ガルポスへ向かう船が襲われてしまった。
 
 
「ベル…、なんでこんなこと、」
 
 
「…ベルもチトセと一緒。ただ、シリルを助けたいだけだよ」
 
 
そう言った彼女はまっすぐとコンウェイを見つめていた。
 
 
「…わかったよ」
 
 
沈黙の後、ルカが頷き、ぼく達は彼女達の船に乗せられた。
 
 
…までは、まぁ、いい。
 
 
「ねぇ、なんでシリルもこっち側なの?」
 
 
「やめてルカ、ぼくにそんなこと聞かないで」
 
 
「まぁ、オマエぱっとみ男だしな」
 
 
牢には男女分けられて入れられたのだが、ぼくはルカ達の方に仕分けられたようだ。
 
 
「あれ?キュキュ?」
 
 
ふと顔を上げると牢の外を女性陣が歩いている。
 
 
キュキュのちょっとした特技で無事に出られたらしいのだが、
 
 
スパーダとキュキュが此方の鍵を開ける開けないで揉めているのをコンウェイは楽しそうに眺めている。
 
 
結局はスパーダが潔く彼女に「お願い」をして開けてもらったけど。
 
 
「…、」
 
 
「船、やっぱり気になる?」
 
 
「…っ!き、気になるけど、」
 
 
キュキュは船が気になるらしく先ほど色々見ていたのをコンウェイに咎められたせいか少し悲しそうにした。
 
 
「…今度、一緒に見に行こう。どうせならゆっくりじっくり見たいでしょ」
 
 
「シリル!ほんとか?キュキュうれしい!」
 
 
「うん、うれしいのは分かったけど、シリルが潰れそうだから離れなよ」
 
 
飛び付いて喜んだキュキュを支えきれずふらつくぼくを後ろから支えるコンウェイ。
 
 
「…コンウェイ邪魔。シリル今キュキュと話してる」
 
「キミは状況をまだ理解してないのかな?」
 
 
睨み合う二人の間に挟まれていたぼくを誰かが引っ張りだした。
 
 
「シリルが二人の間で潰れるところでしたよ」
 
 
アンジュが二人を引き剥がした。
 
 
彼女が助けてくれたらしい。
 
 
「船を見に行くにしても早くここから脱出しないと、ね?キュキュ」
 
 
「わかた!キュキュ、シリルと船見に行くから早く脱出!」
 
 
張り切る彼女の後ろ姿に残されたぼくたち三人は困ったように笑った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
約束しようか?
 
 
 
 
 
 
死?
 
 
それはまるで、
 
 
自分の身体が少しずつ冷えて、
 
 
暗闇の底へ溶けていく様な感覚だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「クラウ…、」
 
 
もう瞼を開く力もなく、
 
 
貴方の声も、もうすぐ聞こえなくなるだろう。
 
 
冷たいわたしの身体を抱き締める、
 
 
貴方の指先の熱さえも、きっと感じなくなってしまうのだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
(…もう少し、一緒に居たかったなぁ、)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…酷い夢だ、」
 
 
自分が死ぬ夢を見るなんて。
 
 
ここ最近、同じ夢ばかりみる。
 
 
みる、と言っても瞼が閉じられているから、視界は暗いし、
 
 
聞こえる声だって小さい。
 
 
唯一、冷えていく身体を支える腕の熱だけが鮮明だった。
 
 
自分が死ぬと言うのに、酷く淡々としていて、
 
 
恐怖の欠片も感じなかった。
 
 
死にたいして、何も感じていない。
 
 
そんな中で、考えたことが、自分を抱き締める、姿も見えない“彼”の傍にもう少しだけ居たかったなんていう、小さな願いだ。
 
 
 
 
「…あれは、誰なんだろう」
 
 
酷い夢だ。
 
 
でも、あれはきっと、
 
 
 
 
過去のぼくなんだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その願いの行方。
 
 
 
 
 
 
独りは寒い。
 
独りは暗い。
 
寂しくて、辛くて、涙が止まらなくて、その雫が更に身体を冷やすように感じる。
 
 
「ベル、…まだ泣いているの?」
 
 
「チトセ…」
 
 
肩にそっと乗せられた手に振り向けば、チトセは心配そうにこちらを見つめていた。
 
 
「だって、だってシリルが…!」
 
 
ベル、迎えに行ったのに、
 
 
シリルはベルとは来てくれなかった。
 
 
そう思うとまた涙が溢れて、
 
 
「ベル、大丈夫、大丈夫よ、きっと彼女もいつか分かってくれるわ」
 
 
そう言って肩を抱きしめてくれたチトセの腕は震えていて、
 
 
ああ、ベル達は一人ぼっち同士なんだ、とチトセの腕を抱きしめ返した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
迷子はどこへ帰ればいいの?
帰る場所が取られてしまったベル達は、
どうすればいい?