「ひよっこ」 第146回
第25週 「大好き」
美代子と、一緒に生きていきてえんだ
世津子） 私と、
みね子ちゃんの、お父さん。
みね子） はい。
世津子） 私にとっては、
谷田部実さんではなく、雨男さん。
みね子） はい。
世津子） 私たちが過ごした時間について
は、私は、みね子ちゃんに…。いや、
誰にも。話すつもりはない。絶対に。
私だけの思い出だし。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜谷田部家＞
（布団に寝た実が、天井を見ている）
（横に寝ている進の布団をかけ直し、
ちよ子と進の寝顔を見つめる実）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
世津子） 病院の先生が言ってたんだけど。
谷田部実さんの記憶が、戻ったとした
ら…。今度は、忘れてしまうことが
あるんだって。つまり、私との時間
を、忘れてしまうんだって。
（世津子を見つめるみね子）
世津子） そうすれば、２人の時間が、
あなたのお父さんを苦しめないし、
それに…。あの時間が…。
本当に私だけのものになる。
そうなれたらいいなって、思ってる。
ごめんね。
（世津子から目をそらすみね子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜谷田部家＞
美代子） 寝ました？
実） うん。
（縁側に座る実）
（ノートを開く実）
（側にポット・マムの栽培方法の本）
美代子） はいどうぞ。
実） あっ、ありがとう。
美代子） お花ですか？
実） うん。
美代子） うまぐいぐといいね。
実） うん…。うまぐいぐといい。
いや、うまぐいがせてえ。
美代子） はい。
実） うん。あ…。美代子。
美代子） はい？
実） 話をしといた方がいいと思うんだ。
美代子） 何の？
実） うん…。そこについでは、
触れずにきたけど。俺が、その…。
東京でどうしてだかっていう…。
何つうがその…。
秘密みだいになんのは、
夫婦でよぐねえと思うんだ。
ちゃんと話してねえし。
美代子も、聞かねえし…。でも…。
それは、話しておいだ方がいいと
思うんだ。どんな暮らししてだのか
とが。ちゃんと、夫婦で共有しとい
だ方がいいと思うんだ。
美代子） フッ…。実さん。
実） ん？
美代子） 変わってないね。
実） えっ？
美代子） 優しくて、誠実で、真面目で…。
相手のこどいづも考える。でも、
女心は、あんましわがってない。
実） ごめん。
美代子） フフフ！
実） 女心か…。
美代子） フフフ！
実） そうけ…。
ダメな男だったのがね、俺…。
美代子） いいんです。そういうとご、
好きになったんだから。
実） ん？
美代子） わがんなくていいんです。
男の人にはわがんないから、
女心って、いうんです。
実） はぁ。
美代子） 知りたぐないです。
私、実さんの、東京でのこど。
実） そう？
美代子） はい。
だから、言わないで下さい。
実） うん…。うん、わがった。
美代子） うん。あっ、でも、もし、私が
我慢できなくなって、私から、
「教えて下さい」つったら、
そんとぎは教えて下さい。私が、
聞きたいって言ったこど、全て。
実） えっ？ そうなの？
美代子） そうなんです。女心、です。
アハハハハ！
実・美代子） アハハハ！
実） わがった。
実・美代子） アハハハ！
（美代子を見つめる実）
（目をそらす実）
美代子） ん？ 何？
実） あっ、いや…。
何つうが…。（せきばらい）
かわいいなと思って。
美代子） あ…。（せきばらい）
（うつむく美代子）
実） 俺…。
好きだ。美代子のこど。
あの…女房だったからとが
関係なぐ、そうじゃなぐて…。
美代子のこどが好きだ。
一緒に、生きてってくれっか？
（顔をあげる美代子）
実） 美代子と一緒に、
生きていきてえんだ。
（座り直す美代子）
美代子） はい。ありがとう。
よろしくお願い致します。
（すすり泣き）
（美代子の手を握る実）
（その手に手を重ねる美代子）
美代子） 実さん。
実） ん？
美代子） おんなじ、言葉でした。
実） えっ？
美代子） 「美代子と、
一緒に生きていきたいんだ」。
おんなじ言葉でした。
結婚した時と。…で、私は、
「はい、ありがとう。よろしくお願い
致しますって、答えました。
実） そうか。
美代子） はい。
あんとぎも、うれしかったけど…。
うれしいな…。こんな、うれしい
こど普通は２回もないよね。
実） んだな。
美代子） んだよ！
実） うん。
美代子） 私…。幸せもんだ。
（実にくっつき、肩に頭を乗せる美代子）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
