ヨーゼフ・アントン・ブルックナー(Joseph Anton Bruckner / 1824年 - 1896年)
没後130年に寄せて、ブルックナー交響曲探訪シリーズを掲載しています。
総合概説の後、第00番から作曲年順に各交響曲の探訪を進めています。
今日は、ブルックナーの個性が本格的に確立したと目される第3番の次に書かれて、
伸びやかで分かりやすい楽想と程よい演奏時間が相俟って人気が高い、
交響曲第4番『ロマンティック』を探訪します。
尚、この『ロマンティック』という副題(標題)は、
ブルックナー自身がこの交響曲を「ロマン主義的(独語:Die Romantische)と
改正後に称したことに由来するものです。
『これからブルックナーの交響曲を聴いていこう』とお考えの方にとっての入門編として、
この第4番は正に"お勧め"の一曲だと言えるでしょう。
初演は1881年のハンス・リヒター指揮/ウィーン・フィルで行われました。
また1886年にはアントン・ザイドルの指揮によってニューヨーク初演も行われました。
♫ ♫ ♫ ブルックナー交響曲探訪 vol.6/交響曲第4番 ♫ ♫ ♫
〜交響曲第4番 変ホ長調『ロマンティック』〜
注釈)交響曲第4番 変ホ長調『ロマンティック』- - - 1874年初稿 / 1878-80年大幅改訂
この記事の下の解説は、1881年稿を基本として記していきます。
第1楽章 Bewegt, nicht zu schnell (演奏時間:約18分)
弦のトレモロ弱奏(原始霧)の中から悠然と第一主題が姿を現すという
最も象徴的なブルックナー開始で提示部がスタートします。
主題を構成する主要動機は「第3番」に続いてシンプルで明快です。
しかも、この第一主題は、全曲にわたって循環主題としても活用されていきます。
そして、あの有名な"ブルックナー・リズム"(二連符+三連符/タンタンタタタ)が、
この第一主題の発展的な提示の中で執拗に繰り返されます。
正に"ブルックナーらしさ全開"です。
柔らかで美しい第二主題を経て、総奏で盛り上がる第三主題に至る、
ブルックナー流の三主題ソナタ形式楽章です。
金管によるコラールが荘厳に盛り上がる展開部のクライマックスや、
第一主題の再現に絶妙なフルートのオブリガードが付されるなど、
見どころ(聴きどころ)も満載です。第三主題の再現に続いて
淀むことなく結尾まで疾走するコーダ(終結部)の盛り上がりも見事です。
第2楽章 Andante quasi allegretto (演奏時間:約15分)
哀愁を帯びた美しい主要主題(A)から始まる緩徐楽章です。
副主題の部分が二度出てきますから、A B A B A Coda 構成と考えて良さそうです。
但し、各主題が単なる提示に終わらずに発展的に扱われているので、
A(第一主題提示)→ B(第二主題提示)→ 展開 → A(第二主題再現)→
B(第二主題再現)→ A(第一主題による再発展)→ コーダ(終結部)
と読み解いて、ソナタ形式の応用による緩徐楽章というようにも聴くことができます。
第3楽章 Scherzo: Bewegt (演奏時間:約11分)
"狩のスケルツォ"と呼ばれている快活な楽想が主導するスケルツォ楽章です。
ホルンが大活躍する楽章でもあります。
スケルツォ主部がかなり綿密で有機的な構成を持っていて、
小ぶりなソナタ形式として聴くこともできます。
トリオ(中間部)は一転して長閑な楽想となって対照的です。
鮮やかなコントラストを生み出しています。
楽章の閉じ方ですが、第3番までのスケルツォでは、
ダカーポの後に独自のコーダをつける試行を繰り返していましたが、
この「第4番」では、コーダを付さずにしかし堂々と終わる境地に達しています。
第4楽章 Finale: Bewegt, doch nicht zu schnell (演奏時間:約20分)
第1楽章の第一主題を暗示するような序奏に始まります。
スケルツォ主題の要素も加わって、この楽章の第一主題の強奏に至って楽章がスタートします。
第4楽章の第一主題の提示の後、第1楽章の第一主題が高らかに奏されて、
循環形式が意識されます。そして、続く第二主題は穏やかで美しい旋律を湛えています。
更に総奏による第三主題というパターンもお馴染みの流れです。
展開部では、さまざまな主題が表情豊かにバラエティーも豊かに発展されていきます。
突然の第一主題の咆哮によって、やや圧縮されつつも発展的に扱われる再現部となります。
第二主題の再現の後に第三主題は再現されず、そのままコーダ(終結部)に入っていきます。
第一主題の動機により厳かに盛り上がった後、
循環主題(第1楽章の第一主題)が高らか強調されて全曲が閉じられます。
尚、この「第4番」に至って初めて、第一楽章よりも演奏時間が長い
第4楽章となっていることも特筆すべきでしょう。
後年の代表作と目される「第5番」や「第8番」も
終楽章が第一楽章よりも長いバランスになっています。
全曲約65分程度の規模で、和声的な書法ですっきりまとまった交響曲の誕生です。
不器用と言うか無骨さが魅力でもあるとも言えるブルックナーの交響曲群ですが、
この「第4番」はかなり滑らかで美しい作品に纏まっています。
「第00番」「第1番」「第0番」「第2番」での試行錯誤や修練を経て、
「第3番」での手応えを基盤として一つの完成形に到達した「第4番」と言えると思います。
そして、今度は対位法的な書法を思っ切り実践すべく、
次の「第5番」に取り組んだのだと、私は考えています。
最後に私の仕事場のライブラリーにあるCDをご紹介しましょう。
アントン・ブルックナー 交響曲第4番 CD / グラモフォン / F32G 20234
ジュゼッペ・シノーポリ指揮/ドレスデン歌劇場管弦楽団
ブルックナー :交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
ラファエル・クーベリック ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
1971年1月12-14日 ウィーン楽友協会大ホール

