大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」第33回~仁義なき戦い | 日々のダダ漏れ

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大河ドラマ 
「いだてん~東京オリムピック噺~
 



第33回~仁義なき戦い

 

 

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「日々のダダ漏れ」

 

 

1940年、オリンピック開催地を決定する、

IOCオスロ総会が迫る中、オリンピック招

致に後れを取っている日本は、イタリア

のムッソリーニ首相に譲ってもらおうとい

う奇策に打って出たのです。

 

治五郎) まずローマへ赴き、

 ムッソリーニを説得し…。

 

しかし、そのさなか…

 

政治) んっ? 嘉納さんどうされました?

治五郎) ううっ!

政治) 嘉納さん? 嘉納さん…嘉納さん!?

治五郎) うう…。

政治) ちょっ…ちょっと嘉納さん!

(頭に手を当てる治五郎)

治五郎) 触るな! 触るな! 

政治) えっ!? えっ!?

治五郎) 触るんじゃない…。

 今…非常に…危険な、体勢…。

政治) あっ、何だ…腰ですか。

治五郎) 来るか…来ないか…。

(かがんだ体勢からじわっと腰を伸ばす)

治五郎) 来ない…危なかった。

政治) あっ…よかった…。

治五郎) ああ~!

政治) 来た? 来ちゃった来ちゃった!

 担架担架担架担架!

 

志ん生) え~持病の腰痛が再発しちゃいました。

 何つっても74歳、そこそこおじいちゃんですからな。

 

治五郎) 行くと言ったら行くんだ。

政治) ゆっくりゆっくり…。

治五郎) 150まで生きるんだ私は。

 まだ折り返しだ。もう、準備してあるんだ。

 オセロの、最終スピーチだ! ああっ!

政治) ああっ、もうもう…。

 

志ん生) というわけで、1934年12月14日、

 新米IOC委員の、副島道正伯爵が、イタリ

 アの首都、ローマに向けて、旅立ちます。

 

副島) 日本は到底駄目だと思います。

 ムッソリーニは既にスタジアムを造って、

 ローマ開催を決定的に導こうとしている

 のに対し、東京は全く手遅れだ。

 

志ん生) 随分怒ってますな、こりゃ。

 

副島) 当たり前だろう! ひとつきかけて

 イタリアまで行かされるんだぞ!?

 会えるかどうかも分かんないのに。

 

**********

 

<バー・ローズ>

政治) それが、会えるんですって!

緒方) えっ? ムッソリーニに?

政治) ええ。お代わり。ねっ?

マリー) はい。

政治) いや大したもんですな、この杉村陽太郎

 って男は。イタリア大使という肩書を最大限に

 利用して、副島さんと、ムッソリーニが直接会っ

 てしゃべる算段つけちゃうんだから~。

マリー) え~でもどうかしら? 独裁者相手に、

 「頼めば譲ってくれるかもしれん」って。

 そんな野菜や米じゃあるまいし。

緒方) えっ? 

 田畑お前、同行するつもりじゃないだろうな。

政治) いや…いや、僕だってそりゃ、

 行きたかないですけどね。

 

(回想)

治五郎) 田畑…。

政治) はい。

(スピーチの原稿を政治に渡す治五郎)

治五郎) 日本を…頼んだぞ。

政治) えっ?

 あっ…あっ、これ?

 

(日本の写真集)

マリー) えっ、これを?

政治) 私が作ったんですよこれ。ほら。

マリー) あら! きれいじゃない。へえ~。

政治) これを、ムッソリーニに贈呈するという

 大役を仰せつかったのです。その足で、オス

 ロのIOC総会にも同行しますんで、まあ…。

 2か月は、行きっ放しですね。

緒方) よし…よし…君は、記者として同行しなさい。

政治) えっ、いいんですか!?

緒方) ああ。東京オリンピックの特ダネは、

 うちで独占する。

政治) よし!

 

**********

 

昭和10(1935)年1月14日

 

明けて、1935年、1月14日、ローマに到着

した副島さんと、我らがまーちゃん。

 

<ホテルのロビー>

政治) うわ~。いやいや…ワ~オ。

(女性に声をかける政治)

政治) グラッチェ。ボンジョルノ。ハハハハ。

 あっ忘れるとこだった。これ、嘉納さんから。

 オスロの最終スピーチ練習しといて下さいよ。

副島) その前に、今ムッソリーニだろ。

政治) あっ、そうですね、ハハ…。あっ、杉村さ~ん!

