幾太郎の医学部受験指導簿⑥〜指導員の価値は合格実績では決まらない〜 | 中学入試と医学部入試の道の駅

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小さな子供が健気に全力で取り組む中学入試。将来を掴み取るために必死で闘う医学部入試。予備校で数学を教える私が全力で応援するブログです。

幾太郎が医学部受験指導を始めて18年が経過して、医学部に進学した教え子は116人になりました。

いろいろな生徒がいました。

読者の方にいろいろとご参考にしていただけるように、プライバシーの観点から若干フェイクもいれながら、特集していきたいと思います。


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その生徒は東海高校のA群の生徒。高校二年生のときにはB群だったが、三年生でA群に上がったということ。

高校一年生のときには部活バリバリで、勉強が疎かだったので、数Ⅲは出来るが数Ⅰは知らないことも多いと言っていた。


高三初めから家庭教師を始めたのだが、顔合わせの時から入試問題をやらせてみて、入試がどんなものなのかをイメージしてもらってから指導を開始した。


本当によく出来る生徒の典型例であった。数学は苦手で英語が得意と話していたのだけど。確かに数学の成績は他科目と比較して良くないのだけど。

それでも圧倒的に切れる。私の家庭教師としての指導は、勉強を教えるというよりも、受験に向けた作戦会議をしている感じ。


しかし面白いことに、超基本的な解法や公式を知らないこともあるんだよね。だから指導をしながら、私も毎回驚いていた。

知らなくても圧倒的な才能でカバーしてしまうのだよね。計算力もあるので、公式を知らなくても定義から掘り起こしてしまう。


志望は、名古屋大学医学部だった。私は言い続けた。「センターは怖いよ」


東海高校の生徒は、得てして共通テストを甘く見ていることが多いのだけど、それが原因で自滅することも多い。勉強を教えることがメインではなく「センターは怖いよ」と囁やき続けることが、私の一番の役割だったりする。


だから、センターは92%を取ることが出来た。

これで名大医学部の入試を受けることが出来ると思ったのだが、ここでとんでもないアクシデントが発生する。

本人が"阪大医学部に出願する"と言うのだよね。お母様から電話連絡でそれを知った私は、思わず笑ったね。東海生らしい無謀さ。

もちろん、お母様は"止めてほしい"と言ったけれど、東海の子がそう決意したのだから、それは簡単には覆せないし、下手に翻意させても後々恨まれるだろうし。

まあ、大医のセンター利用に出願していたから、最悪行き場を失うこともないと思っていた。


私は最後の家庭教師で"頑張ってやって来い"

その後、入試まで河合塾大阪校に通うことになったので会っていない。


入試結果だが、阪大医学部には不合格だった。それはそうだよ。数学1科目だけ考えても、阪大と名大は全然傾向が異なる。一年間名大だけをイメージして指導してきたのだから、簡単に阪大に宗旨変更は難しい。

しかし、名古屋大学医学部後期に合格した。センターのスコアではギリギリだったが何とか運良く滑り込んだようだ。


もう彼は研修医になっている。


こういうときには、私は東海高校出身で良かったと思うのだよね。だからこそ優秀な生徒を優先的に紹介してもらって、指導員としての合格実績という箔を付けてもらえる。


実際のところ、この家庭教師指導は、普段の仕事よりもだいぶ楽なやつ。こちらがするべきことも明らかで、こちらがしたいことは簡単に教えることができる。楽というより楽しいやつ。ストレスフリーな仕事。


でも、本当の私達の仕事は、そうではないことが大半。本当の私達の価値は、どれだけ不可能なところから可能性を生むのかというところ。

医学部の門の前で手招きする人ではなく、生徒と一緒に肩まで泥沼に漬かり、一緒にもがいて這い上がっていくことが私達の仕事です。


うちの予備校でも講師を募集しているので、私達と同じく泥臭さをウリにする先生方のご応募をお待ちしています。幾太郎が採用担当なので是非ご連絡ください。


いくた