娘が感情を爆発させた日。
私は30分以上責められ続けた。
「ママのせいだ」「ひどい」「どうしてそんなことするの」と泣きながら言葉を投げられ、私は何度も何度も謝った。
心を込めて謝っても、誠意を尽くしても、それでも止まらなかった。
少し静かになったと思ったら、またすすり泣きが始まり、そこからまた責めが繰り返される。
その時だった。心の中で、無音のスイッチが入った。
ああ、私は何をしても許されないんだ。
どれだけ謝っても無駄なんだ。
ただ感情を殺して、ただ謝り続ける以外に生き残る方法はないんだ。
その瞬間、私は今ここにいながら、
かつての母親との記憶に引き戻されていた。
どれだけ謝っても泣いても許してもらえなかった、あの部屋、あの声、あの時間に。
最近、私ははっきりと気づいた。
「あ、今、トリガーが入った」
そう感じた瞬間の体の反応、心のざわつき、頭の中の混乱。
その流れが、あまりにも明確に、自分の中で見えた。
それはまるで、無音のスイッチが突然パチンと入るような感覚。
心の奥深くに埋め込まれた記憶の回路が、一瞬で起動する。
トリガーが入る瞬間。
誰かに責められたとき。
無視されたとき。
理不尽にコントロールされそうになったとき。
「わかってもらえない」と感じたとき。
その瞬間、私はもう“今”にいない。
過去の自分――小さかった頃、声を出すことすら許されなかった私に一気に引き戻される。
その後に起こる反応。
呼吸が浅くなる。
胸が詰まるような感覚。
思考がぐるぐる暴走する。
相手に対して激しく怒るか、自分を責めるか、どちらかに極端に振れる。
「もう全部壊したい」「私はダメな人間だ」という両極端な衝動が交互に襲ってくる。
時に身体の感覚がフリーズしたり、記憶が飛ぶような感じになる。
これが「ディスレギュレーション(情動の崩壊)」の始まり。
なぜCPTSDを持つ人が“大人になっても生きづらい”のか。
それは、単に「つらい過去がある」からじゃない。
その過去が、“現在進行形で再現されてしまう”からだ。
たった一言。
たった一つの無視。
たった一つの理不尽な態度。
それが、記憶のトラップを踏み抜き、現在と過去が溶け合ってしまう。
本人も「今こんなに反応してるの、おかしいかな?」って自分を責める。
でもそれは、「今」に反応しているんじゃなくて、
「過去と今の境界線」が壊れてしまう病なのだ。
だけど、見えるようになってきた。
私は今、それを“自覚”できるようになってきた。
「あ、また同じパターンだ」
「これは昔の痛みが、今の出来事に重なってるだけ」
そう思えるようになっただけで、
トリガーに巻き込まれすぎずにいられる時間が少しずつ増えてきた。
「生きづらい」の正体は、過去の記憶が勝手に“今”を支配してしまうこと。
だけど、その構造が見えてきたとき、
私はようやく、“今の私”に戻ってくることができる。
Sofia