杉村) 貴様何でいるんだ?

政治) いや、これですよ、これこれこれ。

杉村) (副島に)長旅、ご苦労様です。

政治) 嘉納さんからこれ、

 「日本」を頼まれたので。それと取材も。

(副島の前に座る杉村)

杉村) (ため息) ムッソリーニは気分屋で、

 陽気な独裁者と呼ばれています。

政治) 陽気な独裁者? 

杉村) 機嫌さえよければ、あと4年ぐらいは待って

 くれる可能性は十分にある。頑張りましょう。

政治) 陽気な独裁者ってどういうの? 笑いながら、

 「殺しちゃうよ」とか? むしろ怖い。ハハハ…。

 どうしました?

副島) 寒気が…。

 いや、武者震いでしょうな。ハハハハ。

政治) 勘弁してくださいよ! 

 岸さん嘉納さんに続いて、副島さんまで倒れ

 ちゃったらもう一巻の終わりですよ。ねっ。

 

**********

 

<イタリア首相官邸>

(ロビーに政治たち)

杉村) 早く着き過ぎたか。

副島) (咳き込み)

政治) えっ、ちょっと…大丈夫ですか?

(脂汗のにじむ副島)

副島) ああ。

(ドアが開く音)

男性) どうぞ、お入りください。

(部屋の奥には、軍服に鮮やかな

 色彩の憲章と勲章のムッソリーニ)

杉村) さあ、行きましょう。

(写真集「日本」を抱え、部屋に向かう副島)

(入り口で副島の足が止まる)

(副島の肩越しにムッソリーニを見ている政治)

(副島の手から「日本」が落ちる)

政治) 副島さん!

杉村) 副島さん!

政治) 副島さん!

 

**********

 

看護師) すごい熱、脈も速い。

医師) 意識は?

看護師) ありません。

看護師) 体温は40℃、脈拍138。

(ドクターが政治を見る)

医師) 肺炎です。原因は風邪と疲労。

政治) 何何何? 分かんない分かんない…。

 助かるのか、助からないのか、どっちだ?

医師) 回復には”1か月”の安静が必要です。

政治) 1マンス…? えっ、余命1か月? 

 余命1か月ってこと? そ…副島さん…。

 

**********

 

杉村) (英)副島は我慢強い男です。

 長旅の疲れで熱があったのですが、

 あなたとの約束を守ろうと耐えました。

(杉村を見据えるムッソリーニ)

ムッソリーニ) サマラ~イ!

(出て行くムッソリーニ)

(一礼し、目で追う杉村)

杉村) サマラ~イ…どういう意味なんだ?

 

**********

 

(「ソエジマタオレル」の電報を見る治五郎)

治五郎) こうなったら、私が行くほかない。

山本) いやいや、先生もまだまだ安静に

 しておかないと…。先生、先生…。

治五郎) おっとっと…ああっ!

(ベッドから落ちる治五郎) 

山本) ああっ、先生!

治五郎) ああ…。

東) あ~触るな! 背中傷みますか?

 

この医師、スポーツ医学の権威、東龍太郎。

これまた、東京オリンピックのキーマンです

ので、お見知りおきを。

 

治五郎) たかが腰痛ごときでオリンピック

 逃したら、一生呪うぞ貴様ら!

東) 腰痛じゃありませんよ! 脊椎損傷です。

治五郎) 脊椎損傷…。

おい、持ち上げるぞ。

男性) はい。

(3人がかりでベッドに戻される治五郎)

 

**********

 

政治) 副島さんもう少し…もう少し我慢しよう。ねっ?

 

片や、副島さんは、生死の間をさまよい…。

 

副島) あ~!

政治) 大丈夫大丈夫大丈夫!

 副島さん、大丈夫大丈夫…。

 いきますよ~。副島さんもう1本ね。

副島) う~!

