私と南女との戦いは、艱難辛苦の歴史であった。
最初に南女に挑んだときのこと。Σの生徒で品行方正な優等生タイプの生徒であった。真面目にことをこなせるし、標準よりはかなり高い学力もある。手堅くやれる生徒であった。
しかし、結果はダメだった。その生徒は愛知淑徳に進学し、英語も数学もクラストップで、学級委員もやるような生徒になったのだが。そんな素質があっても足りない。
そこから何度か敗れた。
またあるときのこと。その生徒もΣの生徒であったが、上の生徒とは性格は正反対。破天荒な感覚派の子で、宿題も気が向けばやるような生徒。しかし、この生徒は合格だった。というよりも、合格する気しかしなかった。本人もお母さんも私も。学習態度や成績やそういったものではなく。
そのときに、南女は養殖魚では難しいということを感じた。完全な天然魚しかないのであろう。
私の戦績はこの生徒を入れて2勝4敗。優秀な生徒を預けてもらっても、勝たせることができなかったんだよね。
最近の入試問題をみても感じる。
難しくはない。算数も国語も難しいとは思わないんだけど。国語なんて読んでいるうちに、ユーミンの歌詞についての解釈を聞かれているような気持ちになる。
難しいのであれば、私達は難しさに対処できる。
難しくはないから、私達の対処が及ばないんだよね。
いくた
南女の国語を読んでいたら、私の心の中にユーミンの"翳りゆく部屋"がこだまする。
キリスト教の学校だからパイプオルガンを聞くこともあるだろうか。南女の子ならば"翳りゆく"も読めるだろうな。
そして・・・"翳りゆく"の示す意味すら記述出来そうな気がして。
そんな生徒がいるのが南女。