愛する人からもらったものは、無論、なくしたくはない。
しかし、指輪やピアスなど女子が好むキラキラしたものは小さくてなくなりやすい。
注意力はわりとあるほうだと自負している私は、今までの人生を振り返っても、さほど大きな落し物はなく、男性陣にいただいた諸々もほとんど紛失したことはないのである。
が、当時、彼氏だった夫が、むかーし昔のクリスマスプレゼントでくれたピアス。
それはもう長いこと愛用している輪っかのピアス。
のキャッチをなくしてしまったのは、かれこれ3年以上前のこと。
ピアスは無事で、ピアスを留める裏方のごくごく小さいキャッチを会社の中で落としてしまった。終業時刻近く、髪をかきあげたふとした拍子に、あれ?あれあれ?今、なんか飛んでかなかった?
当然、身近に落ちているはずなのに、探しても探しても見つからない。
うそーーー。キャッチの部分だから、まぁ、いいっちゃいいけれど。
でも、ハート型でかわいいキャッチだし、せっかく彼にもらったんだし。
うーん。
うーん。
あきらめきれない。腑に落ちない。
神経質な私はやたらと気を揉んだが、帰りの時間がきたのでキャッチ捜索は断念。そして、明日になれば見つかるさという希望を胸に帰宅した。
翌日以降もデスクのまわりをくまなく探せど、見つからない。
「きっと、お掃除のおばさんが掃除機で吸っちゃったんだね」
「ピアスのほうは無事なんだから、気にしない、気にしない」
落とした場所がわかっているだけに、どうにもすっきりしないけれど、何かと理由をつけて自分自身を納得させ、開き直って事態は終息。
あれから、三年のときが経つ。
と、ここまで書けばもうオチはお分かりだろうが、そう、先日、社内でキャッチを発見いたしました!
入社以来、場所の変わらない私のデスクのすぐ横の壁際に、ひっそりとあのハートのキャッチがたたずんでいるではないか。ずいぶん古ぼけた色になっているけど、それはまちがいなく、あの日ポロッと落としたキャッチ。
うれしいというより、びっくり。なぜ、長い間私の目には見えなかったのか。そして、なぜに今頃になって出てきたのか。
こりゃ、愛だな、愛。
なくしたと思い込んでいた結婚指輪が奇跡的に見つかった友達も身近にいた。その友達夫妻も趣味嗜好がぴったりで、お似合いの二人である。
うん、これって、愛は本物だということの証明だな。
と、はしゃいで同僚にコトの顛末を話したところ、彼女は言う。
「レイアウト変えて、久しぶりにガサガサ掃除したからですよ」
そう、最近、弊社には新入社員が入社。
近年まれに見るような配置換えをして、ネット配線をつなぎ直し、年末にしたこともないほどの大々的な大掃除が行われた(私の場所は相変わらず同じ場所ですが)。
それでもさ、私は愛の証だと信じたい。なくしてしまったと思っていたプレゼントが三年ぶりに発見されただなんて。