政治) 痛くない…副島さん痛くない…痛くないよ

 副島さん! 終わる終わる終わる…終わるよ~。

 は~い終わった。はいもう終わった。

 「副島さん、頑張ったね」って。

看護師) ガンバッタネ。

 

**********

 

2週間たってようやく…

 

<首相官邸>

副島) (咳き込み) 30分の、外出許可が出ました。

 今日こそは…んっ…。

杉村) 前回は、

 大変な剣幕で罵声を浴びせられました。

政治) じゃあ、土下座も辞さない覚悟で…ねっ。

杉村) あっ…ちょっと待て。

政治) えっ?

杉村) まだ、15分ある。

政治) えっ? 何で早く着いちゃうかな。

 副島さん30分しかないのに。

 座ってましょうかまだね。

(扉が開く)

(部屋からムッソリーニが出てくる)

ムッソリーニ) SAMURAI。

政治) サムライ?

ムッソリーニ) サムライ。中に入れ。カム イン サムライ。

政治) サムライ?

杉村) 「サムライ」か…。

(「日本」を手に、部屋に入っていく副島と杉村)

(扉を閉める事務官)

事務官) こちらでお待ち下さい。

(扉を見つめる政治)

 

**********

 

(写真集を見るムッソリーニ)

杉村) (英)1940年は紀元2600年にあたるため、

 日本国をあげてオリンピックを望んでおります。

副島) (英)オリンピックは世界の祭典と言いながら、

 開催地は、ヨーロッパばかりである。オリンピックを

 東京に招致するまで、我々は日本に帰らぬ覚悟で

 す。もし、譲って下さるならば、我々が全力で協力

 しますので。1944年を、ローマで開きましょう。

(副島を見ているムッソリーニ)

ムッソリーニ) (伊)本当か? 

副島) (頷く)

ムッソリーニ) (伊)本当だな?

杉村) イエス。

 

**********

 

<ロビー>

政治) えっ、早っ!

 

会見は、15分で終了しました。

 

副島) (英)世界平和には東西の交流が、重要

 です。欧米の選手に、東洋を見せたいのです。

ムッソリーニ) (伊)その通りだ。

(副島と握手をするムッソリーニ)

(拍手する政治)

政治) あっ、電報電報!

ムッソリーニ) (伊)あの日、予定通り会っていたら、

 断っただろう。あなたは病をおして会いにきた。

 日本のサムライ精神が、私の心を、動かした。

 幸運を祈る。

(杉村にも微笑み、部屋に戻るムッソリーニ)

副島) (伊)感謝します。

 

この第一報が届いた、東京では…。

 

可児) 「副島伯と、杉村大使の努力で、

 東京開催、確実!」アハハハ…。

治五郎) なっ? 譲ってくれただろう? やっぱり

 違うんだよ、器の大きい人間は。いたたた…。

山本) …となると、オスロ総会は、

 ヘルシンキと一騎打ちですな。

治五郎) ねえ先生、いいよ来るよ、

 オリンピックが東京に。

東) そりゃ早く治さないとですね。

治五郎) そろそろやつを東京に呼び

 戻す時かもしれんぞ、可児君。

可児) やつ? まさか…スッスッハッハッ?

東京オリンピック現実のものになるにつれ、

 何かが足らんと思っていたんだ。そうだ、

 オリンピックといえば、あの男、

 ミスターマラソン、金栗四三!

 

**********

 

<熊本>

四三) ぬしゃ、情けなかね~!

小松勝) クソジジイ~! ああ~!

(小松と山道を走る四三)

四三) うん?

小松) カフェー? 先生、こぎゃん

 ハイカラなもんが、こん田舎に?

(白い看板におしゃれな文字)

四三) 「ニューミカワ」…。ニュー?

 

**********

 

<カフェ-・ニューミカワ>

四三) 美川君!

美川) ハイカラ東京プリン、2番さんに、お願いしま~す。

女性) はい! フフッ。

(汽車の車両の形をしたカフェー)

四三) あ~どぎゃんしとったと? 美川君。

美川) どぎゃんもこぎゃんも、浅草でブロマイド

 売ってて、関東大震災に遭ってさ…。

四三) あっ、そぎゃんね。

美川) せやから、ヤクザの女と、大阪に駆け落ちしまし

 てん。じゃけん、親分に見つかって、広島まで逃げた

 けのう。遠ぐさ逃げっぺって、山形さ行ったっぺよ。

小松) すごか! ほぼ日本一周ばい。

四三) うん。ああ…彼は、こないだ九州一周ば

 達成した、俺の弟子の、小松勝君。

小松) 小松です。

美川) 小松氏…君の夢は、何かね?

