「わたし、足立のこと嫌いだから」
「はぁ?」
同僚の綴はなんの前触れもなく、そう言った。
「…前から知ってたけど、綴ってホント失礼だよな」
ほんの数十分前に書類整理を手伝って欲しいと泣き付いたのは誰だよ。
「だってさぁー、足立なんてさぁー」
頬杖ついてペンを回す綴はちらり、と僕の顔を見て小さく舌打ちをした。(ホントなんなんだよこの女)
「…足立ばっかずるい」
ぶすっと不機嫌そうにそう呟いた綴。
(あぁ、そうゆう事ね…)
きっと彼女は嫌なんだろう。堂島さんの隣に居るのが僕なのが気にくわないんだろう。
だって、堂島さんは彼女の憧れで、そんなあの人の隣につくために彼女は誰よりも努力してきたのだから。
なのに、突然来た僕なんかに取られたのだ。
自分が欲しかった物を。
「…綴って結構子供っぽいよね」
珈琲も飲めないし。そう言えば、彼女は「足立の癖に生意気だなっ」と机を叩いた。
「なんで、堂島さんなんだろ…」
「え、何?独り言?キモッ」
ぼそり、と呟いた言葉に反応した彼女の額を叩いた。
「…お子様の宿題手伝うの飽きたし帰ろーかなぁ」
「ああぁー!嘘嘘っ、ごめん足立!ごめんてばー!」
ほんの少しでも、堂島さんじゃなくて僕を見て欲しいだなんて、
言えるわけないから。
「…僕も綴の事、嫌いだよ」
君が欲しいと、
心の底の僕が言った。
「だから、手伝うのやーめたっ」
「バカ足立っ、堂島さぁーん足立が苛めるー」
「あっ、馬鹿っ、堂島さん違いますってー!」
きっとこの後、二人して堂島にお説教をくらうはず(笑)