ベートーヴェン《交響曲第2番ニ長調》讚! | 松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

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2020年は、楽聖=ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンの

生誕250年にあたりました。

小学校高学年の頃からオーケストラを聴くことに強い興味を持つようになった私に

とって、ベートーヴェンの交響曲の交響曲全曲を聴くことが先ず最初の目標でした。

カラヤン指揮:ベルリン・フィルの来日演奏会で、ベートーヴェンの田園と第5

というプログラムを聴いた時の情景は、まだ脳裏に鮮明に残っています。

そして、昨日から9曲の交響曲を番号順に探訪しています。

 

写真:第1番&第2番 ホグウッド指揮&アカデミー・オブ・エンシェント盤(CD)

 

2回目の今日は《交響曲第2番ニ長調》をご案内します。上の写真は

私の愛聴盤、ホグウッド指揮 / アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック

による演奏による、第1番と第2番のカップリングです。

 

###ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン###
        (1770-1827)
     交響曲第2番 ニ長調 作品36

初演:1803年4月5日
   アン・デア・ウィーン劇場

交響曲第2番は、ピアノ協奏曲第3番などと共に初演されました。

この頃のベートーヴェンは、聴覚の異常に悩まされ始めて、

精神的に大きな苦難を抱えていました。

1802年10月には有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」が書かれました。

しかし、この曲からはそのような苦悩の跡を感じることはほとんどありません。

この苦悩・苦難を克服した成果は、次の交響曲第3番「英雄」に見られる、

驚異的な飛躍に結実していきます。

 

この第2番の全曲の演奏時間は約35分の規模ですから、第1番と同様に

ハイドンやモーツァルトの交響曲の規模の延長上と論じることもできます。

しかし、随所に第3番「英雄」以降の飛躍に向けての萌芽を見出すことができます。


第1楽章は、冒頭から序奏の規模が大きくなったことが伺えます。

後年の交響曲第7番の第1楽章の序章を予感させてくれます。

後続の様々な主題との動機関連が、かなり綿密に考えられていることも見出せます。

ゆったりとした三拍子から早いテンポの4拍子に変わるところから、

ソナタ形式主部に突入します。

第一主題は(移動ド読み:ドーードシドレドーーミレミファソ・ソ・ミ・ミ・ド~)

と始まります。どことなく第1番・第1楽章・第一主題との近似性も感じられます。

順次進行主体の第一主題と跳躍進行主体の第二主題が提示される提示部から

定型通りの繰り返しを経て、ハイドンやモーツァルトよりもやや長い展開部を経て

再現部に突入して、更に楽章を締めくくる部分の終結部がかなり拡大した構成を示す

ソナタ形式の扱いによって楽章を閉じます。

終結部を第二展開部と捉えられるような

(私が呼ぶところのベートーヴェン流四部構成ソナタ形式)が、

いよいよ確立してきたと見ることができます。

 

第2楽章は、イ長調で基本的に穏やかな音楽です。

第1番の第2楽章と同様に、ソナタ形式の構成に乗せた緩徐楽章となっています。

各主題に第一楽章の各主題との近似性を見出すことができます。

第3番以降の第2楽章(緩徐楽章)はソナタ形式を離れて

独自の構成を採っていきますから、この第2番までが、

シンフォニスト(交響曲作曲家)としてのベートーヴェンの

初期と考えれよさそうです。

 

第3楽章はニ長調で、スケルツォと明記されています。

早めのテンポで全曲の中でスパイスのような存在感があります。

スケルツォの主題は、第1楽章の序奏の冒頭から提示される

順次進行の三つ並びの音形(動機)が活用されています。

古典組曲の時代のトリオ付メヌエットの定型通りの構成になっていますが、

独特の強弱の交錯などにベートーヴェンの個性が色濃く反映されています。

トリオ(中間部)では、管楽器群と弦楽器群が交替する

軽妙なオーケストレーションを聴くことができます。

 

第4楽章もニ長調で、ソナタ形式による終楽章です。

第一主題・推移楽想・第二主題などを分析的に眺めてみると、

これまでの楽章に登場した主題や動機をの関連性を見出すことができます。

展開部の前半で第一主題が原形通りに登場することから、

ロンド形式にも近い側面を持つこの楽章は、ロンドソナタ形式と捉えられます。

再現部の後に、大きな終止を含む幾分大振りな終結部が置かれています。

この終結部も第一主題から開始されますから、

ロンドソナタ形式として納得できる構成と言えるでしょう。

この二度にわたるフェルマータによる停止をも盛り込んだ

大規模な終結部が、第4楽章のみならず全曲に対する終結部として作用して、

全4楽章の交響曲が幕を閉じます。

ベートーヴェン流の四部構成ソナタ形式(提示部・展開部・再現部・終結部)が、

いよいよ完成の域に達してきたことが伺われます。

 

写真:モントゥ―指揮&北ドイツ放送交響楽団盤(LP)

 

明日は、第3番を探訪します。

いよいよベートーヴェンの個性と独創性が炸裂していきます。