小松) 夢…ですか。いや金栗先生の前で、

 こぎゃんこつ…。オリンピックです!

四三) おお~!

小松) 東京にオリンピックの来る年、俺は21で、ちょ

 うど金栗先生がストックホルムば走った年です!

四三) ハハッ、ストックホルム! 懐かしかね~。

美川) 小梅に、入れ揚げてた頃だな~。

 う~ん、苦みばしった、いい女…。

小松) 日本人は、まだ、マラソンでメダルば

 取っとらんけん、おるが東京でメダルば

 取って、そっから、そっから…。

美川) ちょっと君…この場合、

 「君の夢は何かね?」と聞くのは、つまり、

 「僕の夢の話を聞け」ってことだよ。何だね…。

小松) すみまっせん…。マスターの、夢は?

美川) 僕? そうだな…大陸雄飛かな?

小松) 大陸…?

美川) 満州だよこれからは。

 経済も発展し、治安もよく…。

 

え~音消しますね、この話長くなりそうなんで。

さて、ムッソリーニへの直談判に成功したまー

ちゃんたち、最終決戦の地、オスロへ向けて準

備を進めていました。

 

**********

 

政治) さあ、行きましょうか!

(ホテルのベッドに副島)

副島) まったく、締まらない話で…申し訳ございません。

杉村) いいえ、ムッソリーニという最大の難関を

 あなたのおかげで突破することができました。 

 あとは任せて下さい。田畑。

政治) はい。

杉村) 貴様は残って、副島さんの看病したまえ。

政治) ええ~!?

杉村) 俺一人で十分だ。ローマが降りた今、

 勝利は目前。まっ、あとは東京に決定する

 ための事務的手続きが主だろう。それじゃあ。

政治) ちょっと、杉村さん…。

(残される政治)

 

**********

 

五りん) 時は1935年2月。いよいよ、運命のオスロ

 総会です。ローマにまーちゃんと副島さんを残し、

 杉村さんは一人、オスロへと向かいます。

 

<ノルウェー オスロ IOC総会>

(写真集「日本」を配る杉村)

杉村) (英)こちらが資料です。ご覧下さい。

 

五りん) 初めての総会、たった一人の東洋人…。

 勝利を確信していても、不安は隠せません。(杉

 村のまねで)「参ったね~こんなことなら、河童の

 田畑でもいいから、連れてくればよかったな」。

(治五郎が書いたスピーチ原稿を見つめる杉村)

五りん) …と、そこへイタリア代表のボナコッサ

 伯爵がやって来た!10年来、私財を投じ、招致

 運動に励むイタリアの、嘉納治五郎です!

 

ボナコッサ) カノーは?

杉村) (英) 今回は、私が任されました。

 

五りん) 「うん? 何だい、この爽やかな笑顔は。

 おかしいな。イタリアは辞退したはずなのに…。

 まさか話が通ってねえんじゃ…?」。

 一抹の不安を抱えたまま、杉村さんは席に着く。

知恵) やだ~下ネタ?

今松) イチモツじゃねえよ、一抹だよ。

 

五りん) …と、思ったやさき! ついにIOC会長、

 アンリ・ド・バイエ=ラトゥール氏が現れます!

 

(写真集「日本」を見るラトゥール)

(ページをめくり、治五郎の柔道の写真に目をとめる)

 

**********

 

<ホテルの部屋>

副島) (咳き込み)

政治) あっ…すいません。

(タバコの火を消す政治)

(窓の外は雪)

 

**********

 

ラトゥール) (仏)それでは、開会を宣言する。

 1940年大会の候補地は、ローマ、ヘルシンキ、東京。

 

五りん) おいおい、まだローマ入ってるよ。

 

ラトゥール) (仏)投票は3日後、3月1日。

 それぞれの代表は、スピーチを。

ボナコッサ) (伊)ムッソリーニ首相の方針により、

 スポーツは今や、国家事業である。

 

五りん) そのムッソが譲るって行ってんだよ、おい、ボナ公。

 

