大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」第34回~226 | 日々のダダ漏れ

日々のダダ漏れ

日々想ったこと、感じたこと。日々、見たもの、聞いたもの、食べたものetc 日々のいろんな気持ちや体験を、ありあまる好奇心の赴くままに、自由に、ゆる~く、感じたままに、好き勝手に書いていこうかと思っています♪

大河ドラマ 
「いだてん~東京オリムピック噺~
 



第34回~226

 

 

※無断転載対策のため、不本意ですが、

しばらく、注意喚起させていただきます。

 

こちらの記事は、「日々のダダ漏れ」 の

記事です。ご覧になっているブログ名が

「日々のダダ漏れ」、以外のブログ名は、

記事を無断転載しているブログです!!

↓ オリジナルのブログはこちらです♪

「日々のダダ漏れ」

 

 

<夜明け前 赤坂・田畑家>

(ベルギー国旗の小旗を作っている菊枝)

(眠っている政治)

(行軍する音)

 

**********

 

<熊本>

四三) スヤ…お義母さん…子どもたち…許してくれ。

(手紙を残し、出て行く四三)

 

**********

 

おりん) 今度の引っ越しは、さすがに荷物が多いね。

(夜明け前、家の表で子どもたちと雪合戦をする孝蔵)

 

**********

 

<午前5時 赤坂表町>

 

志ん生) 昭和11年2月26日、午前5時。

 雪道を踏み鳴らす、軍靴の音が、

 赤坂表町へ、向かっておりました。

 

**********

 

(行軍する音)

(赤坂の自宅で仮眠を取っている政治)

 

是清) そのオリンピックとやらは、

 お国のためになるのかね?

政治) お国のためには、なりませんな。

是清) ならんのかね。

政治) なりません。しかし、若い者には励みになります。

 

**********

 

(屋敷に踏み込む軍人)

女中) ああっ、ああ~。

 

**********

 

政治) その若者の力を、国を豊かにするために、

 生かすも殺すも、先生方次第…でしょうな。

 

**********

 

(時計の時報)

中橋中尉) 天誅~! 昭和維新、断行!

(銃声)

(だるま絵の屏風が倒れる)

 

**********

 

<田畑家>

菊枝) あなた…あなた…起きて下さい。

(ソファーで目を覚ます政治)

(丸眼鏡をかけ、身をかがめ、

 カーテンの隙間から外を見る政治)

(雪の中を進む軍人の隊列)

(軍人と目が合い、隠れる政治)

(外に出て、隊列を目で追う政治)

 

志ん生) これが、首都東京を震撼させた、

 ニ・二六事件の始まりでした。

 

**********

 

<午前6時半・朝日新聞社>

緒方) 号外出すぞ。いつでも刷れるようにしといてくれ。

男性) はい!

細田) とても駄目だ! 

 警視庁も軍隊に占拠されて近づけない。

政治) クーデターですか?

細田) 陸軍だそうだ。首謀者は、皇道派の影響を受けた

 青年将校。「昭和維新 尊皇斬奸」をスローガンに決起だ。

 岡田首相がやられたらしい。

一同) えっ!?

緒方) こりゃ…五・一五の比じゃないぞ。おいほかには?

細田) 渡辺錠太郎教育総監が、殺害されたと。

緒方) よし、一時間で紙面組むぞ。

一同) はい!

尾高) 緒方さん、緒方さん!

 内務省から…一切の記事を差し止めろって。

政治) 何!?

 

**********

 

<午前7時・熊本>

美川) 全く意気地がないな~金栗氏は。

 本当なら、ラジオで流れるはずだろ。

小松) 駅長さんが言うとったけん、

 暴動の起きて、東京は大混乱。

四三) だけん、家出は中止。

 まあ行っても、かえって迷惑のかかるけん。

 

**********

 

<午前8時・孝蔵の家>

(クラクション)

おりん) ほら風邪ひくから中入ってな。

孝蔵) 遅えじゃねえか! えっ? こちとら昼

 からラジオなんだ。あっ? 雪のせいかい?

運送屋) 旦那~ご存じねえんですか?

