「僕のいた時間」
第６話
今、僕にできること 一歩、踏み出す勇気
陸人） 何で兄さんと付き合ってるんですか？
守） 飛ぶねえ、いきなり話。
陸人） 病気だから同情してるんですか？
守） 病気になる前から友達だし。
今でも拓人といると楽しいし。
陸人） 何で兄さん楽しそうなの？
守） サッカーが好きだからじゃない？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
陸人） 助けて…。
どうしたらいいのかわからない。
兄さんは何でそんな風にしていられるの？
この先真っ暗なのに。
拓人） この先真っ暗？
俺にそういう事言わないだろ、普通。
陸人） えっ、事実じゃん。
拓人） そういう事言われたらムカツクし、傷つく。相手
がどう思うかちゃんと考えて言わないと、人とう
まくいかなくてお前が困るんだよ。わかってる？
陸人） 相手が不愉快そうになって、しまったって思う
時もあるけど、何でかわからない時もある。
拓人） いつから？
陸人） 小さい時から。友達を怒らせたりしたけど、い
つも母さんが解決してくれた。中学高校は進学
校で、みんなあまり人を気にしない雰囲気だっ
たから、一人でいることが多かった。医学部入
って、１、２年の頃はまだよかったけど、３年か
ら、少人数グループでの専門科目や、実習が
増えて、みんなと関わる時間が長くなってから、
居づらくなって…。どんどん、苦しくなってきて
…。でも、どうすればいいかわからなくて…。
それに、医学部の講義だけど、受けてもあまり
興味が持てないんだ。
拓人） えっ？
陸人） ずっと母さんを悲しませないようにしてきたけ
ど…。ずっと、母さんを嫌いにならないようにし
てきたけど…。僕…頑張ったけど…。
拓人） うん。
陸人） どうすればいい？
拓人） とりあえず、恐竜博物館行かない？
陸人） えっ？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
陸人） まだやるの？
拓人） 試合に出る事が今の目標だから。
陸人） 右手動かなくなったらどうすんの？
…あっ、今の言っちゃダメだった？
拓人） まあな…。俺にだったらいいけど。
陸人） ごめん。
拓人） 右手が動かなくなったら、次の目標探すよ。
陸人） 次？
拓人） 仕事だって、ず～っとそうやってきたし。接客
の仕事が出来なくなったら、配送手配の仕事
を覚えて。歩くのが難しくなったら、デスクワー
クを覚えて。指先を動かすのが難しくなったら、
マウスの操作で出来る仕事を覚えて。
ラッキーだよな。俺の居場所、作ってくれる会
社で。何かさあ、目標を見つける事が、俺の目
標みたいだな。
陸人） いいじゃん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
拓人） びっくりしたでしょ？ 俺もＡＬＳ。メグと別れて
からわかってさ。でも、凄い元気で。サッカーも
出来るし。あっ、結婚するんだってね。おめで
とう。やだな。そんな顔しないで何か言ってよ。
…無理もないか。そろそろ練習始まるんで。
恵） 会っちゃったね。
拓人） …えっ？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（回想）
恵） 会っちゃったね。
（回想）
言葉通り、会わなきゃいけない人だったから…２人は
また、出会ってしまう。また会えてしまったら…やっぱ
り、会わなきゃいけない人だったのだと、再確認してし
まう。黙々と掃除をしながら、拓人のやさしい嘘を思っ
て泣く恵。拓人が別れを言いだした理由に気づかない
はずはなく。そして拓人も、恵の「会っちゃったね」とい
う言葉の意味に気づく。まだ文字が書けるうちにと買っ
たノートに書いた言葉は「恵 メグ 幸せでいてほしい」。
切ないなあ。拓人の気持ちも、恵の気持ちも、わかる。
拓人だったら…恵だったら、どうするだろう？ 拓人の
立場だったら…できれば、好きな人に側にいてほしい
と思う。でも、未来のない自分のために、相手の将来
を奪いたくないし、幸せになってほしいとも思う。恵だ
ったら…一緒にいてあげたいと思っても、見守る覚悟
を持てるかといえば…自信がない。あの２人のお付き
