「舞いあがれ！」 第46回
第10週「別れと初恋」
俺・・・お前のこと・・・
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大河内） 機軸、機軸センター
ずれてる。足使え。
舞） はい。
舞の心の声） 機体の沈みを感じて、
操縦かんを…引く。
大河内） 駄目だ、早い。
着陸態勢に入った時、エアスピード
が速くパスも高すぎた。
早く操作感覚を覚えろ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
倫子） えっ、迷子？ 柏木が？
水島） シ～！
倫子ちゃん声が大きい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
柏木） これは俺一人で解決
すべき問題なんだ。
舞） けど、パイロットは、一人で
空を飛ぶわけやないですよね。
失敗してもええし、弱いとこ、
見せてもええと思うんです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜体育館＞
舞） 柏木さんも、絶対、大丈夫です。
まあ、私に言われても、説得力ない
やろうけど…。
柏木） いや、そんなことはない。
岩倉の言葉には、
その…強さがある。
舞） そうですか…。
柏木） うん。
岩倉。俺…お前のこと…。
（柏木を見つめる舞）
柏木） いや、ごめん、何でもない。
じゃあ、明日。
舞） え…。
（一人残された舞）
（目がくるくる動く）
舞） 何なん…？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜中澤たちの部屋＞
倫子） えっ、何で今？
中澤） 声がでかいよ。
倫子） ごめん…。
でも、プリソロチェックの前に、
こんなもの…。
（机の上に記入済の離婚届）
中澤） まあ、向こうは俺の事情
なんて知らないからな。
倫子） どうするつもりなの？
中澤） もちろん書く気はない。
けど、さすがにこたえるな…。
俺なりに、家族のためにパイロット
を目指してるんだってことを必死
に伝えてきたつもりだった。けど、
全然伝わらない。
（離婚届を掴み、
棚の後ろに放り込む倫子）
中澤） 何やってんだよ！
倫子） 私ができるのはこれくらい。
中澤） はあ？
倫子） なよなよするだけなら、今は
明日のプリンソロチェックに集中し
なよ。それくらいの覚悟を持って、
ここへ来たんでしょ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜午後11時45分＞
（明かりを消した部屋で、舞と
倫子が二段ベッドで寝ている）
（ぱっちり開いた舞の目）
舞の心の声） あかん…
寝られへん…。
舞ちゃん、
せめて目をつむって！
舞の心の声） 明日は
プリンソロチェック。
プリンソロチェック。
寝な…寝なあかんねん。
（ギュッと目をつむる舞）
（舞の夢）
大河内） 岩倉学生。
舞） はい。
大河内） 速度。パワー絞れ！
舞） 分かってます。
大河内） 分かっているならそうしろ。
舞） ああすいま…。
（大河内の顔が柏木に）
柏木） 岩倉なら大丈夫だ。
舞） わ…。
大河内） どうした、顔が赤い。
舞） いや…何…何もないです。
柏木） 俺、お前のこと…。
大河内） フライトに私情を持ち込むな！
舞） ちゃいます、ちゃうんです。
ごめんなさい。
柏木） 岩倉なら大丈夫だ。
舞） あ…。
大河内） どうした、顔が赤い。
柏木） 俺、お前のこと…。
舞） 何で？ いや、おかしいやろ。
大河内） フライトに私情を持ち込むな！
舞） ごめんなさい。
柏木） 俺、お前のこと…。
舞） えっ、何で？
（目が覚める舞）
舞の心の声） なんとか…寝られた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜食堂＞
宮田） はいどうぞ。
舞） ありがとうございます。
（空いている柏木の向かいの席を
避けて、別の席へ）
水島） あれ…あれ？
舞ちゃん、ここ座んないの？
舞） いや、今日は、
こっちの気分で…。
吉田） 柏木さんと何かあったの？
舞） 何もないよ！
柏木） 何もない！
吉田） そうですか。
中澤） 矢野、昨日は…。
倫子） もう吹っ切れたの？
中澤） ああ。
倫子） ならいい。
（５人を見る水島）
水島） あれれ？
な～んか、みんな、元気なくない？
倫子） そう？
水島） うん。
いやせっかく今日は大事な
プリソロチェックなんだしさ、
胸張っていこうよ。
あっそうだ！
みんなで、円陣でも、組んじゃう？
倫子） ないないないない、それはない。
舞） やりたいかも…。
倫子） ちょっと舞。
水島） いいねいいね。さすが舞ちゃん。
倫子） ほら、柏木もしかめっ面してるし。
柏木） やろう。
倫子・水島） えっ。
中澤） 気合いの円陣、やろう。
