ヨーゼフ・アントン・ブルックナー(Joseph Anton Bruckner / 1824年 - 1896年)
没後130年に寄せて、ブルックナー交響曲探訪シリーズを掲載しています。
総合概説の後、第00番から作曲年順に各交響曲の探訪を始めています。
今日は、ブルックナーの個性が本格的に確立したと目される作品、
交響曲第3番を探訪します。
1873年の夏の終わりに、旧作の「第2番」とこの「第3番」の楽譜を携えて、
崇拝していたワーグナーを訪ねたところ、賞賛と激励を受けて
大いに自信と励みを得たというエピソードも残っています。
ブルックナーが交響曲の分野での習作期を脱して、本格的に個性を確立して作品は、
この「第3番」からと考えて良いだろうと私は思っています。
これからブルックナーを聴いてみようとお考えの方には、一つの方法として、
この「第3番」から聴き始めて、移行番号準備に、
「第9番」に向けて順番に聴き進めていくこともお勧めできます。
但し、この「第3番」は稿の種類が多種多様で、
さまざまな楽譜を使用した演奏や録音が出回っています。
初稿は演奏時間が約70分ですが、"荒削り"とも"革新的"とも言われているようです。
第2稿が約60分、第3稿が約55分と、改訂の度に次第に整理されていったことが伺えます。
♫ ♫ ♫ ブルックナー交響曲探訪 vol.5/交響曲第3番 ニ短調 ♫ ♫ ♫
〜交響曲第3番 ニ短調(『ワーグナー』)〜
注釈)交響曲第3番 ニ短調(『ワーグナー』)
- - - 1873年初稿 / 1876−77年大幅改訂 / 1888-89年大幅改訂
下の解説は、第2稿(ノヴァーク版)を基本に記すことにします。
第1楽章 Misterioso (演奏時間:約21分)
弱奏による伴奏音型の上に明確に第一主題が奏されて次第にヴォルテージを上げていく、
"ブルックナー開始"の一例と言える冒頭から音楽が始まります。
第一主題は一般聴衆にも覚えやすい明瞭さを持ったもので、この
『"明瞭さ"を獲得したことからブルックナーの交響曲は名曲への階段を登っていった』
と、私は考えています。
ブルックナー流の三つの主題を擁するソナタ形式楽章です。
提示部だけで演奏に約9分かかる規模となっています。
そして、ゴツゴツとした無骨な展開部を経てやや圧縮された再現部に至ります。
そして、第一主題が再度高らかに奏されてコーダ(終結部)のクライマックスに到達します。
第2楽章 Andante, quasi Adagio (演奏時間:約16分)
ブルックナーらしい厳かで壮大な緩徐楽章です。
各主題の旋律も明瞭で、わかりやすく且つ美しい楽章になっています。
主要主題(A)→副主題(B)→中間主題(C)〜展開〜中間主題(C)→
主要主題(A)〜クライマックス→コーダ(終結部)
といった概観・構成と捉えることができるでしょうか。
ソナタ形式的な発展性を内包した緩徐楽章と言える密度を持った音楽です。
第3楽章 Scherzo (演奏時間:約7分)
スケルツォを得意とするブルックナーがついに到達した、
ブルックナーらしいスケルツォの決定版の第一弾、と言える楽章の誕生です。
この「第3番」以後「第9番」まで、スケルツォ楽章はとにかく魅力的です。
『ベートーヴェンが確立した交響曲のスケルツォ楽章の伝統の
真の継承者はブルックナーである!』と言えるのではないでしょうか。
第4楽章 Finale: Allegro (演奏時間:約15分)
ソナタ形式をブルックナー流に自由に扱ったと思われる終楽章です。
分かりやすいシンプルな動機による第1楽章の第一主題と共通点が多い
この楽章の第一主題から快活な音楽が始動します。
それに続く室内楽的な第二主題もブルックナーらしい典型例です。
そして突然、総奏による第三主題に移行します。
ここから楽章の終盤にかけては"稿"によってかなりの差異があるようです。
1877年稿(ノヴァーク版)の場合、やや短めの展開部の後、
再現部は第一主題の再現から始まり、第二主題と第三主題の再現に続きます。
そして最後に大いに盛り上がるコーダ(終結部)によって全曲が閉じられます。
ここでも、明確な第1楽章の第一主題の動機が印象的に響きます。
全曲約60分の中にブルックナーらしさがある程度わかりやすく明確に結実した
この「第3番」の誕生が、ブルックナーの偉大なシンフォニストへの将来を
決定づけたのだと、私は考えています。
最後に私の仕事場のライブラリーにあるCDをご紹介しましょう。
ちょっと珍しいアーノンクール盤です。
アントン・ブルックナー 交響曲第3番 CD / TELDEC / WPCS-4551
ニコラス・アーノンクール指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
ブルックナー 交響曲第3番 ニ短調
(1877年第2稿《新前週新版III/2 1981年出版》・ノヴァーク校訂)
指揮:クリスティアン・ティレーマン
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2020年11月27~29日 ウィーン ムジークフェラインザール