ボナコッサ) (伊)施設および地理的にも、

 ローマは絶大な自身を持っている。

ラトゥール) (仏)続いて、東京代表。

 

五りん) 「このままじゃ…まずいな。しかし、この場で

 ムッソとの約束を持ちだしていいものか」。

 

杉村) (英)1912年のストックホルム以来、日本は、

 地球を半周して、参加し続けてきた。

 

五りん) 「いや、もう日本じゃ新聞記事にもなってるし

 …まあ、触れないってのも、不自然ってえもんだ」。

 

(治五郎のスピーチ原稿をしまう杉村)

杉村) (英)このたび、ムッソリーニ首相に我々の

 熱意が伝わり…(ざわめき)イタリアは、辞退を

 申し出て、東京の開催が認められた。

ボナコッサ) (伊)聞いている。その件は聞いている。

 

五りん) 何!? 知っていたのか?

 

ボナコッサ) (伊)だが、スポーツに関しては、

 政府でも口出しせさせない。

 

五りん) まさか、陽気な独裁者ムッソリーニの

 命令に背くとは…!

 

(ラトゥールの渋い顔)

 

**********

 

<トイレ>

杉村) ちくしょう! 話が違うじゃないか。

 あ~どうすればいいんだ…あと3日で何ができる!?

 

五りん) 杉村さんから報告を受けたまーちゃんたちは…。

 

(「タバタ スグ コイ」の電報)

副島) 君は、オスロに向かいなさい。

 私は、もう一度、ムッソリーニに念を押す。

政治) 副島さん…。そんな体じゃまた倒れますよ。

 副島さん。副島さん…副島さん! 副島さん…。

 私が行きます。

 

**********

 

政治) あっ、エクスキューズ ミー。

 ムッソーニいる? ムッソリーニと話したいの。

 大至急大至急。話すから早く、呼んで来いよ。

 もういいよ、分かった…。

男性) ヘイ、ヘイ…。

政治) ちょっと待って待って…いやいや…ムッソリーニ…。

 おい、離せ…離せイタ公め、おい! サムライが来たと、

 ムッソの野郎に伝えろこの野郎! おい…。

 

五りん) ムッソリーニとの面会を諦めたまーちゃんは、オ

 スロに向かいます。一方、杉村さんは、イタリア政府の

 ロドロ公使を味方につけ、ボナコッサの説得を試みます。

 

**********

 

ロドロ) (伊)首相は怒り心頭です。

ボナコッサ) (伊)なんだねこれは。

(ムッソリーニからの手紙を受け取るボナコッサ)

杉村) (伊)首相からの手紙には、”東京”に譲れ

 とある。辞退して、我々に投票して下さい。

 

今松) (ボナコッサ)「杉村のう、てめえの立場も

 分からなくはねえが…」。あっ、すいません。

 字幕ばかりじゃ飽きるでしょうから、ここから

 は吹き替えで、お送りします。

ボナコッサ) 「こちとらイタリア国民の期待を

 一身に背負ってんだよ、杉村のう」。

杉村) 「俺だって命懸けだ、バカ野郎」。

ボナコッサ) 「こちとら三度目の正直だよ。

 もう、スタジアムも完成してる。ロドロだか

 ヘドロだか知らねえが、イタリア人が日本

 人に媚びてんじゃねえぞこの野郎!」。

志ん生) 「何だこの野郎」。

五りん) えっ? 師匠、師匠…。

志ん生) 「師匠じゃねえ、俺はロドロだこの野郎。

 おい、杉村のバックにはな、ムッソリーニがつい

 てんだ。分かってんのか、この野郎。ガタガタ

 抜かすと、地中海沈めちゃうぞこの野郎」。

ボナコッサ) 「何だとこの、ナポリタン野郎!」。

志ん生) 「あっ、何だこの野郎」。

五りん) ああ…師匠も、あにさんも、その辺に

 その辺に。あっ、じゃあ、字幕に戻します。

 

杉村) (伊)あなたの首相は、東京へ譲ると約束した。

ボナコッサ) (伊)開催地を決めるのは、IOC委員の

 投票のみ。首相であっても、その資格はない。

(睨み合う杉村とボナコッサ)

 

**********

 

<3月1日 投票当日>

 

五りん) そして迎えた、決戦の日。

 

ボナコッサ) (伊)IOC委員になって、10年間、スポーツ

 マンシップによってのみ、オリンピックは支えられて

 きた。もはや、そうではないようだ。不本意ながら、

 (涙をこらえるボナコッサ)不本意ながら、イタリアの票

 は、”東京”に投じる。

(ざわめき)

ラトゥール) (仏)ちょっと待て。政治的圧力を、

 IOCは認めるわけにはいかない。

杉村) (仏)政治的圧力?

