いつものようにまた、帰り道出会った真月くん。
 
 
いつも通り、一緒に途中まで帰る。
 
 
しかし、いつもと違うのは遊馬の話が出てこないことだ。
 
 
「どうしたの?」
 
 
そわそわと落ち着き無い彼に聞いてみると、
 
 
「な、なんでもないです!」
 
 
首を横に思いきりふってそう言った。
 
 
「…くらっとするよ」
 
 
「え、」
 
 
ぼそり、と呟いたあたしに聞き返す真月くんだったが、
 
 
先ほど頭をふりすぎたせいでくらり、と身体が揺れる。
 
 
「わわぁ、」
 
 
「危ないよ」
 
 
ふらり、と車道に飛び出しそうになる彼の腕を掴む。
 
 
「ああぁ…!シリルさん!」
 
 
「ん?」
 
 
「ち、ちか…!」
 
 
ふらふらする彼を押さえつけるように、彼の腕を抱く。
 
 
…確かに近いけど。
 
 
「真月くんふらふらしてるから、」
 
 
「も、もう大丈夫ですから!」
 
 
離してください、と消えそうな声でそう言うので腕を離す。
 
 
…そうか、
 
 
「…クラスメイトに見られたら冷やかされちゃうもんね」
 
 
「え、いや、そう言うあれじゃなくて、違うんです!」
 
 
「…?なんかやっぱり今日の真月くん変だね」
 
 
あたしの言葉に彼は困ったように眉を下げたが、あたしの腕をつかんで顔を上げた。
 
 
「あの、」
 
 
「うん?」
 
 
「よ、よかれと思ってボクとデートしてください!」
 
 
「いいよ」
 
 
「え?」
 
 
「…え?」
 
 
デートに誘われた。
 
 
返事をすればいつかと同じように彼が聞き返してきた。
 
 
「あたしをデートに誘ってくれたんでしょう?」
 
 
「あ、はい」
 
 
「楽しみにしてる」
 
 
そう言って笑えば、彼も嬉しそうに笑った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
よかれがあたしにデートのお誘いです。
 
 
 
 
 
「実は遊馬くんに相談があるんです…」
 
 
よかれと思って聞いてください!
 
 
そう言って真月は俺の手をぎゅうっと握った。
 
 
「いや、聞くよ。聞くけど、真月手が砕ける」
 
 
「えっ!ご、ごめんなさい!」
 
 
いつものようにあたふたとする真月に、大丈夫、と言うと、ほっとしたようにため息をこぼした。
 
 
「で、相談ってなんだよ?」
 
 
「実は、シリルさんをデートに誘いたいんです」
 
 
「えぇ!真月くんてシリルが好きなの?」
 
 
「うわぁっ!なんだよ!小鳥!」
 
 
もじもじと悩みを打ち明けた真月とオレの間に小鳥が割って入ってきた。
 
 
「いや!そんな!そんなこと!」
 
 
「じゃあ?嫌いなの?」
 
 
「…好きです」
 
 
小鳥の言葉にさらにばたばたと騒がしくなる真月に小鳥がにっこりと笑っていった。
 
 
「素直でよろしい!…今みたいにストレートにデートしてくださいって言ってみたら?」
 
 
「ストレートに…、」
 
 
「まぁ、シリルだから遠回しに言ったって気が付かなそうだしな」
 
 
「確かに…」
 
 
うんうん、唸りながら小鳥にあれこれ相談する真月、
 
 
そして、気が付けば会話の輪から追い出されてしまったオレ。
 
 
「おーい、真月ー、オレに相談するんじゃなかったのかぁー」
 
 
「遊馬にこう言う事相談しても無駄でしょ」
 
 
…なんだよ、もー、
 
 
「…じゃあ、オレ先に帰るからな!」
 
 
「あ!待ってくださいよ遊馬くん!」
 
 
「え?ちょっと!真月くん!」
 
 
逃げるように走り出したオレを追いかける真月と、真月の後を走る小鳥。
 
 
仲間外れにされてちょっと腹がたったので、とびっきりの近道を通って帰ることにした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
よかれが恋愛相談をしたが、相談相手を間違えたようだ。
 
 
 
 
今日もいつものようにカイトとデュエルしたり、ハルトとおやつを食べたりして過ごした帰り道。
 
 
「あれ?シリルさんじゃないですか!」
 
 
奇遇ですね!
 
 
と笑って駆けよってくる彼と初めてあったのは数日前。
 
 
そして、それから毎日、「シリルさんじゃないですか!奇遇ですね!」と同じ言葉をかけられ、笑顔を向けられる。
 
 
「帰宅途中ですか?」
 
 
いつもと同じ言葉を吐いて、あたしの隣に並んで歩く彼。
 
 
「うん」
 
 
そんな彼にあたしもいつもと同じ様に頷く。
 
 
「じゃあ、途中まで一緒に帰りましょう!」
 
 
そうして、いつもの様に途中まで一緒に帰る。
 
 
帰り道、彼が今日あった(主に遊馬の)事をあたしに話す。
 
 
あたしはそれに適当に相槌をうつ。
 
 
たった数日で、日常化してしまった風景だ。
 
 
「それで、遊馬くんが…」
 
「真月くん、あたしこっち」
 
 
話しに夢中で気がつかなかった彼にあたしはもうここでお別れ、と彼の袖を引いた。
 
 
「あ、」
 
 
あたしの言葉に彼はもごもごと何かを言っていた。
 
 
「どうしたの?」
 
 
「えっと、その、」
 
 
眉尻を下げて困ったようにあたしを見つめる彼。
 
 
暫くして、ビシッと姿勢を正した彼はおどおどしながらも大きな声で、
 
 
「よ、よかれと思ってシリルさんをお家まで送ります!」
 
 
「そう。ありがとう」
 
 
「え?」
 
 
「…え?」
 
 
送ってくれるのかと思いお礼を言うと彼は不思議そうな顔をした。
 
 
思わずあたしも首をかしげる。
 
 
「…?送ってくれるんじゃないの?」
 
 
「お、送ります!」
 
 
あたしが聞き返すと彼は嬉しそうに笑ってあたしの手を引いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
よかれがあたしを送る。