2023年本屋大賞第2位
橘の苦悩とチェロの響きが
静かに心に染み渡たる1冊
少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り……(公式HPより)
もし、先生が浅葉でなかったなら。
橘はここまで苦しんだであろうか。
ふたりの出逢いは、運命だったんだろう。
たくさんの音楽教室の中で、
人柄を含め、波長が合い尊敬できる講師に
出会えることは奇跡に近いと思う。
ふたりのやり取りが心地よかった分、
真実が明らかになった後の
両者の苦しさが痛々しかった。
違う形で出会って欲しかった。
だけど、このきっかけがなければ橘は
再びチェロを奏でることはなかったと思うし、
浅葉先生も橘を生徒として
受け入れていなければ
夢へ再挑戦することもなかったはずだ。
新たな二人の師弟関係を静かに見守りたい。
そして、スパイとしての仕事を全うした
三船さんの今後の人生が
健やかであることを祈りたい。
※スペシャルショートストーリーが上記公式HPで読めます