杉村) 延期なんて冗談じゃない!

 そもそも政治的圧迫とは何だ?

ラトゥール) (仏)杉村。そして、副島は、

 オリンピックに関係ない”権威”に接触した。

杉村) (仏)ローマは自ら辞退してくれたんだ。

 ”政治的駆け引き”では、断じてない。

ラトゥール) ミスタースギムラ。

 (仏)ここは国際連盟じゃない、IOCだ。

 無理を押し通すべきではない。

杉村) バカ言っちゃいけねえよ。(仏)わかっているよ。

 笑わせんな。(仏)日本は変わった。リッスン…。

 (英)関東大震災で全てを失ったが、立ち直った姿を、

 世界に見せるんだ。そのための1940年の東京オリン

 ピックだ。紀元2600年を祝うためにも。日本が受け入

 れられるのは、”1940年”のみだ!

ラトゥール) 仏)なぜカノーは来ない? なぜカノーは

 来ない? 彼なら、こんな事にはならなかった。

男性) ホエア イズ ヒー?

男性) ジゴロー?カノー…。

男性) ジゴロー…。

男性) カノー…。

(一点を見つめている杉村)

男性) ジゴロー…。

 

**********

 

政治) あっ、あっ、ドゥ ユー ノー スギムラ?

男性) (外国語)

政治) いや、分かんねえ…ちょっとごめんね。あっ、

 ヘイヘイ! 会議どこだよ? これ…えっ? フィニッ

 シュ? フィニッシュ? 日本、オーケー? えっ、どう

 した? あっ、すいません、ラトゥールさん、ラトゥー

 ルさん。リメンバー ミー? ロサンゼルス エキシビ

 ション 日本泳法スイマーよ。えっ、怒ってる? 

 何…どうしたの? あっ! 杉村さん。

杉村) 延期だ!

政治) え…延期!?

 

**********

 

<トイレ>

杉村) ああ~! 総会に出席して、思い知ったよ。日本

 への一票は嘉納治五郎への一票だったんだよ。誰も

 が言う…。「カノーはどうした? ジゴローはなぜ来な

 い?」。「ムッシュ カノーは偉大なサムライだ」ってな。

政治) うん…俺も見ました。ロサンゼルスの選手村で。

 嘉納さんの背負い投げ、長蛇の列が出来てました。

杉村) 嘉納さんの英語なんて、ひどいもんだぞ。

 けど…あの、たどたどしさがいいのかもしれんな…。

 俺はイタリア語も英語もフランス語もできるが、

 人望がない。嘉納治五郎にはなれん。

政治) なれないし…ならんでいいでしょう。

杉村) お前はなるよ。

政治) えっ? 嘉納さんに? 俺が? 嘉納治五郎に!?

 冗談じゃない! 御免被るあんな迷惑ジジイ。

杉村) 嘉納さんは貴様を買ってる。

 でなきゃここにはよこさん。

政治) いやいやいや、私はただ、

 「日本」を頼むと言われたので。

杉村) 日本を?

政治) ええ。

杉村) 田畑に日本をか…。

政治) えっ?

杉村) ハハハハハ!

政治) いや、そうじゃなくて…。ちょっと勘弁して下さいよ!

 

**********

 

<病室>

(ベッドの上で新聞を見ている治五郎)

(「1940年オリムピック開催地決定、来年に延期」の見出し)

(腰をまっすぐに保ちながら、たどたどしく

 ベッドを下り、引き出しを開ける治五郎)

 

**********

 

<熊本・池部家>

四三) 美川君のお店の裏手にね、大きか梨園のあっ

 とたい。ご近所の農家が協同で、経営ばしとるらしい。

スヤ) 美川? 美川と会いよっとね?

 四三さん、美川と会いよっと?

