【共洗い】する器具は末尾が「ト」 | 人気学参『高校物理発想法』著者 大阪で物理化学の家庭教師を行っています。生徒募集中!

人気学参『高校物理発想法』著者 大阪で物理化学の家庭教師を行っています。生徒募集中!

人気学習参考書『高校物理発想法』の著者です。大阪で高校物理・化学の家庭教師を行っています。本質を的確に教える指導が好評です。なかなか学参執筆者の指導を直接マンツーマンで受けられる機会はありません。関心がある方はメッセージください。

「共洗い」について説明します。

 

まず、なぜ共洗いなどということが問題になるのか。

 

例えば、すごく豪華な実験施設で実験器具が豊富にある。

必ず、乾いている必要な実験器具のストックがある。

 

こんな場合は共洗い云々は出てきません。

その乾いている器具で普通に実験すればいいだけです。

 

しかし、学校の理科室などを想像するといいのですが、

 

器具が豊富にあるわけではなく、

直前の時間にも実験が行われていて、

まだ、乾燥しきっていない器具で実験しなくてはいけない

 

こういうケースが普通にあると思います。

 

この、まだ乾いていない器具で実験するケースでこそ共洗いが問題になります。

 

炎など熱で素早く乾かしてしまう、というのはダメです。器具が変形してしまって

正確な量を測れなくなるからです。

基本、乾燥は自然乾燥です。

 

では、共洗いについて解説しましょう。

 

 

典型的な、シュウ酸の標準溶液で水酸化ナトリウム水溶液を滴定するケースを考えます。

 

まず、シュウ酸の標準溶液を調整するのですが、

それに「メスフラスコ」を用います。

で、メスフラスコが濡れていたら・・・を考えるわけです。

 

当たり前ですが、直前に実験した人は、

実験後に蒸留水で器具を洗ってます。

洗わずに放置したとかは考えていません。

 

「そりゃそうだ」

 

メスフラスコに正確に測ったシュウ酸二水和物を入れて

標線まで水を注ぎます。

 

このように水を入れてしまうわけですから、

メスフラスコが濡れていても問題ありません。

 

したがってメスフラスコは共洗いしません。

逆に共洗いしてしまうと、共洗いの際に付いた

シュウ酸も溶液に混じるので、狙い通りの濃度になりません。

 

まあ、この段階でまだ水溶液はないから、

共洗いのしようがないんだけど。

 

「そっだね」

 

で、今、シュウ酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液があるんだけど、

塩基は空気中の二酸化炭素と反応してしまいます。

なるべくそれを抑えたいので

接触面積が少ないビュレットに塩基を

コニカルビーカーに酸を入れます。

 

次の操作はホールピペットでシュウ酸水溶液の一定量を測って、

コニカルビーカーに入れます。

 

で、ホールピペットが濡れてたら・・・

 

調整したシュウ酸水溶液の濃度がa[mol/L]だとします。

ホールピペットで10[mL]測るとすると、

実験者は、コニカルビーカーに0.01a[mol]のシュウ酸が存在すると考えますね。

 

ところがホールピペットが濡れていたら、

測ったシュウ酸水溶液の濃度が変化してしまいます。

 

a[mol/L]で10[mL]測ったと思ったものが、それとは異なるb[mol/L]で10[mL]になっているわけです。

 

これだと、中和に必要な水酸化ナトリウム水溶液の量が変化してしまうので、

正しい滴定ができません。

 

そこで、測り取る前に

ホールピペットを、

さきほど調整したシュウ酸水溶液で洗います。

するとホールピペットの内壁はa[mol/L]のシュウ酸水溶液で濡れています。

この状態で、10[mL]測り取れば、

ホールピペット内はa[mol/L]、10[mL]になっています。

 

これで正しい滴定ができます。

 

この使用する溶液で器具を洗う操作を

「共洗い」と言います。

 

ホールピペットは共洗いが必要というわけです。

 

そのホールピペットで測った溶液をコニカルビーカーに入れます。

コニカルビーカーが濡れていたら・・・

 

コニカルビーカーのシュウ酸水溶液に

中和点まで水酸化ナトリウム水溶液を滴下するのですが、

コニカルビーカーが濡れていても、

中和点までの滴下量は変わりません。

 

したがってコニカルビーカーは共洗いしません。

共洗いしてしまうと余分なシュウ酸が付くので、

水酸化ナトリウムの滴下量が変化し、

正しい滴定ができません。

 

滴下する器具がビュレットです。

水酸化ナトリウム水溶液を入れます。

 

で、ビュレットが濡れていると・・・

用意した水酸化ナトリウムの濃度と

ビュレット内の濃度が異なってしまいます。

 

実験者は、c[mol/L]でv[mL]滴下したと思っているのに

実際は、それとは異なるd[mol/L]でv[mL]の滴下を行っているわけです。

 

これでは正しい結果が得られません。

 

したがってビュレットは共洗いします。

共洗いしておけば、ビュレット内もc[mol/L]になっています。

 

 

これでOKです。

 

まとめます。

 

メスフラスコ・・・共洗いしない

ホールピペット・・・共洗いする

コニカルビーカー・・・共洗いしない

ビュレット・・・共洗いする

 

共洗いする理由は溶液の濃度が変わってはいけないから

共洗いしない理由は溶質の物質量が変わってはいけないから



実は簡単な覚え方があって、

 

器具名の語尾が「ト」の器具は共洗いする

 

「あ~、そういう方法があったんか~

早く教えてよお~」

 

でも、キチンと共洗いする理由、しない理由も

言えた方がいいから、

100%それに頼ってしまうのもダメなんだよ。

 

今回は共洗いがテーマでした。

 

滴定は、他にも、

正確に測れる器具を選べとか、

指示薬の選び方、指示薬の色

滴定曲線の形

など、いろいろ問われることがあるので、

しっかり学んでおいてください。

 

「ハーイ」