気持ちのよい澄みきった水色の空。
見あげながら、"あのねこ"が空を翔び、舞い降りてくれないかしらと思います。
そう"あの😺ねこ"とは……
blogを始めた1年4ヶ月前の5月末に、文溪堂さんから待望の復刊をしたビル・シャルメッツ作『くるくるかわるねこのひげ』(『THE CAT'S WHISKERS』1969年) を紹介しました。あのときは復刊予告でしたが、ここで再び……。
初めてこの絵本に出会ったのは、『とてもかわったひげのねこ』長谷川集平/訳/福武書店(1982年)でした。
ひとめ惚れした絵本です。
迷いのない伸びやかな線で描かれる、とてつもなく長いひげの、かつて見たことのない能力を持ち合わせた魅惑的なねこ。
一見すると、ぎこちないように見えて、リズミカルで巧みな、自由気ままで奔放でcoolな線画。
そして、出会った女の子とのハートウォーミングなストーリーに、心を鷲づかみされてひとめ惚れした絵本なのです。
復刊をせつにせつに望んでいました。
お店を営んでいるとき、翻訳家の武本佳奈絵さんと『THE CAT'S WHISKERS 』の絵本との出会いがあったのです。
わたしは武本さんに夢中になって、この絵本の魅力を語ってしまいました。
その後、武本さんが情熱をかけて翻訳し、復刊出版が決まったと聞いたとき、小躍りして喜んだことを、昨日のことのように覚えています。
わたしのボロボロな洋書版。
願いが叶ったときを思い出して、絵を指でなぞるように触って見ています。
【見返し】くるくるぐるぐるのひげ。
女の子が釣りをしていると、魚ではなくねこを釣りあげました。
長い長いひげを自由自在に、何でも器用にあやつるねこと女の子は、仲よく暮らしはじめました。
ある日のこと、風見鶏の気分で大きな町を初めて歩いていたら、悪い人につかまってサーカスに連れて行かれてしまいました。
ねこはひげの曲芸で大人気。
でも、心は空っぽでした。
檻に入れられたねこは、女の子のことばかりが浮かび、逃げ出すことを決意します。
昼も夜も走り続け、いくつも山を登り、川や海をわたり、線路をつたり…、
女の子に会いたい、会いたい…。
and flew like a bird …
鳥のように、ひげの翼をひろげて空を翔びました。
やっとやっと、あの女の子のもとへ。
陽気でとても器用な不思議なねこですが、変わり者すぎてねこ社会では浮いた存在だったかもしれません。
ありのままの自分をすべて受け入れてくれた女の子と、離ればなれになってどんなに寂しかったことでしょう。
会いたくて会いたくて、
会いたくて会いたくて、
くるくるかわるひげのねこは、
懸命に懸命に、一途に女の子の家を探しました。
その姿がいじらしく、せつなく、愛しいのです。
この絵本と出会ったときを思い出して、日の当たるベランダで読み返しました。
He ran by day
and by night ,……………
ユーモラスで明るく、さんざめいたシュルメッツの線画と、ちょぴりせつなく洒落た絵本…『くるくるかわるねこのひげ』。
武本さんから贈られたこの絵本は宝物です。
※作者紹介
ニューヨーク・タイムズ、ワシントンポストなどの他、長年に渡りさまざまな雑誌や企業広告のイラストレーションを手がけた、ビル・シュルメッツの絵本です。