文子) 美川って誰? お友達?

スヤ) お友達じゃなか。ゴキブリばい。

 居候のろくでなし、貧乏神。

 

**********

 

<カフェ・ニュー美川>

美川) えっ、何その言われよう。

 美川が何をした? ゴキブリって…。

四三) ほんなこつ、あんおなごは…。いつから

 あぎゃんふと~か女になったとだろか。

美川) 昔は可憐だったよね~。

 「坊ちゃん」における、マドンナのように

 爽やかで、まぶしかったばってんね~。

四三) 美川君…ウイスキーばもらおうかね。

美川) ばっ! 珍しかね~金栗氏。

 

(回想)

スヤ) あぁたは、マラソンの父!

四三) はい…。

スヤ) 金栗四三ばい!

四三) はい…。

スヤ) 由緒正しき、池部の旦那さんとして、

 どっしりと構えとって下さい。

 

四三) 大体俺は、熊本に帰ってからな~んもしとらん。

 日がな、番頭台に座って…。皆気ば遣うて旦那ん

 さん、旦那んさん呼ぶばってん、招き猫と一緒!

小松) まだ飲んどらんとに酔っ払っとる。

美川) うん。

四三) よ~し決めた! 美川君。

美川) うん?

四三) 俺は、家出ばする。

美川) 家出って金栗氏…。

四三) 実は…ヘヘヘッ。

 嘉納治五郎先生から手紙ばもろた!

小松) わっ!

美川) うわ~やだやだ、嘉納って聞くだけで鳥肌!

四三) いよいよ、東京に、オリンピックば呼ぶそうばい!

 

**********

 

<東京市庁舎>

牛塚) あ~あ…。結局、ローマは降りるの?

 降りないの? ヘルシンキには、勝てるの?

 いや…勝っても、ラトゥールがへそを曲げた

 まんまじゃな…。

副島) 私が、肺炎になどかからなければ!

政治) 注射何本打ったんでしたっけ?

副島) 300本。

政治) 何も言えねえ。

山本) ここは、嘉納先生にお願いするしか…。

牛塚) そうだな! 嘉納さんがベルギーに出向いて

 謝罪すれば、ラトゥールも折れるだろう。

治五郎) よ~し、一肌脱ごう!

 …と言いたいところだがね。

副島) この度は、申し訳ないです。

治五郎) あ~ご苦労さん。わしは行かん。ご覧のとおり、

 行きたくても行けんのだ。触るな触るな! 触るなって。

(松葉杖を外し、そっと椅子に座る治五郎)

治五郎) そこで、また、極論なんだけどね…。

政治) 出たよ、治五郎の極論タイム。

 この間も、この時間だったよね? ほら。

 「頼めば、譲ってくれるんじゃないかな?」。

 おかげでこの人、注射300本ですよ。ねえ?

 何なんです? 今度は。

治五郎) 東京に呼んだらどうだろう?

牛塚) ラトゥールをですか?

治五郎) うん。謝りついでに、東京を視察してもらうん

 だよ。至れり尽くせりのおもてなしで、接待するんだよ。

政治) あ~…。

治五郎) 「あ~」って何だよ。

政治) 何か、治五郎っぽいな~と思いまして。

治五郎) 治五郎っぽいって何だ。治五郎だよ私は。

政治) 怒らせちゃったの、こちらの杉村の陽ちゃんが。

 この期に及んで、「遊びにおいでよ」なんて図々しく

 言えるもんですか。ねえ?

治五郎) もう、出しちゃったよ、手紙。ラトゥールに。

政治) 図々しいな~。

 

**********

 

手紙・治五郎) 「親愛なるラトゥール伯爵。貴殿を

 日本にお招きしたい。いかに東京がオリンピック

 にふさわしいか、いかにオリンピックを待ち望ん

 でいるか、その目で、ご覧頂きたい」。

 

治五郎の直談判は功を奏し、かたくなだった

ラトゥールが、訪日の意向を示したのです。

 

<バー・ローズ>

政治) いや~海を越えたジジイ同士の友情は、

 侮れん! フフフ。ママお酒。この人飲めない

 からサイダー。

河野) それだけじゃないだろ。何か裏がある。

政治) 裏? ほかの要因が、

 ラトゥールを動かしたと言うのかね?

