WHOによると、2009年6月3日午前6時00分(世界標準時)現在、確定症例は世界66カ国から19,273例が報告されており、117例の死亡が報告されている(致死率:0.6%)。地域内伝播(疫学的リンクの切れた人-人感染)に関しては、これまでメキシコ、米国において確認されているが、WHOによる6月2日のプレスカンファレンス資料によると、英国、スペイン、日本、チリ、他にオーストラリアなどは、“more established community types of transmission(より確立したコミュニティータイプの伝播)”が発生している国に含まれるとしている。各国におけるサーベイランスの状況、軽症例における受診行動やサーベイランスにおける把握状況、あるいは対策の方針は国によって異なるため、その国内地域ごとの状況を正確に評価するのは容易ではない。
日本国内では、6月4日午前11時の時点で、401例の確定例が報告されている(厚生労働省確認分、他に成田空港検疫所確認分が8例ある)が、報告数は時間と共に変化している。発生が確認されている都府県は、16に上り、それぞれの地域によって感染伝播の状況は異なる。また、現在の日本の交通状況を考えれば、早晩他の地域に伝播していく可能性は高い。現在、国内では、一例の確定例もでていない地域、渡航者からの散発例の出ている地域、地域内での感染で散発例、あるいは集団発生のでている地域、より広範な感染伝播が疑われる地域が存在する。また、現在国内では依然として季節性インフルエンザの流行が、地域によって種々のレベルでみられている。これまでに100例以上の患者発生が報告された地域として、神戸市および大阪府があるが、厚生労働省より両自治体に派遣され疫学調査に協力した国立感染症研究所感染症情報センター/FETPチームより、暫定的な報告として以下のような情報が得られている。なお、これらの結果は今後の情報の集積・解析の中で修正されていく可能性があることに注意されたい。
神戸市(一部兵庫県を含む):2009年5月1日~5月28日の兵庫県における新型インフルエンザ確定症例154例のうち、5月16日~19日の間の神戸市内初期入院例43例に対して臨床像、感染経路等に関する聞き取り調査を実施した。この43例のうち36例については疫学的リンクを追うことが可能であったが、16~17日に大半が報告された7例については、感染源が明らかではなく、孤発例であると考えられた。医学的な理由から入院対象が殆どいなくなった18日以降は、国立感染症研究所チームによる個別の聞き取りが十分ではない。全体として、兵庫県における新型インフルエンザ確定症例(154例)の流行(この場合は発症)は、5月16日付近をピークに減少傾向となり、一旦23, 24日には発生が見られなくなった。25日以降に数例が報告されたが、疫学的リンクが追える症例と考えられている。神戸市におけるPCR検査結果における陽性割合の推移においても、15~17歳を中心に当初は70~80%程度であったが、5月19日頃を境として顕著に減少傾向が見られた。この現象は、神戸市内における新型インフルエンザ感染状況の低下を示唆するものである。すなわち、今回の神戸市の事例については、高校生を中心に発生したものの、一部孤発例も見られており、コミュニティーでの伝播は発生したが限定的であるという印象であった。今回の調査結果からは、神戸市における集団発生は終息傾向にあると考えられるが、引き続き注意深い監視と対応が必要である。
大阪府:2009年5月1日~5月26日の新型インフルエンザ確定症例115例のうち、5月17日~19日の間の84例に対して臨床像、感染経路等に関する聞き取り調査を実施した。大阪府における新型インフルエンザ確定症例(84例のうち発症日が確認された81例)の流行(この場合は発症)は、5月17 日付近をピークに減少傾向となった。高校生を中心とするA学園関連の確定症例(5月17日まで)の居住地の分布としては、地理的には主に北摂地域に集中している。B小学校での確定患者について、生徒間に何らかのつながりが見られている。ただし、A学園とB小学校の確定症例との関連性は不明であった。今回の調査結果からは、一部に孤発例が見られるものの、主にA学園とB小学校を中心とした集団発生と考えられ、終息傾向にあると考えられるが、引き続き注意深い監視と対応が必要である。
6月4日午前9時現在まで、国内においては死亡例および気管内挿管による人工呼吸器管理などを要する重症例は報告されていない。また、兵庫県(197例)および大阪府(159例)以外にも、32例が公式に報告されている。これらに加えメディア情報を含む41例について情報を追跡しているが、41例中感染機会について外国との関連が示唆された例が21例あり、うち18例がハワイを含む北米大陸との関連について言及されている。国内で患者が発生しているわが国の状況においては、各症例の感染地域については、慎重にアセスメントを実施することが必要である。また、兵庫県あるいは大阪府以外にも、国内2次感染を起こしている可能性が高い症例が数例報告されている。今後注意すべきは、学生などで集団発生として検出される例あるいは重症例の発生、および疫学的リンクの追えない患者の発生であり、柔軟かつ効果的なサーベイランスおよび検査体制の確立が急務である。
○流行状況
2009年初頭より、ブラジルで黄熱ウイルスの感染地域が拡大している。最近2つの州(Rio Grande do Sul と São Paolo)が、州の境界において、新たな黄熱の人への感染の危険性の拡大が確認されている地域と指定された。これは、国の南部でウイルスの活動性が高まっていることを表している。
2008年12月中旬以降、ブラジルの南端にあるリオ・グランデ・ド・スル(Rio Grande do Sul)州では、18名の黄熱患者の確認が報告された。そのうち7名が死亡した。これは1966年以降、初めてリオ・グランデ・ド・スル州で人の黄熱患者が報告されたことになる。これをうけて、ブラジル保健省はこの州の多くの自治体を黄熱リスク地域に指定しており、現在では州都のポルト・アレグレ(Porto Alegre)も含まれている。黄熱の予防接種を推奨するリオ・グランデ・ド・スル州の自治体のリストは、 http://portal.saude.gov.br/portal/arquivos/pdf/Boletim_FARS_280409.pdf
(ポルトガル語)を参照。
2009年2月以降、ブラジル南部のサンパウロ(São Paolo)州では9名の死亡を含む26名の黄熱患者が報告された。これらの患者は、すでに危険地域と報告されている地域外であるItatinga、 Sarutaiá、Buri、Pirajuの各自治体で発生している。これらの症例はサンパウロ州での黄熱感染の拡大を表している。サンパウロ州の黄熱リスクの拡大地域の地図と新たな予防接種推奨自治体のリストは、http://portal.saude.gov.br/portal/arquivos/pdf/boletim_fasp_26052009.pdf
(ポルトガル語)を参照。