僕には僕によく似た兄がいた。
僕より二歳上の兄は少し子供っぽくて、勉強もスポーツも人より出来て、誰からも好かれる、そんな人だった。
僕と兄は双子のように似ていた、だからこそ、兄と比べられることがよくあった。
同じように勉強が出来ても、スポーツが出来ても、話し方だってあまり変わりない。
ただひとつ、違い。
それは、兄は大変な嘘つきで、僕は酷い正直だってことだ。
にこにこ、と友人と話す兄の笑顔が気持ち悪いと感じ出したのはいつからだったか。
自分に向けられるものと同じ筈なのに、その中身はひどくどろどろしてるように見えた。
「あ、緑汰ー!ノート貸してー!」
廊下の窓から兄を見下ろしていた僕の背中に誰かが抱きつく。
これも、よくあること。
「…ロクなら今、外だよ。」
「えっ、やだー!漆人くんじゃーん!はずかしー」
先輩はごめんねー、と僕の肩を叩いて来た道を戻っていった。
また、窓の外を見れば、兄と目が合う。
「ナナー!帰り寄り道してこー!」
腕を大きくふって叫ぶ兄。
周りの人達が僕らを見る。
「…今日って言うか、ロク毎日寄り道してる」
兄に聞こえないような声で呟いた。それでも、兄には僕の考えなんてお見通しなのかそれ以上、何も言わなかった。
「来栖くん、あの、」
小さな声に呼ばれて振り向く。
「なに?」
同じクラスの、えっと、名前、なんだっけか。
少し悩んでいると、彼女は「もしかして、急いでる?」と泣き出しそうな声で言った。
「いや、全然。どうしたの?」
泣きそうな彼女に出来るだけ、優しく聞いた。
「私、その、」
「うん、」
「来栖くんが、…すき、です」
あぁ、顔真っ赤だ。
「それ、言う人間違ってない?」
「えっ、」
「僕は緑汰じゃないよ。緑汰なら…」
「ち、違うよ!私…!」
あたふたと慌てる彼女。
「ナナみーっけ!」
突然、後ろに感じた自分と同じ重さ。
「ロク、重い」
「えー、お兄ちゃんの愛の重さ!」
早く帰ろうと僕を引っ張る兄。
「あっ、来栖くん!」
呼び止めた彼女。振り返ったのは兄だった。
「なに?」
僕と同じ顔で、僕より優しく聞いた兄。
「来栖くんが、好きなんです」
それは、
「ふぅん、」
兄が笑う。
「ねぇ、それってどっち?ぼく?」
「え、いえ、漆人くんの方です」
兄はそう、と一言言うと、彼女の頭を撫でた。
「ほらっ、早く行こう?本屋さん閉まっちゃうよ!」
「そんな早く閉まんないよ」
そのまま、後ろから聞こえる声に今度は二人とも振り返らずに歩いた。
「ナナ、ぼくナナが一番だよ」
「いきなりなに?」
「ぼくが一番ナナの事知ってるってこと」
「…僕は別にロクほど好きじゃないよ」
僕と同じなのに、僕らはこんなにも違う。
みんなが気がつかないだけだ。
昔は同じだった思いも、気がつけば僕と兄の間にはすごい差が出来ていた。
「今はね。でも、いずれ気がつくさ。ぼくらは一つだ。引かれ合う」
細められた瞳。昔は感じなかった、二年という差。
「僕はそんなに愛せないよ」
「そんなことないさ」
赤信号、僕より一歩前の兄。
「きっと、ぼくが死んだらナナは後悔するよ」
笑う兄。それは僕だけに向けられる、真っ白な眩しい笑顔。
「一生ないよ」
そんな兄に僕も笑って返した。
あれから、もう20年ほどたった。
兄も僕も結婚して、結局僕らは双子ではなく只の兄弟で、兄がいうように引かれ合う事は無かった。
お互い子供もでき、自分達の家庭を家族を愛していた。
そんな中、兄夫婦は事故にあった。
「漆人、」
「…、」
父が泣きながら僕の背中を擦る。
部屋の外では、奥さんの方の親戚が保険金と子供達を誰が引き取るかについて話していた。
「…ロク、君の言った通りだ」
「後悔してるよ、もっと早く、大人になりたかった」
僕は君と一緒だったんだ。
「君と同じ、僕は君が一番だった。一番、愛してる」
ぽたり、ぽたり、自分の妻が亡くなったときより静かで、でも、もっと苦しかった。
得た愛を失うより、元々当たり前のようにあった愛を失うことの方が、体が引き裂かれる気分だった。
「…父さんは知ってた?」
「知ってた。緑汰と漆人の父さんだからね」
握った兄の手よりも熱い手のひらが僕の背中を擦る。
それが更に悲しくて、僕は兄の手を強く握った。
同じになれなかった僕ら。
ペルソナ3、4夢主父設定。
弟が3夢主パパ。兄が4夢主パパ。
パパ達はちゃんと奥さんも子供も愛してます!
ただ、超次元でお互いが好きすぎるだけですwww