河野) ヒトラーだよ。国際連盟脱退以降、日本

 とドイツが接近しているのは知ってるだろう。

 ヒトラーがラトゥールに圧力をかけ、東京支持

 を要求し、日本に恩を売ったんじゃないかね?

政治) バカな! そんな事実はどこにも書いとらん。ほら。

河野) ローマが降りたのもしかりだ。

 

(回想)

ムッソリーニ) ザット イズ ザ ポイント。ザット イズ ザ ポイント。

 

河野) 同じ軍国主義の国として、日本に貸しを

 作るのは得策だとムッソリーニは考えての…。

政治) 河野! 

 お前は政治屋になってものの見方が変わったな。

河野) 何?

政治) 恩とか貸しとか、外交の道具みたいに。

 違う…違うんだよ。オリンピックは運動会だよ、

 単なる。あんなものは、2週間かけてやる

 盛大な運動会。それ以上でも以下でもない。

 いつからそんな大仰な、国の威信を懸けて

 やる、一大行事になったんだね。

マリー) 田畑さんが、

 メダルをたくさん取ったからじゃない?

政治) 何?

マリー) あれで一気に有名になって、日本人も

 やれる、東京にオリンピックを持ってこられるっ

 て思っちゃったのよ~。

政治) 違う…違うって。俺は…。

河野) いいじゃないか。東京オリンピックが決まれば、

 少なくとも、軍への歯止めにはなる。あと4年は、

 戦争は起こらない。

 

**********

 

ラトゥールの訪日に向けて、第12回国際

オリンピック大会招致委員会が発足しました。

 

治五郎) え~この度は、オリンピックの招致に際し、政

 府から、特別予算を、算出して頂く運びになりました。

記者) 高橋是清大蔵大臣は何とおっしゃってますか?

記者) 満州国の参加の是非については、

 どう思われますか?

記者) 一部では、オリンピック反対論もありますが?

治五郎) それは今ここで論ずる問題ではない。

記者) ではオリンピックは、お国のためになりますか?

 

(回想)

是清) そのオリンピックとやらは、

 お国のためになるのかね?

政治) お国のためには、なりませんな。

是清) ならんのかね。

政治) なりません。しかし、若い者には励みになります。

 日本の若者が、世界の舞台で飛んだり跳ねたり泳い

 だりして、西洋人を打ち負かす。その姿を見て、俺も、

 私も、彼らのように頑張ろうと立ち上がる。

 

政治) 国のためじゃない。若い者のためにやるんです。

記者) 国のためじゃないって、あなたどういうこと?

 

**********

 

<深夜・池部家>

(そ~っと部屋を出る四三) 

四三) (小声で)勝。

小松) (小声で)はい小松。

四三) し~っ。

小松) よしよし、よしよし…。

(猫を抱いて出てくる小松)

(「スヤへ」と書いた手紙に、押し花を添える四三)

四三) スヤ…お義母さん…子どもたち…許してくれ。

 よし行くばい。

小松) はい。

(赤ゲットを羽織り、出て行く四三と小松)

(手紙の匂いを嗅ぐ猫)

 

**********

 

志ん生) え~その頃、私の暮らしもだいぶよくなりまして、

 7年世話になった、業平の、なめくじ長屋を出ることに

 なりました。引っ越しは、昭和11年の、2月26日。

 2月26日…何でしたっけね?

 

昭和11(1936)年 2月26日

 

<夜明け前>

おりん) 今度の引っ越しは、さすがに荷物が多いね。

孝蔵) ヘッ、あたぼうよ。だからトラック頼んだんだい。

おりん) 大丈夫なの? この雪で。

(積もった雪で遊ぶ子供たち)

(行軍する音)

 

**********

 

心配してなかったけど…やっぱり美川は美川のまま

だったw とりあえず復活おめでとう。お帰りなさい!

 

頼めば、譲ってくれるんじゃないかな?作戦失敗から

の~「遊びにおいでよ」あ~んどおもてなし大作戦!

治五郎さん、図々しいにもほどがあるけど面白すぎw

事実は小説よりな世界が続くけど、背後にはドロドロ

した大人の…世界の事情が渦巻いていそうで怖い。

いやマジで、みんないだてん見た方がいいって!!



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