コンウェイにだけ、教えてあげるね。
 
 
悪戯っ子の様に笑う彼女。
 
 
「あのね、わたし夢の中だと神様なんだよ」
 
 
胸を張ってそう言った彼女に、「所詮、夢の中の話だろ」と突き放したのはボクだ。
 
 
その言葉を、彼女はどう感じたのだろう?
 
 
今となっては、その相手に聞く事もできず、
 
 
ただ、あの時の寂しそうな笑顔だけが頭から離れなかった。
 
 
 
 
 
“彼”は彼女によく似ている。
 
 
「へぇ、アンタ、あの天然野郎だったの」
 
 
「天然って、イリア、ぼくちょっと傷付くんだけど…」
 
 
緑がかった水色の瞳、空の色を映す、銀色のくせっ毛。
 
 
なにより、イリアさんの言葉に困ったように眉を下げる、その表情が、
 
 
(…似てる、なんてものじゃない、)
 
 
本人、にしか見えない。
 
 
(まぁ、そんな事、有り得ないんだけど。)
 
 
だって、彼女は—。
 
 
「コンウェイ、どうしたの?」
 
 
急に視界いっぱい現れた彼に、思わず息を飲んだ。
 
 
「…いや、なんでもないよ」
 
 
「そう?ルカが心配してるよ。早く皆のところに行こう」
 
 
そう言ってボクの腕を掴む指先は、男性の指にしては随分と細くて白かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
重なる影。
 
 
 
 
「そう言えば、なんでシリルはナーオス基地でギガンテスの設計をしてたの?」
 
 
「あれ?言ってなかったっけか?」
 
 
ルカの突然の質問に少し悩んだ。
 
 
「あ、いや、言いにくいならいいよ?」
 
 
「んー、そう言うのじゃないよ。ただ、そんなたいした事じゃないし」
 
 
ぼくはもう暫く会っていない、彼女の事を思い出した。
 
 
「…実は妹が適応法で捕まってね、」
 
 
「え?」
 
 
「研究施設に連れていかれたみたいでさ、そこまで探しに行ったんだ。だけどもうそこにはいなくてね、そうしたらマティウスとか言う人が平気開発を手伝うなら探してくれるって言うからさ。だからあそこで転生者を使った兵器の開発をしていたんだよ」
 
 
「え、じゃあ僕達についてこない方がよかったんじゃ…」
 
 
おどおどする彼にぼくは笑った。
 
 
「待ちきれなかったんだよ。早くあの子に会いたいんだ」
 
 
早く、早く会いたい。
 
 
「…妹さん、無事だといいね」
 
 
「うん。ありがとうルカ」
 
 
今度はちゃんと守るから。
 
 
…今度は?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…ごめん、俺のせいで、」
 
 
月明かりに照らされていた白い花は触れたところから黒くなっていく。
 
 
…俺は汚れすぎたのだ。
 
 
 
 
 
 
 
「…シリル?」
 
 
「えっ、」
 
 
「大丈夫?」
 
 
ぼくの顔を心配そうに覗きこむルカ。
 
 
「…うん、大丈夫」
 
 
そう返したものの、ぼくはあの一瞬見えた白い花が忘れられなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
揺れる白い花。
 
 
 
 
 
 
 
無垢なる絆の世界で、“ボク”は上手くルカくん達についていくことが出来た。
 
 
彼等は目的だった、聖女アンジュを救いだした。
 
 
「じゃあ、行こうか」
 
 
ルカくんがアンジュさんの手をとって、立ち上がらせたときだった。
 
 
「あ、あっー!なにやってるのさ君達!」
 
 
「え?」
 
 
「え?じゃないよ!それ造るのにいくら注ぎ込んだと思ってるんだよ!」
 
 
突然表れた彼は目の前のルカくんの肩を揺さぶって叫ぶ。
 
 
「つか誰だよっ!」
 
 
「それはこっちのセリフだよ!君達、誰なんだよ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
「ふぅん、なるほどね…」
 
事情を説明したルカくんの話に納得したのか彼は何度か首を何度か縦にふって、頷いた。
 
 
「うん、わかった。まぁ、アレを壊した事は許してあげるよ」
 
 
まぁ、お金出してたのは上の人たちだしね。と笑った。
 
 
「…だからさ、ぼくも連れてってよ」
 
 
「だからってなんだよ!」
 
 
「だってさー、ギガンテス壊されちゃったからさーもう絶対クビだよ?君達のせいでぼく職を失うわけだよ?」
 
 
「うっ、」
 
 
そんな事、自分達には関係ないとルカくんが言えるわけもなく、
 
 
渋々、彼の提案を飲んだ。
 
 
「ぼくはシリル・レメディア。まぁ、よろしくね」
 
 
 
微笑み伸ばされた手のひら。
 
 
その瞳は、誰かに似ていて胸の奥がざわついた。
 
 
 
 
 
 
 
 
その眼差しを懐かしく思う。