 

志ん生) 「旦那ご存知ないんですか? 兵隊が武装して、

 クーデターってのやってて、大変ですよ」。…って、私は

 ニ・二六事件のことを、運送屋から聞いたんです。

 

**********

 

<朝日新聞社>

緒方) 現在占拠されているのは、首相官邸、

 警視庁、それと…。陸軍官邸はどうだ?

(窓の外を見る政治)

政治) あああ~!

緒方) 何だ!? どうした田畑!?

緒方さん電話です!

政治) あっ、あっ…!

男性) 緒方さん大阪本社から!

男性) 何だ何だ、言葉で言え言葉で。

政治) あっ、あっ…ああ~!

男性) 何だ!?

(悲鳴)

(軍人が踏み込んでくる)

(隅に追いやられた政治たちや

 電話中の緒方に銃剣が向けられる)

男性) 将校が…一番偉い人に会わせろって。

(電話に向き直る緒方)

電・緒方) ああ…残念だが、

 これで最後になるかもしれん。

(電話を切り、廊下に出る緒方)

(ピストルに手をかける中橋の懐に入る緒方)

緒方) 私が緒方だ。

(体を密着させ、名刺を出す緒方)

緒方) この社の、代表者だ。

中橋) 高橋是清に天誅を下してきた。

(銃口を天井に向ける中橋)

中橋) 国賊新聞を叩き壊すのだ!

緒方) ちょっと待ってくれ! ちょっと待ってくれ!

 ちょっと待ってくれ…。中には、社員もちろん、

 女子どももいる。まずはそれを出す。

 だから…ちょっと待ってくれ。

(部屋に入る緒方)

緒方) みんなを待避させろ。

政治) やつらに屈するんですか?

緒方) 残って、変なものまで、刷らされたら

 かなわん。みんな出ろ。

政治) ここで踏ん張らなければ、

 言論の自由は終わりですよ。

緒方) しかし田畑…。

政治) この先ずっと我々は、

 変なものしか刷れなくなりますよ。

緒方) あいつらは…高橋是清を、殺したやつらだ。

(中橋を見る政治)

中橋) 全員外へ出せ!

男性) 出ろ!

緒方) 出ろみんな! 行け!

男性) 出ないやつは殺すぞ! 出ろ!

政治) おい!

(オリンピックの写真が踏みつけられる)

政治) おい! おい!

男性) やめろやめろ…田畑、おい!

政治) おい…おい!

緒方) 田畑! 田畑!

(殴られてもつかみかかる政治)

政治) ああ~!

男性) 田畑、やめろ! やめてくれ!

政治) ううっ、ううっ…。

男性) やめろ田畑! 田畑出ろ!

政治) ああっ、あっ、あっ…!

男性) 大丈夫か!? おい!

 

**********

 

志ん生) ………。よいしょ…。

五りん) あれ? 師匠サゲないで下りてきちゃった…。

志ん生) おしまい。お茶をくれ。

男性) はい。

美津子) お父ちゃん…。

志ん生) あの時代の話は駄目だな。

 笑いになんねえや。はあ…。

美津子) 五りん、悪いけどね、あと頼んだよ。

五りん) ええっ!?

 

**********

 

<午後5時半>

五りん) 何せ、前代未聞のクーデター事件。

 政府は報道を差し止め、新聞もラジオも

 事件を伝えられずにいた。

 

<NHKラジオスタジオ>

孝蔵) 「さんまとは何じゃ?」。「え~下魚でござりま

 する」。「そうか。よし、余はそれを食すぞ」。えっ?

男性) 何してんの! 演芸は中止! 帰った帰った!

 

五りん) 第一報は、事件発生から

 15時間がたった、午後8時半

 

ラジオ) 「臨時ニュースを申し上げます。

 臨時ニュースを申し上げます。陸軍省発表」。

 

**********

 

<熊本・池部家>

ラジオ) 「本日午前5時頃、一部青年将校が、『昭和維

 新』を標語に決起し、首相官邸ら、都内主要機関を

 襲撃せり。将校らの決起せる目的は…。その趣意書

 によれば、内外重大危急の際、元老、重臣、財閥…」。

四三) ただいま~帰りました。

幾江) し~っ、大事なとこが聞こえん。

スヤ) ごはんそこ。

四三) あっ…あの~書き置きは…。

幾江・スヤ) し~っ!

