高校一年生、初めての朝。
 
 
担任がこれからの学校生活について熱く語る中、隣の席の男子が話しかけてきた。
 
 
「お前の親父さん面白いな」
 
 
「は?」
 
 
面白い?
 
 
「…そう?」
 
 
「うん、面白い」
 
 
にこにこと笑う彼にはきっと悪気はないのだろう。
 
 
でも、明らかにそっち系の真島さんを面白いだなんて頭大丈夫なんだろうか?
 
 
「俺さ、早坂大和。なぁ、名前は?」
 
 
「三崎名波」
 
 
大和って呼んでよ、と笑う彼。
 
 
「俺は名波って呼ぶし」
 
 
「はぁ…?」
 
 
「ま、これからよろしくな」
 
 
今度、親父さん紹介してよ、と早坂は言ったが、
 
 
そこは全力で断らせていただいた。
(それが早坂の為だ)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「名波ー、放課後さ、」
 
 
「無理」
 
 
「まだ言ってねぇじゃん!」
 
 
あんたの言うことなんて大体わかる。
 
 
「あたし忙しいの」
 
 
早く帰ってあの意味もなくヘルメットを被っている真島さんに仕事をさせなければならない。
(色々書類整理をしなければそろそろデスクの上がヤバイ)
 
 
「う…、わかったよ、また明日な」
 
 
がっくり、と肩を落とし後ろを向く早坂。
 
 
彼は毎日飽きもせず、あたしに話しかけてくる。
 
 
最初は鬱陶しいと思った。
 
 
他人と馴れ合うのは疲れる。
 
 
誰かと同じなんて気持ち悪い。
 
 
そう思っていたし、今もそう思う。
 
 
でも、彼は今までの『クラスメイト』とは違う。
 
 
けして此方の領域には入ってこないのだ。
 
 
いまだってそうだ、普通なら無理にでも連れ出そうとするのに、
 
 
理由も聞かず引く。
 
 
それが少し、心地いいと思った。
 
 
「…早坂、」
 
 
「んー?」
 
 
たまには、
 
 
「これ、」
 
 
「へ?なに?…!」
 
 
あたしから、
 
 
「これもしかして!」
 
 
「あたしのメアド。気が向いたら連絡して」
 
 
「するする!」
 
 
近づいてみてもいいかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
歩み寄ってみる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
高校生活ってどんなんだったっけ?www
 
 
 
ひらり、と揺れる。
 
 
紺色のスカート。
 
 
「…こんにちは」
 
 
目を合わせることなく一言、挨拶をして去っていく彼女。
 
 
「どや、桐生ちゃん」
 
 
可愛いやろー、とニヤニヤと笑う真島。
 
 
「…兄さん、さすがにそれはヤバイんじゃないか?」
 
 
「ちゃうって!娘や娘!ワシの娘!」
 
 
「…はぁ?」
 
 
ムスメ、娘?真島の兄さんに娘?
 
 
ちゃりん、と小銭を入れて、バットを構える、金網の向こうの少女を見る。
 
 
「いつ出来たんですか?」
 
 
「んー、5、6年前やったと思うが」
 
 
「…女にでも押し付けられたんですか?」
 
 
真島は欠伸をひとつ、首を横に振った。
 
 
「拾った」
 
 
「…、兄さん犬猫とは違うぞ」
 
 
「親父にもいわれたわ」
 
 
楽しそうに、懐かしそうにそう笑う真島は穏やかな顔だ。
 
 
愛しそうに、娘を見つめる。
 
 
「狂犬には見えねぇな」
 
 
「ん?なんかゆうた?」
 
 
「…いや」
 
 
バットを振る度、揺れる紺色のスカートと黒髪。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
優しい眼差し。
 
 
 
 
 
 
時間軸バラバラ
 
 
 
 
「そや名波、学校はどうや?」
 
 
ずずっ、と味噌汁を啜ってそう聞く真島さんの前に麦茶を置く。
 
 
「どうって、別に」
 
 
向かいの椅子に座り自分も朝食を食べる。
 
 
「別にって…、もっとこう、なんかあるやろ」
 
 
「なんかって?」
 
 
…あ、なんか今日、味噌汁しょっぱい。失敗した。
 
 
「あれや、友達できたーとか、」
 
 
「あー、友達…?うん、できた」
 
 
…友達だろうか?といつもにこにこと笑っている隣の席のやつを思いだした。
 
 
「そ、そうか」
 
 
あたしの言葉に少し照れたような、嬉しそうな顔をする真島さん。
 
 
「で、どんな子なんや?」
 
 
「んー、なんか騒がしい感じ」
 
 
ああいうのをムードメイカーと言うのではないだろうか?
 
 
「ほぅー、…なぁ、今度」
 
 
「紹介しないよ」
 
 
「なんでや!」
 
 
なんでもなにもない。
 
 
こんなどう見たってあれな親を紹介できるわけない。
 
 
「…ほら、早く食べちゃって」
 
 
遅刻しちゃう、と言うと慌てて残りのおかずを口に入れる。
 
 
「ちょ、待ちぃ!」
 
 
「はいはい、急いで!車もう来てるって」
 
 
 
ドタドタと玄関を出て、
 
 
よし、今日もお勉強頑張りますか。
 
 
「ほら、行くよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
新しい日常。
 
(あ、お弁当ちゃんと持った?)
 
 
(当たり前や!)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
毎朝、ちゃんとご飯食べろよ(-゜3゜)ノ