ヨーゼフ・アントン・ブルックナー(Joseph Anton Bruckner / 1824年 - 1896年)
没後130年に寄せて、ブルックナー交響曲探訪シリーズを掲載しています。
総合概説の後、第00番から作曲年順に各交響曲の探訪を進めています。
今日は、最も深淵な世界観が実現している考えられるのと同時に
巨大なモニュメントと言えるような大曲でもある、交響曲第8番を探訪します。
概説の記事にも書きましたが、私がブルックナーの真髄を始めて感受した
ギュンター・ヴァント指揮/北ドイツ放送交響楽団の来日公演で
感激した演奏は、この交響曲第8番でした。
音の大聖堂にどっぷりと浸かりきって聴き入った至高の幸せの時間でした。
人それぞれの好みや考え方があるでしょうが、一般的には、この「第8番」を
ブルックナーの交響曲群の頂点と考えて良いと思います。壮大で深淵な名曲です。
(もしも第9番が未完に終わらずに大規模な終楽章まで完成していれば、
頂点は「第9番」であるということになったと思われますが。。。)
長大な作品ですし、「第5番」ほどではないものの難解な面も内包していますから、
第3番から第7番までを聴き終えた上で、じっくりと聴いていただくことをお勧めします。
「第7番」の初演の大成功で自信を深めたこともあったのでしょうか、
この「第8番」では楽器編成も木管を三管編成に拡大してハープも加えるなど、
時間的にも物理的にも規模を拡大させています。
特に、ホルン8本(内5〜8番はワークナー・チューバ持ち替え)とした点が
注目されます。壮大な交響曲の誕生です。
♫ ♫ ♫ ブルックナー交響曲探訪 vol.10/交響曲第8番 ♫ ♫ ♫
〜交響曲第8番 ハ短調〜
注釈)交響曲第8番 ハ短調 - - - - 1884-87年作曲 / 1889-90年改訂
第1楽章 Allegro moderato (演奏時間:約15分)
どこか不安げな、何かを探るような第一主題の導入からこの長大な交響曲は始まります。
いつもようにブルックナー流の三主題ソナタ形式の構成に沿って音楽は進んでいきます。
柔らかな第二主題と総奏で盛り上がる第三主題へと続いていきますが、
案外短い提示部にまとまっています。
展開部もあまり長くはなく、壮大なクライマックスに到達したところで第一主題が鳴り響き、
提示部とはかなり道筋が異なる再現部となります。
第三主題の再現で大きなクライマックスに到達した後、第1楽章としては珍しく
弱奏による謎めいたコーダ(終結部)となります。
第2楽章 Scherzo: Allegro moderato - Langsam (演奏時間:約15分)
この「第8番」から第2楽章がスケルツォとなっています。
ここでも勿論、スケルツォ楽章に大いなる適性を発揮するブルックナーらしい、
「ドイツの野人」と自ら称したような独特の音楽が展開されます。
Trio(中間部)は主部とは対照的に融和な音楽で、ハープが印象的に登場します。
スケルツォ主部に中間主題のような部分がある複合三部形式による
大きなスケルツォ楽章になっています。
スケルツォ名人ブルックナーが更なる成熟を見せた楽章と言えるでしょうか。
第3楽章 Adagio: Feierlich langsam, doch nicht schleppend (演奏時間:約25分)
連綿とした美しさと崇高な気高さを感じさせる緩徐楽章です。
ブルックナーの緩徐楽章の標準形、A-B-A-B-A- Coda の構成となっています。
ただし各部分は相当に発展的に書かれていて、演奏時間も連綿と長い楽章になっています。
何度か同じ楽想で盛り上がる度に、第二楽章に続いてハープが印象的に聴こえてきます。
とにかく美しさの深淵に迫っていくような音楽です。
ブルックナーが崇拝していたベートーヴェンの交響曲、特に「第九」の緩徐楽章の世界に
最も近づいた楽章と言っても良いかもしれませんね。
第4楽章 Finale: Feierlich, nicht schnell (演奏時間:約25分)
(注:この楽章はハース版とノヴァーク版の間にかなりの差異があるようですが、
本稿は細かいところは深掘りしないで概説を進めていきます。)
近年ではテレビコマーシャルにも使用されるほどキャッチーで格好いい
第一主題の勇壮な咆哮からこの終楽章は始まります。
そして例によって弦楽器主体の柔らかな第二主題が続きます。
第三主題は再び行進曲調になって総奏に至ります。
展開部は、主に第一主題と第三主題の要素を用いながら、
手を替え品を替え次々と発展を繰り出して進んでいきます。
特に終盤で第一主題が執拗に展開された後、再現部に到達します。
第一主題が壮大に回帰した後の発展的な推移の後、第二主題と第三主題も再現されます。
第三主題の再現には直ぐに第1楽章の第一主題も割り込んできます。
Coda(終結部)は、地の底から湧き上がり直すように音楽が湧き上がっていきます。
そしてブルックナー独特の音の大伽藍に到達して、壮大なフィナーレとなります。
演奏時間約80分に及ぶ壮大な作品に到達したこの「第8番」です。
マーラーの「第2番」「第3番」「第8番」「第9番」と並ぶ後期ロマン派の大交響曲と
言えましょうし、私としてはブルックナーの最高傑作だと考えています。
最後に私の仕事場のライブラリーにあるCDを2種類ご紹介しましょう。
アントン・ブルックナー 交響曲第8番 CD / RCA / POCG 1005
ギュンター・ヴァント指揮/北ドイツ放送交響楽団
もう一枚はとっておきのディスクです。往年のN響の演奏のライヴ盤です。
NHK交響楽団に度々客演して、数々の名演を繰り広げてくれた名匠の
渾身のブル8を堪能できるCDです。
アントン・ブルックナー 交響曲第8番 CD / DENON / COCO-78551
ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮/NHK交響楽団
最後に、エリアフ・インバル指揮/東京都交響楽団の演奏の動画をリンクしておきます。
都響スペシャル 2019年3月17日(日)サントリーホール
指揮/エリアフ・インバル ブルックナー
交響曲第8番 ハ短調 WAB108 (ノヴァーク:第2稿・1890年版)