ラジオ) 「占拠されたのは、首相官邸、警視庁、斎藤

 内大臣私邸、渡辺教育総監私邸、高橋是清大蔵

 大臣私邸」。

 

**********

 

(自宅で眠る政治)

(オリンピックの夢を見ている政治)

是清) 君は、怖いものなしだな~。

(銃声)

 

ラジオ) 「勅令が発せられたのである。既に、

 天皇陛下のご命令が発せられたのである」。

 

**********

 

五りん) 首都機能が占拠されるという事態を受け、

 政府は戒厳令を敷いた。反乱軍は29日に投降し

 たが、依然東京は厳戒態勢のままであった。

 

ラジオ) 「逆賊とならなければならない。正しいことを

 したと信じていたのに、それが間違って…」。

(ソファーで眠る頭に包帯を巻いた政治)

菊枝) あなた…ねえ、あなた…。

 まーちゃん…まーちゃん、起きて。まーちゃん…。

(顔を洗う政治)

政治) また2、3日、会社に泊まり込みだ。あれを。

菊枝) あっ、下着でしたらカバンに。

政治) ああ…。

菊枝) あっ、まーちゃん。

政治) どうせ検閲が入って、ろくな記事など書けんだ

 ろう。あっ、それから…まーちゃんと呼ぶのは、2人…。

山本) 田畑さん!

政治) あっ、山本さん、どうしました?

山本) ラトゥールが、サンフランシスコを出港しました。

政治) 何? 来るのかこんな時に。

山本) 2週間後、横浜に着くそうです。

政治) 嘉納さんは何と?

山本) 「こんな時だからこそ、オリンピック」と。

政治) どんな時でもオリンピックだろあの人は。

 すぐ行きます。

山本) はい…奥さん、お邪魔しました。

(タバコに火をつける政治)

(タバコを吸い、灰皿のふちに置く政治)

菊枝) シャツ…アイロンかけますから、少し待って。

(タバコの吸い口を手前に置き直す菊枝)

政治) 俺は、怖い。…是清さんも、犬養さんも…

 俺が関わった政治家は、次々に殺された。

(タバコを吸う政治)

政治) 話せば分かると言った犬養さんは、話の通じ

 んやつらに殺された。ロサンゼルスの年だ。その4

 年後、ベルリンの年に是清さんが殺された。

 次は誰だ!? 緒方さんか? 河野か? 俺か!?

菊枝) そのように考えてはいけません。

(灰皿に置いたタバコの向きを変える菊枝)

(タバコを吸う政治)

政治) 記者になど、なるんじゃなかったよ。

 記者じゃなかったら、もっと脳天気にオリンピックに

 邁進できた。なまじ政治に片足突っ込んでるから

 齟齬が生じる。「こんな時だからこそオリンピック」

 の「こんな時」が、どんどん悲惨な状況になってい

 くのを、記者の田畑は見過ごせない。

菊枝) だったら…やめたらどうです?

政治) やめる? 記者をかね? それとも…

 オリンピックをかね!? 答えろ、おい!

 それによっちゃ、たとえ君でも…。

菊枝) どちらにしろ、あなたの忙しさが半分になる。

 夫婦の時間が増える。新婚旅行にも行ける。

政治) (タバコをくわえ) いや…あっつ!

菊枝) タバコの本数が減る。私にはいいことばかりです。

政治) 悪いことは何だ!? えっ? 来ないんだぞ!?

 あれが東京に! あの興奮や、感動を知らずに君は死

 ぬのかね!? えっ? 冗談じゃない! 新婚旅行など

 いつでも行ける!

菊枝) できました。

政治) 貸せ!

 

**********

 

(通りで足を止める政治)

(道を封鎖した軍人が、政治に銃剣を向ける)

政治) 何だこれ…。

 

**********

 

<東京市庁舎>

治五郎) 田畑、遅い! 

 ラトゥールが来るんだぞ、ベルギーから!

 東京で、オリンピックを開催できるか否か、

 IOC会長自ら、品定めに来るんだぞ!?

