宇宙が鳴り響く記念碑的大作〜マーラー/交響曲第8番「千人の交響曲」 | 松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

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マーラーの交響曲の紹介も、遂に最大の作品=
交響曲第8番「千人の交響曲」に到達しました。

第1番「巨人」で青春の息吹とも言うべき門出を飾った後、
第2番「復活」、第3番「夏の交響曲」と声楽を伴う巨大な作品が続いた後、
終楽章に声楽が導入されてはいるものの規模は小さくなった
第4番「天上の生活」による過渡期を経て、
いよいよ中期の器楽三部作と言われる第5番・第6番・第7番に進んできました。

そしてこの第8番では、再び声楽を伴う作品の立ち戻ります。
しかも、一部の楽章に独唱や合唱が導入されていたこれまでのケース
とは違って、ほぼ全編にわたって声楽が扱われています。

また、全曲の構成からは従来の「楽章」という表記が消えて「部」のみとなりました。
第2番・第3番で、長大な冒頭楽章を第一部として、後続の楽章を第二部としました。
第5番では、第1・2楽章を第一部、第3楽章を第二部、
第4・5楽章を第三部とする構成を採用しましたが、
そしてこの第8番では、遂に「部」のみによる構成に至ったのです。

第一部は、マーラー流ソナタ形式(ABABABAABA)による壮大な冒頭楽章です。
第6番「悲劇的」の第1楽章・第1主題の音型=
「ラ~ラ・ド・シラ~ラ・・・」が、
第7番「夜の歌」の第1楽章・第1主題の音型=
「ミ・シ・シソ・ファ♯ミ・ラ・・・」を経て、
この第8番の第一部・第1主題では、
「ミ♭~シ♭・ラ♭~ソ・ファミ♭~ファ・シ♭・・・」と
言うようにより大胆なテーマに進化したように感じられます。
終結部がフーガの手法によって導入される等、
音楽史全体を包括するような宇宙を構築しています。
ほぼ全編にわたって声楽が導入されていますが、
器楽的楽章としても充分に有機的な素晴らしい音楽だと私は思います。

第二部は、ゲーテの<ファウスト>の終幕をテキストにした、
交響曲としては極めて異例な楽章です。
ウィーン宮廷歌劇場(現・国立歌劇場)総監督と地位にまで
上り詰めて、オペラ指揮者としての名声を確立した
指揮者としてのマーラーでしたが、
作曲家としてはオペラを作曲しませんでした。
そういった状況の中にあって、この楽章は、
マーラーの最もオペラ的な作品と考えられます。

しかし、第一部で提示・展開されたテーマ・素材を駆使して、
一時間近い音楽を紡ぎ出して行く様は、器楽的作品として聴いても実に圧巻です。
最後のコーダで、第一部冒頭のテーマが更に発展して、
「ミ♭~シ♭~ド~・ミ♭~シ♭~ド~・・・」と、
7度音程が9度音程に拡大して全曲を閉じるところは、
何度聴いても鳥肌が立ってきます。

この第8番はマーラーがオペラ指揮者でありながら歌劇を書かなかった中で、
最もオペラ的な作品とも言われます。
しかし、声楽を導入しながらもマーラー流ソナタ形式をほぼ崩さずに適用した
第一部の構成の見事さに、紛れもない交響曲としての風格が備わっていると、
私は考えています。

LPレコード時代の私の愛聴盤がこのバーンスタイン盤です。
レナード・バーンスタイン指揮/ロンドン交響楽団
CBS/SONY / SOCL 121-2 (LP)

ニューヨーク・フィルと「マーラー全集」を録音していた
NYP常任指揮者時代のバーンスタインでしたが、
この第8番のみ、諸般の事情からロンドン交響楽団と
録音していることが、異例と言えば異例というディスクです。
ジャケットの写真は、録音会場となったロンドンの
ロイヤル・アルバート・ホールの演奏中の模様です。

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