前回は、遠心性収縮の鍵となる「タイチン」という組織についてお話ししました。今日は閑話休題。このタイチンはコネクチンとも呼ばれ、日本人研究者の丸山先生が発見されたものだそうです。(参照リンク

丸山先生は、ミオシンとアクチンというたんぱく質を取り除いた筋線維が、引き伸ばされたあとにパッと元の長さに戻る現象を観察し、そこに“見えないバネ”の存在を感じ取ったといいます。
14年の歳月をかけてその正体を明らかにし、「つなぐ」という意味を込めて“コネクチン”と名づけました。

発見とは、すぐに答えが出るものではなく、試行錯誤や違和感の中で少しずつ形になるもの。
その探究の姿勢は、私たちの現場にも通じています。

「このクライアントさんにとって、どんな環境が最適だろう?」「どうするともっと動きがよくなるだろう?」
その問いに即答はなくても、考え、試し、また考える。
そのプロセスこそが、学びであり、成長なのだと思います。

丸山先生は「流行を追うのではなく、その元を見つけることが大切」と語っています。
この言葉は、これまで大切にしてきたスタジオの歩みにも重なります。

先月末、おかげさまで17周年を迎えました。
これまで支えてくださった皆さまに心より感謝申し上げます。
これからも好奇心を忘れず、探究を楽しみながら、クライアントの皆さまにとって最善のサポートを探し続けていきます。

 

 

 

 

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これまで、遠心性収縮がどのように効率よく身体を支え、力を発揮しているかを見てきました。
では、その力は筋肉の中のどんな仕組みで生まれているのでしょうか?今回はミクロな世界での筋肉の動きについて見てみます。

筋肉の内部をのぞくと、アクチン(細い)とミオシン(太い)という2種類のフィラメントが整然と並んでいます。ミオシンがアクチンに結合と解離を繰り返し、まるでオールを漕ぐようにアクチンを引き寄せることで筋肉は短縮します。これが求心性収縮の仕組みです。
この動きにはATPが使われ、ATPの分解がミオシンの動力源になります。

一方、遠心性収縮では、外力(重力や慣性)によって筋肉が伸ばされながらも、ミオシンはアクチンを掴んだまま抵抗しています。このとき、筋節(サルコメア)全体を貫くタイチン(titin)という巨大なたんぱく質が重要な役割を果たします。

タイチンはミオシンとアクチンの間を橋渡しするように存在し、筋肉が伸ばされるとゴムのように引き伸ばされます。そのとき生じる弾性力(スプリングのような反発)が、遠心性収縮で外力に抗して張力を保つ大きな要因です。つまり、タイチンは筋肉の中に内蔵された“バネ”のような存在なのです。

この弾性は、単に力を補うだけでなく、衝撃をやわらげ、エネルギーを一時的に蓄えて再利用する働きもあります。たとえば、着地の瞬間にタイチンが伸びて衝撃を受け止め、その反発が次の一歩の推進力に変わる。こうした“受け止めて・ためて・返す”循環こそが、筋肉のしなやかさと効率を支えています。

ピラティスでいえば、スプリングの張力を感じ取りながら動くとき、身体の中でもタイチンが同じように働いています。
外からの力をただ受けるのではなく、内なる弾性で応答する、それが、遠心性収縮を「ブレーキの力」から「調和としなやかさの力」へと変えてくれるのです。

 

 

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前回まで、遠心性収縮が「動きを受け止める力」であり、身体をなめらかにコントロールするために欠かせないしくみであることをお話ししました。今回はその遠心性収縮が「力の発揮」と「エネルギー効率」の両面で、どんな特性を持っているのかを見ていきましょう。

同じ筋肉でも、縮みながら働く求心性収縮より、伸ばされながら働く遠心性収縮のほうが大きな力を発揮できることが、多くの研究で示されています。たとえば、膝の伸展筋群(大腿四頭筋)を用いた測定では、遠心性での最大筋力が求心性より高い、あるいは少なくとも同等という結果が頻繁に報告されています。また、求心性では動作スピードを上げると力が急激に落ちるのに対し、遠心性ではスピードが上がっても力があまり低下しません。これは、筋線維が引き伸ばされる過程で、タイチンなどの弾性要素が受動的に張力を生み出すことが関係しています。

さらに興味深いのは、遠心性収縮は「少ないエネルギーで大きな仕事ができる」という点です。
たとえば、坂道を登るときと下るときを比べてみてください。登るとき(求心性)は息が上がり、筋肉を強く使っている感覚がありますが、下るとき(遠心性)はそれほど呼吸が乱れません。それでも脚にはブレーキをかけるような働きがあり、翌日に筋肉痛を感じることもあります。つまり、遠心性の動きはエネルギー消費が少ないのに、筋肉にはしっかりとした刺激を与えることができるのです。

