「カムカムエヴリバディ」 第33回
第７週「１９４８－１９５１」
安子さんと一緒んなれ
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ﾗｼﾞｵ） ♪（「COME COME EVERYBODY」）
（るいを背に、
芋飴を売り歩いた大阪の日々）
ﾗｼﾞｵ） ♪「Come, come, everybody
How do you do, and how are you？
Won't you have some candy？
One and two and three, four, five？」
（るいも一緒に聴くようになったラジオ）
ﾗｼﾞｵ） ♪「Let's all sing a happy song
Sing tra la la la」。
（そして今日もラジオの前にいる
安子とるい）
ﾗｼﾞｵ・平川w） 「Good evening, everybody.
Good evening. さあ、まいりましょう。
皆さんとご一緒に楽しく続けてまいり
ましたこのカムカムの英語遊びも、い
よいよ今週いっぱいで、お別れという
ことになりそうです」。
安子） えっ･･･。
ﾗｼﾞｵ・平川） 「で、名残は尽きませんが、
せめてこの最後の幾回かを心ゆくばか
り楽しくいたしまして、皆さんの貴い努
力にお報いすると同時に、どうか、今後
も引き続いて、皆さんの生きた英語を、
十分育て上げていただきたいと思いま
す。では、早速今日の･･･」。
るい） 「カムカム英語」･･･
終わってしまうん？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
算太） 「さあさあ、おはぎ、おはぎ、
おはぎゃあいりませんか？
御菓子司（おんかしつかさ）
たちばなのおはぎ。
初代杵太郎、二代目金太の銘菓、
おはぎおはぎ、
おはぎゃあいりませんか？
どうですか？ 坊ちゃん。
おはぎゃあいりませんか？
きぬ） 「カムカム英語」かあ。
疎開先におった頃聴きょおった。
♪（ラッパの音）
安子） 大阪で暮らしょおった時に
始まったんじゃ。
♪（ラッパの音）
安子） るいを背負うて、
芋飴ょう売り歩（あり）いて。
しゃあけど一個も売れなんで。
♪（ラッパの音）
安子） つろおて･･･。
そねえな時に出会うたんが
「カムカム英語」じゃった。
平川先生の温けえ声聴きょおっ
たら、明日も頑張ろういう気に
なれたんじゃ。
♪（ラッパの音）
きぬ） やかましいなあ！
ええ話しょんのに、
ピープーピープー。
力） おなかの子に聴かしよんじゃ。
♪（ラッパの音）
安子） るいの入学と
どっちが先じゃろうね。
（笑い声）
算太） おはぎおはぎ、
おはぎゃあいりませんか？
さあさあ皆さん！
あれ誰もいなくなった･･･。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
勇） るい！
ちょっとこっちへ来られえ。
るい） は～い。
勇） ええか？ いくで？
ほれ。
るい） わあ～！
安子） かうぇえらしいなあ。
千吉） るいが、春から入（へい）る、
雛丘小学校の制服じゃ。
おじいちゃんの会社で作りょんぞ。
るい） へえ～！
雪衣） 雛丘小学校いうたら、
新設の私立ですねよね？
千吉） そうじゃ。
算太） でけえ仕事じゃのう。
学生服の雉真の面目躍如ですなあ。
千吉） 勇がようやってくれた。
算太） 雪衣ちゃん。
まあたちばなも、るいが入学する頃
にゃあ、店を構えられるはずじゃ。
雪衣） そうですか。
算太） ああ。
雪衣） そん時は買いに行きます。
算太） フフ･･･いや･･･雪衣ちゃんが
そんな金やこ払わんでも･･･。
まあ何じゃ･･･かぞ･･･家族？
みてえな、もんじゃから。
安子） ･･･にしても長えじゃろう。なあ？
勇） いけるじゃろう。
安子） ああ肩幅はぴったりじゃね。
るい） うん。
（雪衣の目は、勇に向いている）
安子） うん似合うとる。
勇） 似合うとるわ。
安子） お礼言うた？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
男性） 新素材、合成繊維、
ナイロンでございます。
勇） ナイロン･･･。
男性） ナイロン？
男性） 生地が強い。滑らか。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜事務所＞