政治) 知ってますよ、新聞読んでますから。

牛塚) 「最近の東京事変は、オリムピック招致問題

 に対しては、何ら影響をあたへるものではない」。

治五郎) さすが我が友ラトゥール。分かってる。

政治) 分かってないよ! あんたら二人もどうかして

 んだよ! 戒厳令ですよ。剣つき鉄砲構えた兵士が

 そこら中に突っ立ってにらんでやがる。いつ反乱軍

 と鎮圧軍で戦が始まるか…民間人が巻き込まれ

 るかも分からない。そんな東京でお祭りですか? 

 こんな時にオリンピックにですか? 

治五郎) 頭、どうした?

(包帯を取る政治)

政治) やられましたよ反乱軍に。

 嘉納さん、あんた本気で、この日本で今、オリン

 ピックがやれると思ってるのか? 俺は無理だと

 思う正直。寝てないし…怖いし! 死にたくない!

(日の丸と並んだオリンピックの旗を見る政治)

政治) でもやりたい! だから嘉納さん、

 あんたが本気ならついていく。

 どうなんだよ!? やれんのかよ!?

治五郎) やれるとかやりたいとかじゃ

 ないんだよ。やるんだよ! 

 そのためなら、いかなる努力も惜しまん!

政治) よ~し分かった! やりましょう!

 今後一切、後ろ向きな発言はしません。

 皆さんも…オリンピックをやるんです東京で!

 これ…家内が作りました。どうぞ! 

 どうぞこれ…。家内が作りました。どうぞ。

牛塚) ベルギーの国旗。

政治) ええ。どうぞどうぞ…。振りましょうよ。

牛塚) いい奥さんだな…。

 

**********

 

五りん) ラトゥールを迎える前に、ちょっとおさらいです。

 何としてもオリンピックを開催したい日本は、最大の

 ライバルローマに、開催を譲ってもらうという約束を取

 り付けた。相手は、イタリア首相、ムッソリーニ。しかし

 …ラトゥールを怒らせてしまった日本の作戦は…?

 

治五郎) 東京に呼んだらどうだろう? 

 謝るついでに、東京を視察してもらうんだよ。

 至れり尽くせりのおもてなしで、接待するんだよ。

副島) 優先すべきは神宮外苑競技場。

 オリンピックのメイン会場を見て頂くこと。

牛塚) 歌舞伎や、相撲なども視察し、

 日本文化にも触れて頂きたい。

山本) これは…戒厳令下の東京を、

 横断することになりますな。

政治) …となると専用の車が必要ですな。

 抜け道に詳しい運転手も。

治五郎) それなら…ふさわしい男が一人いる。

政治) ふさわしい男?

治五郎) ライトマンがね。

 

**********

 

1936年3月19日

 

五りん) 3月19日、IOC会長、アンリ・ド・バイエ

 =ラトゥール伯爵が東京に到着しました。

(市庁舎に集まった子どもたちや招致委員)

治五郎) いいか? おもてなしだからといって、

 卑屈になってはいかん。あくまでもナチュラルに。

政治) はい。

治五郎) 自然にだ。なっ?

政治) 自然にね、自然にいこう。

治五郎) ナチュラルに。

政治) はい。

治五郎) ラトゥールばんざ~い!

政治) あっ!

一同) ばんざ~い! ばんざ~い! ばんざ~い!

(ベルギーの小旗を振りながら歌う子どもたち)

子どもたち) ♪走れ大地を 力の限り

 泳げ正々 しぶきをあげて

(満面の笑みの治五郎)

治五郎) (英)長旅ご苦労様でした。

ラトゥール) (仏)遠かった。出発して1か月。

 永遠に着かないと。

治五郎) ハッハッハ…。(英)私や岸君は、

 毎年そうやって、参加してきました。

 ざまあみろ~。ハハハハハ。

 

**********

 

治五郎) ミスター牛塚。

牛塚) ウェルカム 東京。心から、歓迎します。

ラトゥール) (仏)初めまして。

副島) あ~副島。

 (仏)オスロには伺えず、失礼しました。

 どうしても、謝罪したいという男が…。

杉村) ウェルカム トゥ トウキョウ プレジデント。

 

五りん) 見ました? 