これまでの努力も鬱憤も、全部
今日のフライトにたたき込むんだ。
男性） いいぞ！ やれやれ！
（拍手）
舞） ほな。
（周りの学生が遠巻きに見物する中、
円陣を組む６人）
柏木） 恥ずかしいから早くしろ。
水島） え～っと…何て言おうかな。
舞） 合格するぞ～！ お～！
ちゃうか。
柏木） それでいい。
頼む、早くしてくれ。
舞） はい。
全員合格するぞ～！
一同） お～！
（拍手）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
Pre-solo check
プリソロチェック（中間審査）
プリソロチェックとは、
学生が今後、一人での飛行訓練が
できるかを、審査することです。
いつもの担当教官とは、別の教官
が行います。
大河内） よろしくお願いします。
審査官） 何かありますか？
大河内） 情けはいりません。
厳しく審査してください。
審査官） 分かりました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
航空学校で、
脱落者が出ることが多いのが、
このプリソロチェックです。
ここで、フェイル、と言い渡され、
今後訓練を進めていくことは
危険と判断された学生は、
１週間以内に、学校から去らな
ければなりません。
舞） 気を付け、礼。
一同） よろしくお願いします。
（緊張した顔の舞たち）
さあ、トップバッターは、
柏木学生です。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（離陸する飛行機）
（前を見据えた柏木）
（右側に大河内）
（後ろに審査官と舞）
柏木） Level off.
「（英語）JA01TC、3000フィートを
維持して、帯広管制塔のコント
ロール範囲から出ます」。
アプローチ＆ランディング
ブリーフィングを行います。
大河内） 了解。
柏木） 現在、空港の東７マイルを、
3000フィートで飛行しています。
11時方向、5マイル先に見える、
糠内ポイントより、空港への進入
を開始します。
（チェックシートに、「冷静な判断で
報告できている」と書き込む審査官）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
次は、いよいよ岩倉学生です。
頑張れ、舞ちゃん！
舞） 「（英語）JA01TC、ベースにいます。
管制官） 「（英語）IA01TC、風向は南東、
風速5ノット、滑走路17に着陸すること
支障なし」。
舞） 「（英語）JA01TC,滑走路17に
着陸すること支障なし」。
舞の心の声） 集中…集中。
みんなで合格。着陸がちゃんと
できたら、私かて合格できる！
舞） Left clear. Roll in.
（旋回して空港へ向かう）
（前方に滑走路）
舞の心の声） 風は弱いし、視界も良好。
最高の条件やわ。
揚力を体で感じて、確実に後輪で…。
（滑走路に向かって、機体を沈めていく）
舞） Power idle！
（レバーを下げる）
（風の音）
舞の心の声） うわ！ 右に流された！
（大河内が操縦かんに手を伸ばす）
舞） 「（英語）やり直します」。
（手を引っ込める大河内）
大河内） ゴーアラウンド了解。
舞） Max power.
（上昇させる）
舞） Positive gears up.
Air speed check.
Flaps up. Gears up.
Flaps up. Check.
（チェックシートに書き込む審査官）
（再び着陸態勢）
舞の心の声） もっぺん…。
今度こそ…。
舞） Power idle！
（レバーを下げる）
（着陸）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜運行管理室＞
管理官） ああ、ずれたなぁ。
（管理官の傍らで待機する水島）
（手が震えている）
着陸するべき時にできず、
やり直してもセンターラインを
外してしまった舞ちゃん。
審査の結果は、果たして…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「俺…お前のこと…」のあとにどんなセリフが来る
のか。正解は、「ごめん、何でもない」でした～ｗ
いや、まあ、告るのは早すぎだと思っていたから、
想定内と言えば想定内なのだけれど。大事な試
験の前に、動揺させる行動というか、発言をする
のは最悪だぞ、柏木ぃ～。これだから、青春偏差
値の低いエリートは困る。遅れてきた思春期なの
か？ 柏木学生にとっては貴重な成長過程だろう
けれど、巻き込まれた舞は大迷惑な話だよね～。
変な夢にうなされながらも、試験に臨む舞ちゃん。
やり直しは悪いことじゃないよね（…と信じたい）。
何気に手が震えている水島学生の方が不安…。
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