合いの段階では、拓人の決断がベストだっただろうと
も思ってしまう。できれば、守の様な立場で、友達とし
て見守ったり、見守られたりできたらいいだろうけど。
拓人の今を知ってしまった恵はどうするのか…。恵が
真実を知ってしまった時のことを考えていないはずが
ない繁之はどうするのか…。いろいろと…切なすぎる。
「僕のいた時間」関連ブログ↓
第１話～あなたは全力で生きていますか？
第５話～前を向き生きる覚悟 僕は負けない！
第６話～今、僕にできること 一歩、踏み出す勇気
第７話～動き出す二人の時間抱きしめたい！！
第８話～俺のこと認めてよ、本当は叫んでたんだ！お母さん！
第９話～お父さん、お母さんありがとう！そして
第10話～最後の日記
第11話（最終回）～命の選択
陽菜） よく言うじゃない？ 結婚は、２番目に好きな人
とするのが幸せだって。
とするのが幸せだって。
恵） ん？ どういう意味？
陽菜） だって、
永遠に好きな人第１位は、拓人君でしょ？
永遠に好きな人第１位は、拓人君でしょ？
恵） えっ、何それ？
陽菜） だって絶対そうだもん。
恵） 違います。
陽菜） ホントに別れた理由わからないの？
恵） 今だから言えるけど、重い、って言われた。
陽菜） ふ～ん。あっ、やっぱりチャラ男だったのかも。
拓人君、恵と別れてからずーっと彼女いないん
だって。それって、たぶん本命の子がいないっ
て意味で、適当にいるんじゃない？ だったら別
れてよかったじゃん。
だって。それって、たぶん本命の子がいないっ
て意味で、適当にいるんじゃない？ だったら別
れてよかったじゃん。
恵） 私が今好きなのは、繁之さんなんだから。
陽菜） 拓人君と、会わなきゃよかったって思うこと、あ
る？ 会わなきゃよかったって思ってる？
る？ 会わなきゃよかったって思ってる？
恵） いや、別に。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
守） 飛ぶねえ、いきなり話。
陸人） 病気だから同情してるんですか？
守） 病気になる前から友達だし。
今でも拓人といると楽しいし。
陸人） 何で兄さん楽しそうなの？
守） サッカーが好きだからじゃない？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
陸人） 助けて…。
どうしたらいいのかわからない。
兄さんは何でそんな風にしていられるの？
この先真っ暗なのに。
拓人） この先真っ暗？
俺にそういう事言わないだろ、普通。
陸人） えっ、事実じゃん。
拓人） そういう事言われたらムカツクし、傷つく。相手
がどう思うかちゃんと考えて言わないと、人とう
まくいかなくてお前が困るんだよ。わかってる？
陸人） 相手が不愉快そうになって、しまったって思う
時もあるけど、何でかわからない時もある。
拓人） いつから？
陸人） 小さい時から。友達を怒らせたりしたけど、い
つも母さんが解決してくれた。中学高校は進学
校で、みんなあまり人を気にしない雰囲気だっ
たから、一人でいることが多かった。医学部入
って、１、２年の頃はまだよかったけど、３年か
ら、少人数グループでの専門科目や、実習が
増えて、みんなと関わる時間が長くなってから、
居づらくなって…。どんどん、苦しくなってきて
…。でも、どうすればいいかわからなくて…。
それに、医学部の講義だけど、受けてもあまり
興味が持てないんだ。
拓人） えっ？
陸人） ずっと母さんを悲しませないようにしてきたけ
ど…。ずっと、母さんを嫌いにならないようにし
てきたけど…。僕…頑張ったけど…。
拓人） うん。
陸人） どうすればいい？
拓人） とりあえず、恐竜博物館行かない？
陸人） えっ？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
陸人） まだやるの？
拓人） 試合に出る事が今の目標だから。
陸人） 右手動かなくなったらどうすんの？
…あっ、今の言っちゃダメだった？
拓人） まあな…。俺にだったらいいけど。
陸人） ごめん。
拓人） 右手が動かなくなったら、次の目標探すよ。
陸人） 次？
拓人） 仕事だって、ず～っとそうやってきたし。接客
の仕事が出来なくなったら、配送手配の仕事