 ラトゥールの顔色が今さっと変わりましたな。

 

(杉村と握手するラトゥール)

記者) ラトゥールさん、この度の訪日の、ご用件は?

ラトゥール) (仏)1940年のオリンピック大会、

 東京でできるかどうか、見極める。

 

**********

 

五りん) 招致委員会によるラトゥール

 全力接待作戦が始まりました。

 

清さん) 遅いよ旦那。何か、人集まってきちゃったよもう。

政治) おい…何だ? 君は。

清さん) 今日は陽気がいいから、

 隅田川を下るのがいいんじゃねえか? 

小梅) 桜の季節だしね~。

清さん) ああ。

政治) 答えろ。「何だ? 君は」と聞いている。

清さん) 清さんです。

政治) 清さんだそうです。

治五郎) ああ、清さんだよ。

政治) えっ?

 

五りん) 治五郎先生のライトマンこそ、

 元車夫の清さんでした。

 

清さん) 嘉納治五郎の頼みとあっちゃ、断れねえだろ。

治五郎) じゃあ田畑君、ガイドよろしく。

政治) えっ?

小梅) あんた、最後のお勤め、しっかりね。

清さん) あ、あ行ってくる。よし…あらよっと!

政治) 「あらよっと」じゃねえよ…えっ? 待って待って…。

小梅) 行ってらっしゃ~い。

政治) 何で俺? ねえ…。待て…ちょっとおい…。

 何で俺まで…おい。

 

五りん) 一行は、隅田川沿いを桜を見ながら新橋

 方面へ流し、歌舞伎を鑑賞して、芝の料亭で会食、

 そしてこの日は、オリンピックのメイン会場、明治

 神宮外苑競技場の視察。勝負の日です。

 

治五郎) ほぼ完成という時に、関東大震災が起こり、

 ここを避難所として、一時期、東京市民に開放しま

 した。おい田畑。

政治) 俺?

治五郎) あれあれ。

政治) 約5000人の避難民が、ここで生活しておりました。

(その時の写真を見るラトゥール)

清さん) 俺も、住んでたよ。ここで、運動会もやったよな。

治五郎) ああ。うるさい自治会長だった、清さん。ハハ

 ハハ…。アントワープの大会は、実に素晴らしかった。

 戦争で痛手を受けた町で、あえて開催した、あなたの

 決断に、感銘を受けた。この東京も、震災で被害を受

 けたが、13年かけて、ようやく立ち直った。

 だからこそ、私はやりたい、ここで、オリンピックを。

ラトゥール) アッ! ハハハ…。

(2人のランナーがやってくる)

ラトゥール) カナクリ!

政治) ノー ノー ノー ノー…あれは、

 孫基禎(そんきてい)と南昇竜(なんしょうりゅう)。

 朝鮮から来て頑張ってる選手です。

清さん) マラソン日本代表の最有力だ。2人とも

 金栗さんに憧れて、ハリマヤの足袋で走ってんだ。

(競技場を見回すラトゥール)

ラトゥール) (仏)競技場は、これ以上大きくする必要はない。

副島) (仏)しかし、ベルリンは10万人収容の競技場。

 ここはせいぜい、4、5万…。

ラトゥール) (仏)大きさは重要じゃない。

 市民のためのものならば。

副島) (仏)他に行きたい所は?

ラトゥール) (仏)岸さんの墓参りがしたい。

治五郎) サンキュー。(英)岸君も、泣いて喜びますよ。

 

五りん) 明治神宮を参拝したあと、岸清一体協会長

 の墓に花を手向け、YMCAプールを視察し、寄席

 にも足を運んだんだそうです。

 

**********

 

<落語「目黒のさんま」by金原亭馬生>

孝蔵) こう…蒸しへかけてシュ~ッと脂を取っちゃった。

 …でもって小骨があっちゃいけないってんで、こうみん

 なでもって毛抜きで一本一本…。

政治) フィッシュボーン…。

孝蔵) さんまが、クチュクチュになっちゃった。

政治) 何だ何だ? どうした?

清さん) 今日いいよ。今日いいよ、あれ。

政治) えっ、そうかい?

