘違いせんといてな。
あくまで、先代と、
笠巻さんのためやから。
浩太は浩太。舞は舞。舞に、恩はないからね。
当然あるだろう反発心もちゃんと描くところが
良き～。単純ではないいろんな思いがあるし、
気持ちを動かすにはいろんな段階が必要で。
今のIWAKURA、
見てほしいんです。
それでも、ここで働きたないて
思いはんねやったら、
私たちは、諦めます。
めぐみと舞が、4年かけて変えてきた会社の
姿を見てもらうのが、一番手っ取り早い。働
いてることに誇りを感じる会社…になったの
か。山田さんは誇りを感じているのだろうか。
山田のそんな場面があったら、泣く自信アリ。
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