きよ） はあ～そうがぁ。
たまげちまったなぁ。
すげえな、実さん。
君子） きよさん、泣かねえで。
いがったなぁ、美代子。
美代子） いがった。
ありがとう、ありがとう。
きよ） 泣がせんなぁ、実さんもよ。
君子） なぁ。
（畑から戻った茂と実に気づかない３人）
君子） あの…。
美代子） ん？
君子） もういっぺんやって。
もういっぺん。
美代子） えっ？ まだ～？
きよ） いいがら、いいがら！
美代子） じゃ、最後だよ、最後ね。
いくよ！（せきばらい）
（実のまねで）「美代子と一緒に
生きていきたいんだ。一緒に
生きてってくれっか？」。
きよ・君子） あ～いがったなぁ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（バツが悪い実）
（我慢できず笑ってしまう茂）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
きよ） 本当にいがったよぉ！
美代子） ありがとう。
君子） なかなか出る言葉じゃねえよ。
きよ） さっすが実さんだよ。
君子） やっぱり実さんはすごいな。
すごいよ。でも、美代子もよぐ
頑張ったな。
美代子） 私は何にもしてねえよ。
会長と、副会長のおかげだ。
きよ） 何言ってんだよ！
君子・きよ） なぁ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（こっそり畑に戻っていく茂と実）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
きよ） はぁ…
私も言われでみでぇもんだなぁ。
君子） えっ？ 征雄さんに？ あら！
じゃあ、私が征雄さんになって、
言ってあげようか、きよさん。
美代子） いいね！
きよ） え～？
君子） きよ…。きよと、
一緒に生きていきてえんだ。
一緒に、生きてってくれっか？
きよ） 断る。
君子） え～！
美代子） 何よそれ、きよさん！
きよ） やだよ、そんなのやだよ。
君子） 何でだよ～！
（笑い声）
君子） ねえねえ、ねえねえ、
私にもやって。
きよ） おう、そうか。
じゃ、私が正二な。
（せきばらい）君子。
君子） 断る。
きよ） 早えわ！
美代子） 早えな。
君子） お断りだよ。
おととい来やがれっつうんだ！
（笑い声）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
実との時間は誰にも話すつもりはないという
世津子。そして、実に記憶が戻ったら、今度
は自分との時間を忘れてしまうだろうと…。
そうすれば、２人の時間が、
あなたのお父さんを苦しめないし、
それに…。あの時間が…。
本当に私だけのものになる。
そうなれたらいいなって、思ってる。
なるほど～。確かに、そうなれば解決する。
実本人の記憶がなくなれば、それはまさ
に、なかったことにできる。まわりも、そう
信じることができるかもしれない。「かも」
だけど、今より少しはマシかもしれない。
話さないと決めている世津子に対し、全て
を話し美代子と情報を共有しようとする実。
まぁね、言った方は楽になるだろうけど…
聞かされた方は、そこから荷物が重くなる。
何でも話せばいいってもんじゃない。知り
たくないこともあるし、話を聞きたいと思う
タイミングも人それぞれ。いつか聞きたくな
った時に聞きたい事を全て話すと約束して
もらえたら…そこそこ安心できるとは思う。
美代子の場合、２度目のプロポーズをされ
た時点でどうでもよくなってるだろうけど。
俺…。
好きだ。美代子のこど。
あの…女房だったからとが
関係なぐ、そうじゃなぐて…。
美代子のこどが好きだ。
一緒に、生きてってくれっか？
美代子と一緒に、
生きていきてえんだ。
ホントにね～。こんなセリフ、人生で２回も
聞けたら幸せだよね～。同じ人に、２回…
記憶をなくしても、また最初から好きになっ
てもらえるなんて…。何度めぐりあっても、
恋に落ちる。ロマンチックだね～。フフフ♪
そんなロマンチックネタで盛り上がる、奥茨
城母の会。そりゃ話すよね、話したいよね。
ひよっこワールドに、秘密なんてねーべさ。
私も言われてみたいと告白ごっこするきよ
と君子の即効「だが断る！」状態に笑った。
征雄さんと正二さんじゃあね～（ごめん）ｗ
記憶喪失はともかく、世津子との２年間の
設定は、つくづく失敗だったと思うけど…。
美代子さんが幸せになれるならいっかぁ。
ラブラブ夫婦に戻れるならいっかぁと…そ
う思うことにしよう。終わりよければ…ね。
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