ハンス・フィッシャーの『Rum Pum Pum (A Procession from Folk and Fairly Tales )』1951年初版
『るん ぷん ぷん』さとうわきこ/ことば
小さな絵本美術/架空社 2000年(品切)
○小さな絵本美術館さんからの挨拶文より
ハンス・フィッシャーの展覧会のためにフィッシャー家へ通ううちに、長男のカスパール氏とこの作品を日本で出版しようという話になりました。
~略~カスパール氏は、文章のない原書を太鼓やラッパの口まねで、読み聞かせてくれました。
それを聞いて、日本の文字が好きだったハンス・フィッシャーのこの絵本に、さとうわきこが一行の日本語を添えて出版する約束ができました。~略~
この絵本は昔話やおとぎ話の行進と副題があり、
ながぐつをはいたねこ
ブレーメンのおんがくたい
イースターうさぎの王さま
うさぎとはりねずみ
めんどりの死
七わのからす
いたずらもの
かえるのおうさま
…のお話の行進場面を描いた絵本です。
(タテ15㎝×ヨコ31㎝の横長型)
嬉しく楽しい、すべての絵が二段になって繋げてある、四つ折りになった付録もあります。(10㎝×94㎝)
付録の1枚になった紙を伸ばして、クローズアップしてみました。
ハンス・フィッシャー(1909―1958)
スイス・ベルン生まれ。芸術学校で装飾画や版画を学び、パウル・クレーに師事したことも。
舞台美術・アニメーション・雑誌の風刺画・イラストレーション・壁画、チューリッヒ州国語副読本の挿絵など多岐にわたり仕事を手がけました。
長女のクリスマスの贈り物に描いた、1944年『ブレーメンのおんがくたい』の絵本をはじめ、1948年『こねこのぴっち』などを描き、49才の若さで亡くなりました。
堀内誠一氏は『絵本の世界 110人のイラストレーター 2』(福音館書店)で、ハンス・フィッシャーについて、
~詩的なグラフィック・アーティストの想像力は、ストレートに美しい印刷の仕上がりに結晶する。
三色刷りはトリオの、四色刷りはカルテットの生演奏を聞くように、それぞれの音色が純粋に響く~
~チューリッヒ州の国語副読本は印刷の持つ美しさの最高峰のひとつである。つつましく、精緻で晴朗、スイスそのものだ。~
と称賛しています。
迷いのない生き生きとした自在の線。
独創性があり、湧きつぐ機知と想像力。
動きがあり楽しく、伸びやかなデザイン感覚。
詩的で音楽を奏でいるような、子どもの心の深いところに届く絵を描くハンス・フィッシャー。
春めいた今日『るんぷんぷん』の絵本を、庭で太陽の光を浴びながら眺めました。
暖かい陽射しに照らされたハンス・フィッシャーの絵は、絵本のなかでほんとうに動いて行進をしているように見えました。
《見返しの絵》