二重協奏曲的大変奏曲の誕生〜R・シュトラウス/交響詩「ドン・キホーテ」 | 松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

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2014年は、大作曲家=リヒャルト・シュトラウスの
生誕150年にあたりました。
グスタフ・マーラーと並んで、
ドイツ後期ロマン派を代表する大作曲家です。

シュトラウスは、若い頃の試行錯誤や葛藤の末、
多楽章構成の交響曲への未練を断ち切って、
交響詩を中心に発表する道を選び、
やがて標題交響曲も書くようになった後、
後半生はオペラの作曲の道を邁進しました。

###交響詩作品リスト###
交響詩『ドン・ファン』(1888年)
交響詩『マクベス』(1890年/92年改訂)
交響詩『死と変容』(1889年)
交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』
                     (1895年)
交響詩『ツァラトゥストラはこう語った』(1896年)
交響詩『ドン・キホーテ』(1897年)
交響詩『英雄の生涯』(1898年)

###標題交響曲作品リスト###
<家庭交響曲(Sinfonia domestica)> (1903年)
<アルプス交響曲(Eine Alpensinfonie)> (1915年)

先週から、これらの作品について、
私の想い出等も絡めながら
簡単な解説をシリーズとしてアップしています。
今日は、交響詩『ドン・キホーテ』のご紹介です。
私の仕事場のライブラリーには、このCDが在ります。

R.シュトラウス/交響詩「ドン・キホーテ」
 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
チェロ/アントニオ・メネセス 
ヴィオラ/ウォルフラム・クリスト
ベルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
グラモフォン / UCCG-4746
カラヤン盤「ドン・キホーテ」

##R.シュトラウス/交響詩『ドン・キホーテ』作品35##
~大管弦楽のための騎士的な性格の主題による幻想的変奏曲~

セルバンテスのよる同名の著作からインスピレーションを得て
作曲した作品で、この作曲家の交響詩の中でも
最もストーリー性の高い曲となっています。
ソナタ形式を応用した構成を採ることが多かったシュトラウス
ですが、この作品では自由な変奏曲形式を採用しています。

♪序奏「悲しげな姿の騎士=ドン・キホーテ
            ~サンチョ・パンサの主題」
♪第1変奏「風車の冒険」
♪第2変奏「羊の群れに対する冒険」
♪第3変奏「ドン・キホーテとサンチョ・パンサの対話」
♪第4変奏「行列に対する冒険」
♪第5変奏「ドン・キホーテの夜の想い出」
♪第6変奏「ドルンネア」
♪第7変奏「ドン・キホーテの宮中騎行」
♪第8変奏「船出」
♪第9変奏「修道僧に対する攻撃」
♪第10変奏「一騎士と帰郷」
♪終曲「ドン・キホーテの死」

このような構成と部分タイトルを持っています。
独奏チェロと独奏ヴィオラが活躍する
実質的には二重協奏曲に相当する楽器編成です。
前者がドン・キホーテを象徴し、
後者がサンチョ/パンサを象徴しています。
各場面で、この作曲家らしい伸びやかな楽想が、
大らかなオーケストレーションに乗せて響き渡ります。

演奏時間は、「ツァラトゥストラ」を凌駕して
約40分に拡大しています。
金管楽器のフラッター奏法で羊の群れを表現したり、
当時としてはかなり前衛的な手法も取り入れています。
壮大な感興とユーモアと哀愁が交錯する音楽です。

全体を見渡すと、原作の内容とも関連して、
「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を
拡大したような作品にも感じられます。

YouTube /
R・シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」Op35:
カラヤン/ベルリンフィル