孝蔵) チュパ~ッとこう、脂が跳ね回ってるやつが

 出てくると思ってたもんだから…。「これが、さんま 

 か? おっ…いや~そちも堅固で何よりであった。

 お~めでたいな~」。(食べる仕草をする孝蔵)

(不思議そうな顔のラトゥール)

孝蔵) 「これ…即答を許す。

 このさんま、いずこで仕入れたか?」。

 「はっ、日本橋、魚河岸にございます」。

 「日本橋? それでいかん」。

政治・孝蔵) 「さんまは、目黒に限る」。

清さん) (小声で)ちょっとうるさいなお前…。

(笑い声)(拍手)

清さん) よっ! いいぞ! 馬生! 馬生! 馬生、いいぞ!

 

**********

 

清さん) どうだい? 暮らしは。貧乏か?

孝蔵) カツカツだよ。ガキが3人いるからね。

清さん) フフッ、3人も! どうりでな~。

孝蔵) 何だよ?

清さん) 腹決めたって感じがしたよ。頼んだぜ

 孝ちゃん。世の中ちっともよくならねえからよ、

 せめて思いっきりバカ笑いさせてくれよ。なっ?

政治) 早く出せよ俥屋。早く。

孝蔵) おっ?

政治) ネクストはここね、二重橋。ダブルブリッッジね。

孝蔵) あれ? 浜松の河童!

政治) うん?

孝蔵) お前河童を運んでんの?

清さん) 河童? 河童?

政治) ダブルブリッジ。

(ラトゥールを政治を乗せ、車を引く清さん)

(角を曲がると軍人。向きを変え、別の道へ)

政治) おい…何でこんなとこ通んの?

清さん) 近道なんだよ。急いでんだろ?

政治) いやだけどさ、なにもこんな汚え路地…。

ラトゥール) ストップ ストップ ストップ…。

政治) ほら、興味持っちゃったよ。ほら。あ~あ~あ~。

(車から降りるラトゥール)

ラトゥール) ホワット イズ…ホワット イズ ディス?

政治) えっ?

清さん) 何って…。

政治) ちょっとちょっと…。

(路地の先に子どもたち)

清さん) ベーゴマ、けん玉、あとゴム跳び…。

子どもたち) ♪かごの中のとりは いついつ出やる

 夜あけのばんに つるとかめがすべった

 うしろのしょうめん だ~れ

清さん) お~来た来た来た。

(草で編んだ輪っかをいがぐり頭に載せてあげる女の子)

女の子) おめでとう。

(大喜びのラトゥール)

ラトゥール) Les Jeux Olympiques(オリンピック)!

清さん) オリンピック? ああ、下町オリンピックだ。

ラトゥール) (仏)君の写真集よりいいぞ。

政治) 何?

清さん) 何て?

(匂いを嗅ぐラトゥール)

政治) あっ…どっかでさんまでも焼いてんじゃねえか?

ラトゥール) オナカ スイタ。

政治・清さん) えっ?

清さん) 春にさんまがあるかよバカ。めざしだろ。

政治) 春さんまってのがあんだバカ。おなかすいた?

ラトゥール) オナカ スイタ。

政治) もうちょっと我慢できないかな?

 うなぎ予約してるしね。

ラトゥール) イヤ…オナカ スイタ。

政治) 子どもか。我慢して我慢して。

清さん) 俺の弁当でよかったら、食うかい?

 

**********

 

<熊本・池部家>

四三) 義母上、ちょっと、お話が。

スヤ) ど~れ、片づけて風呂ば沸かさんと…。

四三) スヤも。お前たち…お前たちも聞いて。

 嘉納治五郎先生から…こぎゃ~ん手紙が来たったい。

(渡された手紙を見る幾江)

四三) 東京に、オリンピックば呼ぶ運動ばしよるけん、

 四三君もひとつ、力になってくれって。

幾江) それで…

 ここ数日そわそわしてると思っとったばってん。

四三) すんまっせん。

幾江) 行くとか? 身重の嫁ば、里に置いても、

 行かにゃ、ならんとか、そるは。

 そぎゃん行きたかなら、行ったらよか。

 そんかわり、立派に、きっちり成し遂げてこい。

 国ば挙げてのお祭りじゃけん。

四三) は…はい! あ~よかった~。あっ、

 4年後の大会ば見届けたら、すぐに帰ります。

 まあ…俺なんか留守しても…

 うん、寂しゅうはなかでしょうが、ハハッ。

 あっ、ほっとしたら、腹ん虫鳴りだした~。

 ハハハハ。スヤ、お代わり。

スヤ) はい。

男性) ほら、食べれって。

四三) よし子、な~し野菜ば残すと?