この「省エネで強い」特性は、リハビリや体力の衰えた方のトレーニングにも有効です。筋や関節への負担を抑えながらも、高い筋力刺激を得られるため、安全かつ効率的に筋を強化できます。ピラティスでいうなら、スプリングの戻りをコントロールする動きや、ロールダウンのように重力に抗いながら“静かに下ろす”場面が、まさにその練習になります。

遠心性収縮は、ただ「ブレーキをかける力」ではなく、「エネルギーを賢く使う力」でもあります。力を抜くのではなく、必要な分だけ保つ。その微妙なコントロールが、無駄のない、美しくしなやかな動きをつくり出してくれるのです。

 

 

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前回は、椅子に腰を下ろすときに使われる遠心性収縮についてお話ししました。
この「伸ばされながらも張力を保ち、動きをコントロールする力」は、私たちの日常の中でも頻繁に働いています。

たとえば、坂道や階段を下りるときや、腕を伸ばして棚に物を戻すとき、走っていて急に止まるときなど。どれも、重力や慣性によって身体が引っ張られる方向に対し、筋肉がブレーキをかけて動きを減速しています。もしこの働きがなければ、階段を転げ落ちたり、膝が抜けたりしてしまうでしょう。

遠心性収縮は、動きをなめらかにするだけでなく、衝撃を吸収しエネルギーを分散する働きを担っています。歩行や着地のたびに関節や筋肉に生じる力を、筋や腱が一時的に伸張して受け止め、必要に応じて再利用する。この「受け止めて逃がす」能力が、身体を守るクッションのような役割を果たします。

遠心性の制御が優れている人ほど、関節に無理な負担がかかりにくく、動きが静かで滑らかで、姿勢の安定感がある、といった特徴が見られます。

トレーニングでは「持ち上げる」「押す」といった短縮性の動きが中心になりがちです。縮む動きばかりを強調してトレーニングをすると、動作が硬くなり、負荷が特定の関節に集中しやすくなります。この、「持ち上げたあと」や「押したあと」の“戻る”動作の中に重要な要素が隠れています。

ピラティスのロールアップでは、腹筋群が短くなりながら体幹を起こすために働きます(求心性収縮)。一方、ロールダウンでは、背骨を静かに一つずつ下ろす動きの中で、腹筋群は伸ばされながら活動し、背中が「ドン」と床に落ちないようにブレーキをかけるように働いています(遠心性収縮)。
フットワークやヒップワーク、アームワークでも、スプリングの戻りを自分でコントロールすることを意識することによって遠心性収縮のトレーニングに変わります。

私たちの身体は、動きを生み出すためだけでなく、動きをやさしく減速させるためにも作られています。遠心性収縮は、その繊細な制御を担う重要なしくみ。
“持ち上げる力”とともに、“受け止める力”を育てること。
それが、しなやかで疲れにくい身体づくりにつながっていきます。

 

 

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立っている状態から椅子に腰を下ろすとき。体は重力によって下方向に引かれているため、もし筋肉がまったく働かなければ、体は「ドスン」と一気に落ちてしまいます。ところが実際には、ゆっくりとコントロールしながら腰を下ろすことができます。
そのコントロールに使われているのが、遠心性収縮です。

主に働いているのは大腿四頭筋(太ももの前側の筋)。この筋肉は本来、膝を伸ばす方向に作用しますが、座る動作では膝が曲がっていく(屈曲する)方向に動いています。つまり、筋肉は伸ばされながらも力を発揮し、膝が曲がるスピードをゆっくりにしているのです。

遠心性収縮(eccentric contraction)とは、筋肉が伸びながら力を発揮する収縮様式のこと。それに対して求心性収縮(concentric contraction)は、筋肉が短くなりながら力を発揮する状態です。(例:立ち上がるときの大腿四頭筋や荷物を持ち上げる時の上腕二頭筋の働き)

わかりやすい例として、手に持った荷物を下ろす動作を思い浮かべてみてください。腕の力を抜くと荷物は一気に落下してしまいますが、腕の筋肉を使ってゆっくり下ろすと、静かに床へ置くことができます。椅子にゆっくりと座るとき、脚でも同じように筋肉が“ブレーキ”をかけるように働いています。

ピラティスでは、この遠心性収縮を利用したエクササイズが多く見られます。たとえばリフォーマーやキャデラックで行うフットワークやヒップワークもその一例です。

卵が入ったバッグをそっと扱うように、自分の身体も丁寧に静かに下ろしていくイメージを持つと、椅子に座る動作でも自然と遠心性収縮で身体を支えることができます。このような意識で日常動作を行っていくと、何気ない動きの中にも遠心性収縮のトレーニングが生まれ、なめらかで身体にやさしい動きが身についていきます。

 

 

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