幾太郎の医学部受験指導簿④ ~偏差値では測れない合格力~ | 中学入試と医学部入試の道の駅

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小さな子供が健気に全力で取り組む中学入試。将来を掴み取るために必死で闘う医学部入試。予備校で数学を教える私が全力で応援するブログです。

幾太郎が医学部受験指導を始めて18年が経過して、医学部に進学した教え子は116人になりました。

いろいろな生徒がいました。

読者の方にいろいろとご参考にしていただけるように、プライバシーの観点から若干フェイクもいれながら、特集していきたいと思います。

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進学校の中学三年生の生徒の家庭教師を受け持つことになった。

その生徒はかなりIQは高いのであろう。しかし、やる気は乏しい生徒であった。指導当初から難しい子だったな。

授業中の理解力は高い。どんどん問題も解き進められる。しかし宿題を出してもやってこない。だから次回には殆ど全て忘れ去っている。

週に2時間指導を2回行っていた。中学生でそんなにたくさんの指導時間をもらっていることはほとんどなかったので、私もいろいろと策を考えたのだが、悉くうまくいかなかったことを記憶している。

 

そして、二年間やって全然成績を上げることはできず、私は去ることになった。

 

次に彼に会ったとき、彼はもう三浪になっていた。そして、偏差値は70に到達していた。もう偏差値としては位人臣を極める状態。

三浪の一年間は、私が強化担当&担任として受け持つことになった。

偏差値は高い。しかし、学習の様子は本当に甘いのだよね。雑というか、自分の興味のない分野の学習は全くしない。

それでも偏差値は70は常にキープしている。

 

よく考えてみるとその理由も分からなくもない。偏差値70といっても何回目の模試だろう。中学受験の模試は、一生に一回しか同じ模試は受けない。しかし、三浪ということはもう同じ模試を四回目ということだ。模試慣れもしてしまうことであろう。なるべく労力をかけないことをポリシーとする彼が、模試の成績をターゲットにするのであれば、何とかできてしまうものだよね。

"英語なんて本文を読まなくても、選択肢だけ読めばわかる"

彼はそう言っていた。

 

そして、彼の出願前の最終面談は、本当に荒れた。荒れに荒れまくった。担当の先生方から、不安視する声が続出して、親御様も「偏差値は足りているのに・・・」という気持ちであったのかもしれない。

 

彼の受験結果は、やっぱり大惨敗となった。本当に一次合格すら全く取れなかった。そして、彼は去っていった。

 

こんな結果となってしまったのではあるが、お母さまは私を信頼してくれていたのか、五つ離れた弟の家庭教師を私が担当することになった。彼は兄の通う進学校に入学することができず、偏差値の劣る私立一貫校に通っていた。この時弟が高校3年生、兄は五浪になっている。

お母様は兄のことがあるので厳しい受験を想定していたのであろうが、弟は偏差値55にも達していないまま医学部の推薦入試で合格する。

そして兄は五浪目にも合格出来なかったことで、医学部を諦め、他学部に進学することになる。

 

何がダメだったか、何が良かったか、私も様々に振り返った入試ではあったが。

偏差値が低ければ抜本的な改善も考えていくところではあるが、偏差値が高いと現況を進めていくしかない。私達も現状が崩れる可能性もあるので、積極的な指導が難しい。

 

この兄弟は、既に卒業して、それぞれの世界で生きている。


いくた