「骨は硬くて変わらないもの」というイメージが強いですが、実は骨も環境や使い方によって形を変える、柔軟な組織です。例えば、宇宙飛行士が無重力空間で生活をすると、骨密度が下がることはよく知られています。「Form follows function(形態は機能に従う)」という原則は、建築やデザインの世界でよく使われますが、わたし達の骨や身体構造もまた、その機能によって形づくられているのです。
骨の内部にある「骨梁(こつりょう)」を見てみましょう。骨はすべてが硬い骨(緻密骨)でできているのではなく、緻密骨の内側には、スポンジ(海綿)のような網目状の構造が広がっています。これは「海綿骨」と呼ばれ、力がかかる方向に合わせて、梁のような骨のラインが形成されます。まるで建物の柱や梁のように、負荷がかかる部分を補強しているのです。
このように、骨は日常的にかかる力(荷重)に応じて強化・変形され、使われない部分は弱くなるという性質を持っています。この仕組みは「ウォルフの法則」と呼ばれ、「健康な動物の骨は、それにかかる負荷に適応して変化する」とされています。先ほどの宇宙飛行士の例のように、無重力環境に長くいると骨密度が低下してしまうのは、重力による骨への負荷がなくなるからです。逆に、適度な運動を続けている人の骨は強くなります。つまり、骨の形や密度は、その人の生活スタイルや環境に応じて変化するのです。
赤ちゃんの身体や骨がどのように成長していくかは、どのような環境でどのような力がかかっているかによって変化していきます。「骨棘(こつきょく)」もまた、身体が機能的に適応しようとした結果の一つです。関節に不適切な負荷がかかり続けると、骨はその負担を分散しようとして接地面積を増やすように突起を形成します。これも「形態は機能に従う」の例といえるでしょう。
このように、わたし達の身体は環境や使い方に応じて形を変え、適応していきます。だからこそ、日常生活の中でどのように身体を使っているかを意識することが大切です。例えば、姿勢・重心の位置を意識することで、骨にかかる負荷が減り、筋肉や筋膜・ファシアの働きも効率的になります。逆に、無理な姿勢や動作が続くと、骨や筋肉に過度の負荷がかかり、痛みや不調を引き起こす原因になることもあります。日々の動作や姿勢、習慣が未来の自分を形作っていきます。「得たい機能」をイメージして、それに見合った負荷や刺激を身体へ加えてあげましょう。
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