FUNKADELIC / STANDING ON THE VERGE OF GETTING IT | 極私的洋楽生活

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豚袋でございます。今年もあとひと月ちょっととなりました。nyaoさんのブログを読んでいてはたと気が付きましたが、今年は00年代の最終年なのですね。10年タームの終末が目前というのに、1999年の時のような終末感が全く感じられません。話題はデフレだとか株安だ円高だとか終末的なキーワードは何となくありながら、10年の節目の総括は話題にも上らない不思議…もはや「10年という周期」ではで総括できないほど変化は劇的に短い時間で起きており、時代を計るものさしとしての意味がなくなりつつあるのかも知れませんね。



さて、今回はまたブラックが苦手な方には申し訳ないですが、(ごめんねSYDさん^^)コテコテな70年代ファンクを取り上げさせていただきます。ファンカデリックの6枚目のアルバム「スタンディング・オン・ザ・ヴァージ・オブ・ゲッティング・イット・オン」です。



ファンカデリックは以前にも記事にしました→FUNKADELIC / MAGGOT BRAIN (1971) ジョージ・クリントン率いるP-ファンク軍団のロック寄りユニットであるファンカデリック。このバンドはふたりの天才ギタリストとひとりの天才ベーシストを生み出した事でも知られています。ギタリストはエディ・ヘイゼルとマイケル・ハンプトン。ベーシストはウィリアム・ブーツィー・コリンズ。P-ファンク軍団はいったい何人いるのかわからないくらいの大所帯でかつメンバーの入れ替わりも激しかったのでなかなかつかみどころがなく、しかもパーラメントのバンドメンバーと同一で数多くのアルバムをそれぞれの名義で出しているので、正直整理していかないと訳がまったくわかりません。私も全部聞いた訳ではないのですが、とりあえず彼らのマストアルバムというと、パーラメント名義の「マザーシップ・コレクション」、ファンカ名義のエディ活躍アルバムとして「マゴット・ブレイン」そしてこのアルバム。マイケル活躍の「ハードコア・ジョリーズ」「ワン・ネイション・アンダー・ザ・グルーブ」と5枚あげさせていただきたい。5枚以下に絞られないくらい彼らのアルバムは素晴らしいと思います。自分の体に合うのです。





彼らの音はファンクというより、ブラック・ロックと呼ぶにふさわしく思います。ジミヘン、スライが切り開いたブラック・グルーヴの発展系だと思います。特にギターはジミヘンの影響を色濃く受けています。後にはプリンスが継承していくブラック・ロックは彼らによって生み出されたといっても過言ではないと思いますし、独特のグルーブ感をもつ意味においては、DNAはツェッペリンとニアーなのではないかとすら思っています。ロック側のリスナーの評価はもっともっとあっていいのではないでしょうか。惜しむらくは、ドラッグまみれのダーティなイメージと、ジャケットのアートワークのコミック要素や歌詞にもある俗悪趣味、変態性。そうしたところで間口を狭めてしまっているような感があります。サウンドだけをとって見ればこれだけ混沌とした中にも確固たるグルーブ感を持っている粘着質の音は唯一無比の存在であると思うのですが。





直訳すると「まさにそれを付ける寸前のまま」というかなり猥褻的なメッセージのタイトル曲。冒頭から痺れるようなリフとカッティングが相当にカッコいいです。やはりアルバムを通して聞くと、このアルバムは本当にエディ・ヘイゼルが主役である事をいやが応でも思わさせられます、弾きまくっています(笑)。実はエディは前年にモータウンと契約を結んだため、このアルバムでは契約上本人名義でクレジットが出せず、ヘイゼルの母親グレース・クック名でクレジットしています。その辺りもややこしく契約が訳わからなくなっており、混沌としたバンドイメージを更に深める結果となっています。



エディは才能豊かなギタリストだと思います。ジミヘン影響系のフリーキーかつグルービーなプレイは魅力的でありました。彼をリスペクトしたミュージシャンも多く、プライマル・スクリームのアルバムGIVE OUT BUT DON'T GIVE UPの裏ジャケはエディ・ヘイゼルの写真ですし、レッチリはこのアルバムのタイトル曲など数曲をカバーしたりしているようです。ただ、不幸でありました。ドラッグに溺れ暴力を働き投獄された後には後進のギタリストがまた天才だったがゆえポジションがなくなってしまい、音楽と疎遠になり肝硬変で42歳にて永眠しました。このアルバムはエディがイニシアチブをとり、音楽的に彼自身が最も開放されたアルバムのような気がしてなりません。



このアルバムのトップチューンを本日のラストチューンにさせていただきたいと思います。思えばこの曲のカッコよさロックらしさがあったからこそこのアルバムにぐっと引き寄せられたのでありました。それでは、また。