林） 朝鮮特需のおかげもあって、
ご覧のとおり、業績は右肩上がり
です。原材料が調達できるように
なった上、社員らが一致団結して、
販路を広げてくれました。
それもこれも、野球部で培われた、
チームワークのたまものです。
全く頼もしい。勇坊ちゃんにゃあ
もう･･･何の心配（しんぺい）もあ
りませんなあ。
千吉） いや･･･。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夜・勇の部屋＞
雪衣） 失礼します。
坊ちゃん。
一服されたらどうですか？
勇） うん？ ああ、そうじゃな。
雪衣） お疲れじゃねえですか？
昼間は仕事をしながら、
終業後もお休みの日も、
野球の練習やら試合やらで。
夜もこねえして、お勉強されて。
勇） なに、どうちゅうことはねえ。
うん？ 何ならこりゃあ？
ただの、お茶じゃねえんか？
雪衣） 梅干しを潰して入れとるん
です。滋養があるそうじゃから。
勇） ああ、そうなんか。
うん。そねん言われたら、何か、
みるみる、力が湧いてくるような
気がするのう。
（笑い声）
千吉） 勇。ちょっとええか？
勇） おう。何？
千吉） 話があるんじゃ。
雪衣） 旦那様にもお茶を
おいれしましょうか？
千吉） ああ、ええ。
（部屋を出る雪衣）
千吉） 勇。
そろそろ、嫁（よみ）ょうもらえ。
おめえは、後継ぎなんじゃ。
いつまでも、独りでえええわけが
ねえじゃろう。
勇） ああ･･･どっかの、ご令嬢と、
見合いせえいうことか。
どこの誰じゃ？
父さんのことじゃ、もう、相手の
目星は、つけとるんじゃろう。
千吉） 安子さんじゃ。
安子さんと一緒んなれ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（部屋の外で聞いている雪衣）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
勇） ハ･･･ハハハッ。
何じゃ何じゃ、何の冗談じゃ、
父さんらしゅうもねえ。
千吉） よう考えてのことじゃ。
今のままじゃあ、安子さんの
立場は宙ぶらりんじゃ。
るいの、小学校入学を機に、
はっきりしたった方がええ。
勇） いや･･･そねんこと、
できるわけがなかろうが。
義姉さんは、兄さんの嫁さんじゃ。
千吉） 未亡人になったおなごが、
夫の兄弟と再婚するんは、
そねん珍しい話じゃねえ。
勇） せえでも･･･。
千吉） 勇。おめえにとって、
安子さんは、ただの幼なじみ
じゃねえんじゃろう。
とうに分かっとった･･･。
おめえが、稔と安子さんを
一緒にさせたってくれえと、
頼みに来た時からのお。
稔じゃったら言うじゃろう。
安子さんを任せられるんは、
勇しかおらんと。
安子さんにゃあ、
わしからは、何も言わん。
自分で、よう考えて決めえ。
（出て行く千吉）
（ぼんやり座った勇）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜台所＞
算太） おったおった雪衣ちゃん。
あ～この上着、
虫が食うてしもうとってのう。
繕うてもらえんじゃろうか。
（雪衣の涙に気付く算太）
算太） おうおう･･･
どねん･･･どねんした？
うん？ 腹でも痛（いて）んか？
雪衣） 分かりました。
繕うておきますね。
（上着を受け取り、立ち去る雪衣）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜昼＞
（ぼんやり事務所へ向かう勇）
林） あっ、坊ちゃん。今大阪の、
進駐軍から電話がありました。
勇） 進駐軍？
林） 雉真繊維野球部と、
試合がしてえそうです。
勇） ええ？ 本当ですか？
林） うんうん。ホホホッ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜ディッパーマウスブルース＞
定一） るいちゃん。
大きゅうなったのう！
何ゅう飲む？ コーヒーか。
安子） あっ、まだちょっと
早えかもしれません。
定一） ああそうか。
そんなら、ホットミルクにしょうか。
るい） はい！
定一） よっしゃよっしゃ。
安子） ありがとうございます。
定一） はい。
安子） もうすっかり、
元の喫茶店に戻ったんですね。
定一） 進駐軍が引き揚げたから
のう。バンドの連中も、皆、都会
へ行ってしもうたわ。
安子） 定一さん。
