資料を整理していたら面白い記事を見つけました。1979年に雑誌の企画で行われた冨田勲さんとの対談です。おそらく、FMレコパルかホットドッグプレスだと思われます。構成は、「I・O」のスーパーバイザーであり、音楽ライターの岩田由紀夫さん。
※ネットで読むには長めなので、各章ごとに4回に分けて掲載します。今回は、その2回目。
「80年代展望 マルチ対談」
線画的人間(新津)と彩色画的人間(富田)は、
ともに手作り音楽の名手だった
「バミューダ・トライアングル」を発表していよいよ冴えるシンセ音楽の大家、富田勲と、「I・O」でデビューのマルチ・ギタリスト、新津章夫の異色対談!!
“ピラミッド・サウンド”って何だろう
新津 今回の富田さんのアルバムは、初めから“ピラミッド”を意識して制作されたんですか?
冨田 いや、違うんです。僕の音楽のファンの方ならご存知と思いますが、僕は以前から4チャンネル考え方をしていたんです。
2チャンネル、つまり普通のステレオは前からの広がり、4チャンネルだと後ろからの音の広がりが加わります。
この4つのスピーカーの中心で聴いて下さいというんじゃなく、この4つのスピーカーの作り出す音場の中に入って聴いて下さい、ということなんです。
新津 四角錘の音場ですね。
冨田 そうです。それでハッと気がついたら、これはピラミッドなんですね。それで、“ピラミッド・サウンド”って名づけたんです。
★ 対談は東京・麻布にある冨田勲さんの自宅の応接間と、シンセサイザーが所狭しと並んだ仕事場で行われた。二人が話をしているところを誰かがみたら、とてもミュージシャン同士の対談とは思えない――まるで学者とその助手が、未来学について討議している、そんな感じにうつったに違いない。
追記
ここで語られている4チャンネルとは、現在のサラウンドとは異なり、ステレオ2チャンネルと同様に、4つのスピーカー(前方2つ、後方2つ)にそれぞれの音を出すという考え方です。たとえば、大げさな話ですが、ピアノ、ギター、ベース、ドラムの編成があったとしたら、前方の左スピーカーにピアノ、右にギター、後方の左にベース、右にドラムの音がそれぞれのスピーカーから発する音作りを意味します。
また、冨田さんの言っている「ピラミッド」とは、このことです。
ジャケットデザインは、「I・O」と同様、横尾忠則さんでした。