女性) ちゃんと野菜も食べ…。

四三) ほれ…。

(箸を置く幾江)

幾江) 寂しくなかとはどぎゃんこつか?

 寂しくなかこつあるわけなかろが。

 な~しそぎゃん他人行儀な冷たか

 こつば言うとか、こん男は。

ヤス) お義母さん…。

四三) すんまっせん…いや、ばってん…ばってん

 お義母さん、スヤが一番って言うとりましたけん、

 スヤと暮らすために、俺を養子に…。

幾江) 初めはそぎゃんでん…情の移るとたい。

 ましておるは、せがれに死なれて…あんたは

 生みの親ば亡くして、もうほかに頼るもんもお

 らん。もう、親子になるしかなかとばい!

 もう順番に、同じ墓に入るしかなかとばい!

 だけんもう…観念せい! 腹くくって、息子らしくせい!

 おるはとうに諦めたぞ。働かん、走ってばかりの息子

 でん、4年もおらんかったら、寂しか! それが親じゃ!

 こん、アホが! アホが!(泣) ああ…。

 あ~悔しか! こぎゃんこつ言うつもりはなかった

 ばってん、止まらん…あ~年だろか…。

スヤ) ばってん、

 思うとることは腹にためん方がよかけん。

幾江) はあ~。

四三) お義母さん…。

幾江) 今さら甘えても遅か。

四三) そぎゃ~んこつ言われたら、おるも寂しか!

 お義母さ~ん!

(幾江を押し倒す四三)

四三) あ~! すいまっせん! すいませんでした!

スヤ) ちょっとおとうちゃん、子どもたちが見とるけん。

(笑い声)

四三) お義母ちゃ~ん!

幾江) もう離せ! 分かった…離せ…。

四三) すいまっせん、すいまっせん…。

幾江) 分かったけん…。

(四三の頬を叩く幾江)

スヤ) おとうちゃん! ハハハ…。

四三) お義母さ~ん!

 

**********

 

(ラトゥールに寝技をかけた治五郎)

治五郎) 逆らわずして勝つ!

 (英) これが柔道の極意です。

ラトゥール) サカラワズシワ…カツ。

治五郎) (英)クーベルタンも柔道を愛した。

 だが、あなたは来た。船酔いに耐え、

 ”Far East(極東)”まで。それだけで、感謝している。

政治) お話し中すいません。ちょっと急がないと、昼飯。

治五郎) ああ…。

政治) 行きましょう。ねっ?

(杉村を見るラトゥール)

ラトゥール) (仏)彼も君の弟子かね?

治五郎) (英)そうです。杉村。

杉村) はい。

治五郎) すまんが、訳してくれ。

杉村) はい。

(治五郎の隣に立つ杉村)

治五郎) そもそも、

 ムッソリーニを説得せよと命じたのは私だ。

杉村) いいんですか?

治五郎) 構わん、訳せ。

杉村) (通訳)

治五郎) 道に反することをした。あなたの顔に泥を

 塗った。それについては謝る。このとおりだ。

(畳に両手をつき、頭を下げる治五郎と杉村)

治五郎) ご覧頂いたように、東京はオリンピックを

 開催する条件がそろっている。国民の、関心度も

 高い。それなのに、ヨーロッパから遠いというだけ

 で、これまで、見てもらうことすら叶わなかった。

 岸君は志半ばで、この世を去った。私も年だ…。

 彼ら、若い世代に、たすきを渡さなくてはならん。

 正攻法では間に合わんと踏んで、禁じ手を使った。

 すまん。杉村も…。

杉村) 先生、もう少しゆっくり…。

治五郎) 副島も…この田畑も、みんな一生懸命だ。

 もし、東京でオリンピックをやってくれたら、あなた

 の株を下げるようなことは絶対にやらん! 最高の、 

 アジア初の、歴史に残る、平和の祭典にしてみせ

 る! 約束する。もう言いたいことは言った。(英)あ

 とは彼らに託します。(仏)よい返事を待ってます。

 失礼。(一礼し、立ち去る治五郎)

