北へ、さらに北へ | フィラデルフィア ICM 便り

フィラデルフィア ICM 便り

ソーシャルワーカーの見たアメリカ底辺事情

写真の建物はRidge Centerと呼ばれていた市の男性用シェルターです。


3階建てで、各階ごとに違うホームレス向けの短期シェルタープログラムが複雑に同居していました。大元締めは市なのですが、独立したエージェンシーも市の管理の下でホームレスサポートのプログラムを展開してました。


ここは市全体の男性用シェルターのオペレーションセンターでもあり、シェルターベッドを取りたい人はここに来て登録を済ませなければいけない仕組。


しょっちゅう訪れましたよ。

クライアントのベッド取りやこのビル内のプログラムに住んでるクライアントを訪れたり、オペレーションセンターの職員に探しているクライアントの記録がないか聞き込みに来たり。


インターン時代には、ここでアウトリーチ(そこに来ているホームレスを見て周り、メンタルイルネスがある様子の人にアプローチしてサポートを試みる)やホームレスの人が福祉関係や健康関係などの情報や助けを求めてくる時は、それに対応したりもしてました。


ボロくて汚い建物でねぇ。

各階の大部屋(別に廊下から壁できっちり仕切られてもいない、でっかいロフトがパーティションで仕切られてる感じ)は簡易ベッドがずらーっと並んで、男達がワラワラと所作なく時間を潰していたり、AAミーティング(今では御存知の人も多いと思いますが、スピリチュアリティを軸にした断酒会です。AAの基本の12ステップは聞いた事あるのでは?今日では世界中に広がっています。)が開かれていたり。


ハッキリ言って、安全で過ごしやすい環境からは程遠いもんです。


暴力沙汰や麻薬問題や盗みなどはよく聞く話で、それゆえ、シェルターを拒否して路上に留まる人も多いのは事実です。クライアントからも目が覚めたら簡易ベッドで寝ている自分の上に放尿されてたなど、こっちの気分が悪くなるような話も聞きました。


一言、混沌のため池です。カエル


それがRidge Centerでした。


センターは昨年、閉鎖されてしまいました。

市の資金繰りが原因です。ホームレス達自身がセンターの存続を訴えて声を上げていましたが、無念に終わりました。


市のシェルターはRidgeだけでなく他にも幾つかあるのですが、数百人からのベッド数を抱えていたシェルターがなくなるのは、その数百人が路上に放り出されるということなので、一大事だったのです。


このRidgeの問題があがった頃にホームレス新聞が登場しました。


ボランティアやホームレスケアに力を入れているエージェンシーが作ったもので、黄色いチョッキを着たホームレスやボランティアが路上で一部1ドルで売っています。売り上げはホームレス支援ということで皆、必死です。


Ridgeが閉まる頃はかなりの数の人たちが各地で新聞を買ってくれと訴えていました。今でも、人通りの多いスーパーやビジネス街、駅の付近などで一日中立って新聞を売り続けているおじさん達を見ます。買ってる人はほとんど見ません。


先週、Ridge Centerを通り過ぎて、その閉じた扉を見た時は「ひとつの時代が終わったな」という感でした。


このRidgeの辺りは私がこの商売を始めて以来ずっと、ダウンタウンのシビライズされた区画から混沌の地域への入り口の感だったのですが、変わり始めています。


建設ラッシュがこの辺りにもじわじわと伸び始めていて、景色を変えつつあります。ここはダウンタウンから北側ですが、更に北に15分くらい上がるとTemple Universityの広大なキャンパスと学生の群れにあたります。Temple辺りも10年前は鬱な環境だったのに、今では学生街。その北側はTemple Hospitalのこれまた広大な敷地。


市のホームレスシェルターは更にずっと北の方になってます。むろん、あまりいただけない地域。フィラが進化するのはいいことだけど、忘れられて追いやられる人々もその影にあるわけで、素直には喜べないところです。


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このドアを何度くぐったことか!