コンビニ人間 / 村田沙耶香 | 趣味は読書です

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ひたすら読んだ本たちの記録

コンビニ人間 (文春文庫)/文藝春秋
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「いらっしゃいませー!」

お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。

古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。

日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、

「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。

ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて…。

現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。






突然ですが、2019年に入って

興味深いYoutuberさんを見つけまして。それは、

文学YouTuberベル さん!

その名の通り、書評動画を数多く出されています。

昔の動画はそうでもないのですが、

ここ1年ほどの動画はめちゃめちゃクオリティが高い!

見たら、必ず読みたくなる、そんな感じなんです。

そういうことで今回は、ベルさんが紹介していて

「もう、すぐに読みたい!」

となった、「コンビニ人間」の感想です。

動画はこちら


もう読んでいて、とにかくとにかく辛い本でした。

普段目を背けている、

意識的に目を向けないようにしている、

ような感情を

淡々と文章にしている、そんな感じ。

主人公の恵子は、

これもう発達障害を越えてサイコパスやろ・・!

と思ってしまうような人。

でも、恵子が疑問を抱いている、

恵子の周りのいわゆる“普通の人”、

そんな人たちにもぞっとする・・もう救いようのない読書。

加えて途中から登場する白羽はこれまた超絶くず男。

でもこの人はもう情けなさ過ぎて、最後には逆に

「許すわ。」と私はなりました。笑


恵子の解釈にぞっとしたのは、具体的にこういうところ。


「同じことで怒ると、

店員の皆がうれしそうな顔をすると気が付いたのは、

アルバイトを始めてすぐのことだった。

店長がムカつくとか、夜勤の誰それがサボってるとか、

怒りが持ち上がったときに協調すると、

不思議な連帯感が生まれて、

皆が私の怒りを喜んでくれる。」


「ああそうだ、こういうときは、

「うーん、いい感じになったことはあるけど、

私って見る目がないんだよねー」と曖昧に答えて、

付き合った経験はないものの、

不倫かなにかの事情がある恋愛経験はあって、

肉体関係を持ったこともちゃんとありそうな雰囲気で

返事をしたほうがいいと、

以前妹が教えてくれていたのだった。

「プライベートな質問は、ぼやかして答えれば、

向こうが勝手に解釈してくれるから」

と言われていたのに、失敗したな、と思う。」


うわあああああああああああああああ!!!

恵子の考えにぞっとする、というのもありますが、

どこかその感覚をわかってしまう自分にぞっとする、

というのも大きいです。

なので、この本を読んで何も感じない、

何を言ってるのか全然わからない、

という人はある意味幸せなのではと思います。

今この感想ブログを読んでいる皆さんは、

どうでしょうか?

ここも面白かったです。


「何かを見下している人は、特に目の形が面白くなる。

そこに、反論に対する怯えや警戒、もしくは、

反発してくるなら受けてたってやるぞという

好戦的な光が宿っている場合もあれば、

無意識に見下しているときは、

優越感の混ざった

恍惚とした快楽でできた液体に目玉が浸り、

膜が張っている場合もある。」


そんな目、自分も無意識にしてるのかなと思ったら

これまたぞっとしました。


まあ後は、「コンビニ人間」というぐらいですから、

コンビニのお仕事小説としても充実していました。

おもしろいですね、コンビニの仕事って!

何でコンビニ店員を見下す人がいるのか、

よくわかりません。

仕事の優劣・・難しい問題ではありますが。。

「体調管理をして

健康な体をお店に持って行くことも時給の内」

なんて、全社会人に捧ぐ名言ですよね。


正直、

読んで元気になれる本ではありませんでしたが、

面白かったのは面白かったです。

何より、読みやすい!

ベルさんもおっしゃっていましたが、

あっという間に読み終われます。

こんな人も世の中に入るのかという気持ち、

ああ、私のことを言っているようだ、という気持ちを

ぜひ味わってください。




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