杉村) (英)会長、私はIOC委員を辞任します。

 私の願いは、東京にオリンピックを招致すること。

 そのためなら…喜んで身を引きます。

(畳に正座し、一礼して出て行く杉村)

政治) ローマが降りたのは、杉村さんの功績です!

杉村) 田畑…。

政治) そのことを思い出す俺は。お疲れさまでした。

(頭を下げる政治)

 

**********

 

<視察最終日・朝日新聞社>

牛塚) プレゼント。

ラトゥール) オ~…。

牛塚) ヨロイカブト。

(ラトゥールに記念品の鎧カブトが贈られる。

ラトゥール) (仏)

(デスク周りをキョロキョロする政治)

(軍人に踏みつけられたオリンピックの写真)

通訳) 9日間の滞在で何より驚いたのは、

 日本国民の活動力と熱意である。

ラトゥール) (仏)

通訳) この国では子どもでさえも

 オリンピックを知っている。

ラトゥール) (仏)戒厳令の町で、子供はスポーツに

 夢中だ。オリンピック精神が満ちている。

 弁当箱の中にまで。

 

(回想)

ラトゥール) ヒノマル。

(ご飯の真ん中に梅干しが一つ)

清さん) おお、う、日の丸弁当だよ。

ラトゥール) ヒノマル。

清さん) うめえよ、うん!

(箸を使い、清さんの弁当を食べるラトゥール)

ラトゥール) ウン…オイシイ!

清さん) お~おいしい? そっか。

ラトゥール) オイシイ。

 

ラトゥール) (仏)皆さん、

 オリンピックはアジアに来るべきだ。

政治) おっ!

(拍手と歓声)

政治) とういうことは委員長、1940年のオリンピック

 は、東京へ来ると見て間違いないですね?

 

五りん) うむ。オリンピックは、東京に限る!

客) よっ、五りん!

(拍手)

美津子) あらやだ、「目黒のさんま」だ。フフフ。

 

**********

 

清さん) はい通るよ~。ホッホッホッホッ…。

(ラトゥールを政治を乗せ、日本橋辺りを走る清さん)

小梅) あんた~! あんた~日本一!

清さん) おう! よ~し!

小梅) 日本一!

(日の丸の小旗を振る小梅)

清さん) ハッハッハッハッ…。

(足袋シューズの2人とすれ違う)

四三) スッスッハッハッ、スッスッハッハッ。

ラトゥール) アラヨット アラヨット…ストップ ストップ!

政治) 何だ、何だ…何だい?

ラトゥール) ストップ!

(ランナーを振り返るラトゥール)

清さん) お~今度は何だい? ラトゥールの旦那。

ラトゥール) タビ、タビ! カナクリ!

政治) 何言ってんの。金栗は熊本ですよ。

 ねっ? 出して出して。

清さん) いい?

政治) うん、行って。

ラトゥール) カナクリ…。

政治) 金栗は熊本だって。ねっ?

 

**********

 

四三) スッスッハッハッ、スッスッハッハッ…。

(2人のランナーは小松勝と金栗四三)

 

**********

 

幾江さんに泣かされた~。大竹しのぶが圧巻!

 

働かん、走ってばかりの息子でん、

4年もおらんかったら、寂しか! 

それが親じゃ! こん、アホが! アホが!

 

ああもう…最高だよ!とつけむにゃ~!(号泣)



●「いだてん~東京オリムピック噺~」HP

「いだてん~東京オリムピック噺~」関連ブログリスト
NHK(大河/時代劇/スペシャル・その他)ドラマ関連ブログリスト


ランキングに参加しています。
ポチっとしていただけると、嬉しいです♪
にほんブログ村 テレビブログ テレビドラマへ
にほんブログ村
にほんブログ村 テレビブログへ
にほんブログ村