を覚えて。歩くのが難しくなったら、デスクワー
クを覚えて。指先を動かすのが難しくなったら、
マウスの操作で出来る仕事を覚えて。
ラッキーだよな。俺の居場所、作ってくれる会
社で。何かさあ、目標を見つける事が、俺の目
標みたいだな。
陸人） いいじゃん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
拓人） びっくりしたでしょ？ 俺もＡＬＳ。メグと別れて
からわかってさ。でも、凄い元気で。サッカーも
出来るし。あっ、結婚するんだってね。おめで
とう。やだな。そんな顔しないで何か言ってよ。
…無理もないか。そろそろ練習始まるんで。
恵） 会っちゃったね。
拓人） …えっ？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（回想）
恵） 会っちゃったね。
（回想）
拓人） 会わなきゃいけない人には、
絶対会えるんじゃない？
恵
メグ
幸せでいてほしい
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
陸人君は、コミュニケーション障害というか、人の気持
ちを想像できない、言ってはいけない事がわからない、
最近では広く認知されるようになってきた、発達障害を
抱えているようにもみえる。医者には向かないような気
がするけれど、自分のそういう特性を認識して、努力し
ていけば、改善できる余地がある程度なのかもしれな
いし。拓人のためには、彼に医者になってほしいとも思
うけど、自分が興味のあることをやってほしいとも思う。
親に構われないのも、親に構われすぎるのも、子供は
辛くなる。親子の関係って、ホントに難しいなあと思う。
恵
メグ
幸せでいてほしい
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
陸人君は、コミュニケーション障害というか、人の気持
ちを想像できない、言ってはいけない事がわからない、
最近では広く認知されるようになってきた、発達障害を
抱えているようにもみえる。医者には向かないような気
がするけれど、自分のそういう特性を認識して、努力し
ていけば、改善できる余地がある程度なのかもしれな
いし。拓人のためには、彼に医者になってほしいとも思
うけど、自分が興味のあることをやってほしいとも思う。
親に構われないのも、親に構われすぎるのも、子供は
辛くなる。親子の関係って、ホントに難しいなあと思う。
会わなきゃいけない人には、
絶対会えるんじゃない？
絶対会えるんじゃない？
言葉通り、会わなきゃいけない人だったから…２人は
また、出会ってしまう。また会えてしまったら…やっぱ
り、会わなきゃいけない人だったのだと、再確認してし
まう。黙々と掃除をしながら、拓人のやさしい嘘を思っ
て泣く恵。拓人が別れを言いだした理由に気づかない
はずはなく。そして拓人も、恵の「会っちゃったね」とい
う言葉の意味に気づく。まだ文字が書けるうちにと買っ
たノートに書いた言葉は「恵 メグ 幸せでいてほしい」。
切ないなあ。拓人の気持ちも、恵の気持ちも、わかる。
拓人だったら…恵だったら、どうするだろう？ 拓人の
立場だったら…できれば、好きな人に側にいてほしい
と思う。でも、未来のない自分のために、相手の将来
を奪いたくないし、幸せになってほしいとも思う。恵だ
ったら…一緒にいてあげたいと思っても、見守る覚悟
を持てるかといえば…自信がない。あの２人のお付き
合いの段階では、拓人の決断がベストだっただろうと
も思ってしまう。できれば、守の様な立場で、友達とし
て見守ったり、見守られたりできたらいいだろうけど。
拓人の今を知ってしまった恵はどうするのか…。恵が
真実を知ってしまった時のことを考えていないはずが
ない繁之はどうするのか…。いろいろと…切なすぎる。
第１話～あなたは全力で生きていますか？
第５話～前を向き生きる覚悟 僕は負けない！
第６話～今、僕にできること 一歩、踏み出す勇気
第７話～動き出す二人の時間抱きしめたい！！
第８話～俺のこと認めてよ、本当は叫んでたんだ！お母さん！
第９話～お父さん、お母さんありがとう！そして
第10話～最後の日記
第11話（最終回）～命の選択