定一） うん？
安子） 「サニーサイド」かけて
もろうてええですか？
定一） ああ。もちろんじゃ。
ﾚｺｰﾄﾞ） ♪（「On the Sunny Side
of the Street」）
安子） お父さんとお母さんの、
大切な歌じゃ。
（回想）
稔） 「Louis Armstrong.」、
「ひなたの道を」ってことかな。
安子） もうじき「カムカム英語」は
終わってしまうけど、またひなた
の道を見つけて歩いていこうね。
るい。
るい） うん！
（ドアが開く音）
定一） あっ、いらっしゃい。
ﾛﾊﾞｰﾄ） こんにちは。
定一） コーヒーじゃな？
ﾛﾊﾞｰﾄ） はい、お願いします。
安子） ローズウッドさん！
ﾛﾊﾞｰﾄ） Mrs. Kijima！
定一） 何じゃ、知り合いか？
安子） はい。
えっ？ しゃあけど、なんで？
もう引き揚げたんじゃとばあ･･･。
ﾛﾊﾞｰﾄ） まだ大きな都市には、
仕事が残っています。
私は大阪勤務になりましたが、
時々、岡山に来ています。
この町の復興を見届けたいから。
（カウンターをのぞき込むロバート）
ﾛﾊﾞｰﾄ） 定一さん。
定一） うん？
ﾛﾊﾞｰﾄ） お酒は飲んでないでしょうね？
定一） うるせえのう。わしの復興
まで、見届けんでもええんじゃ。
ﾛﾊﾞｰﾄ） また肝臓悪くしたら、
いざ健一さんが帰ってきた時、
会えなくなりますよ。
定一） 頼んでもおらんのに、健一の
消息探ろうしょうるんじゃ。･･･っと
におせっかいなアメリカ人じゃ。
（笑い声）
（るいを見るロバート）
ﾛﾊﾞｰﾄ） Is she your daughter？
（お嬢さんですか？）
安子） Yes. （はい）
るい。ローズウッドさんじゃ。
ほら、前にクリスマスプレゼント
もろうたじゃろ。
るい） うん！
ﾛﾊﾞｰﾄ） Hi. I'm Robert.
（こんにちは、ロバートです）
るい） Hello. My name is Rui Kijima.
（こんにちは、
私の名前は雉真るいです）
It's nice to meet you, Robert.
（どうぞよろしく、ロバートさん）
ﾛﾊﾞｰﾄ） Wow！
（笑い声）
安子） 赤ん坊の頃から、
「カムカム英語」聴きょうったから。
定一） さすが稔の子じゃのう。
ﾛﾊﾞｰﾄ） Nice to meet you too, Rui.
るい） はい！
（笑い声）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夜・勇の部屋＞
（勇がボールの修理をしている）
（稔の写真に目をやる勇）
（回想）
勇） わし･･･
あんこのことが好きなんじゃ。
諦めん。甲子園も･･･。あんこも。
（写真に向き直る勇）
勇） 兄さん･･･。
勇の心に、
一つの大きな決意が、
芽生えていました。
Isamu was about to
make a big decision.
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ドラマを見続けてうん十年･･･のおかげでつい
つい、先読みしてしまうクセがついてしまった。
兄の嫁さんが弟と結婚することは、確かによく
あったお話で、てっきりもうその目はなくなった
のかと思ってたけど、時間が経ったからこその
今回のお話なのね。それもこれも、千吉さんの
何でもお見通しだったからなのか･･･。何気に
凄いよ千吉さん！ 美都里さんが、「当たり前じ
ゃ、私が結婚した男なんじゃから」と言いそう。
この時代、ビジネスも、人間関係にも目が利く
男性って、かな～り貴重じゃないかい？ 結婚
するなら千吉さんみたいな人がいいわあ～♪
稔じゃったら言うじゃろう。
安子さんを任せられるんは、
勇しかおらんと。
これはね～確かに言うかもしれないねえ。知
らない他の男に渡すより、勇の方がいいよね。
とはいえ、安子が承諾することはないよね～。
また勇ちゃんが振られるのはちょっと辛い･･･。
でも勇はいい男だから、きっと幸せになれる。
勇を、好きな人と結婚するのがいいかもね～。
またもや安子の前に現れるお節介なアメリカ
人ロバートさん！ 彼も、いい男なんだけど･･･。
あっちへ行くと見せかけてこっちだよ～ん的な
展開がお好きなようなので、どうなることやら。
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