そのまま溺れてしまえばいい。
沈んで浮かんでこないで。
水天町に越してきてもうすぐ一年が立つ。
最初の頃は遊びでやっていた魂ぬけが当たり前のように起きる事や太郎と信の事とか、親父の事とか、まぁ色々あってなんか授業を受ける気分になれない。
「なんだかなぁ…」
おれだけ取り残されてる気がするのは気のせいだろうか?
一歩一歩が酷く重く感じる。下がった視線は階段を見つめるだけで前なんか見ちゃいなかったからドアに思いっきり頭をぶつけた。
「おれってホント良いとこ無しだよなぁ」
ズキズキする額を押さえて屋上に出る。
「あ、匡幸ー」
「えっ、」
呼ばれて周りを見渡すけど何処にも見当たらない。
きょろきょろするおれに笑いながら「こっちだよ」とまた声をかける。
「何処だよっ」
「だから、此処だって」
こつん、と空から飴玉が降ってくる。
「あ、やっとみた」
振り替えって見上げれば、グレーのタンクの上に座っている名波。
「そんなとこで何やってんのーつかパンツ見えてるよー」
「欲求不満な男子中学生にサービスしてあげてんの。いいから早くこっちきて」
なんでー、と聞き返すおれに名波はなんでもー、と笑っておれを急かす。
「つか、授業は?」
「たるいからサボりっ」
差し出された飴玉を口に放り込む。
…あ、ソーダだ。
「へたれな匡幸がサボりめずらしーじゃん」
「へたれとか余計だから。俺だって思春期真っ盛りなんだから悩んだりするんだって」
ころころと飴玉を転がしながら遠くを見る。町の端まで見えて、ああ、前は端なんてなかったな、なんて突然思い出したり。
「ねぇねぇ、悩んだりってえっちぃ事とか?」
「…そう言う事さらりと言うなよな」
「えー、匡幸照れてるの?へたれなのに?」
「へたれは関係ないし、そもそも、へたれじゃねーし」
うっそだー。
へらへらと笑う名波。
自分よりもずっと高くて澄んだ声。
その音を言葉にする唇に少し、ほんの少し触ってみたいと思った。
頭の中がぐわんぐわんと揺れてる。
揺れるまま、名波のそれに自分のそれを押し付けた。
「…名波?」
離れた唇。名波は真っ直ぐおれを見ている。
「思春期真っ盛りだね」
一言そう言って赤い頬っぺたも気にせずにへらと笑う名波の熱がおれにも移った気がした。
思考の海に二人で沈もうか。
二人の思いが混ざりあって抜け出す気にすらきっとなれないんだろうね。
匡幸好きすぎてつらい