今日は。
6月になりました。
5月の末には台風1号が発生し、途中温帯低気圧に変りましたが、各地にかなりの影響をもたらせました。
僕の新品の傘を強風に折られてしまいました。今年2本目です。(泣き)
みなさまに大きな影響を与えていませんように。
今回も、最初に月初恒例の大瀧詠一の「ナイアガラ・カレンダー」より月の歌をお届けします。
今月は「泳げカナヅチ君」です。
『およげたいやきくん』と『サーファインUSA』のパロディですね。
〇泳げカナヅチ君 ('78)
https://www.youtube.com/watch?v=incoBhKztq4
すみません歌を間違えました。6月は『青空のように』でした。
〇大滝詠一 青空のように
https://www.youtube.com/watch?v=AUtsHnPzUuM&t=9s
ところで、アルバム「ナイアガラ・カレンダー」を紹介していないことに、最近気が付きました。
納められている曲はほぼ知っているのですが、あまり詳しくないので、少し調べてからご紹介します。
さて、今回は『まみあな四重奏団』とクラシックについて書いてみます。
<まみあな四重奏団 上:マンガとクラシック>
ー『まみあな四重奏団』ー槇村さとる
●プロローグ
僕は、ここ数年、弥生美術館が気になっていました。
以前ご紹介した世田谷美術館(リンク)と並んでマンガ家の展覧会が多く開催されているからです。
過去に、「デビュー50周年記念 くらもちふさこ展」「画業60年還暦祭 バロン吉元☆元年」「デビュー50周年記念 村上もとか展」」等を開催し、今年9月に「画業40周年記念 上條淳士展 LIVE」、2025年1月に「漫画家生活60周年記念 青池保子展 Contrail 航跡のかがやき」等を予定しています。
昨年2023年11月、気になっていたこの美術館の「明治・大正・昭和 レコードの時代と夢二の時代展」に合わせて、そこに住む友人と美術館のある弥生周辺を散策しました。
その際に、弥生美術館での2024年の1月から「デビュー50周年記念 槇村さとる展 」の開催を知りました。
今年新年、この展示に行ってみようかと考えました。
そうはいっても槇村さとるの作品を一作も読んだことはありませんでした。
読むにも、『愛のアランフェス』『ダンシング・ゼネレーション』『白のファルーカ』が代表作と何かで読みましたが、文庫全4巻位なので少し長い。
そこで、1冊だった『まみあな四重奏団』を読むことにしました。
この作品、ステレオタイプで恐縮なのですが、女性マンガ特有のお涙感が全然なく、面白く読み終えました。
その後、ご本人は、1992年時点ではありますが、「日本漫画家名鑑500」にて、先の三作品とこの『まみあな四重奏団』の4作品の書影を代表作として掲載していることを知りました。
それならこの作品をご紹介する価値があるなと考え、今回のテーマとなりました。
●槇村さとる
ウイキペディアによりますと、1956年10月3日生まれで、葛飾区出身。
東京都立工芸高等学校工芸デザイン科卒業しています。
驚いたことに、この作家は女性なんですね。
ブックオフに行くと、漫画文庫本コーナーで、「槇村さとる」の名前をよく見ました。
名前から男性の作家だと勝手に思っていましたが、プロフィールを見てびっくり、女性だったのですね。
ウイキペディアによると、ペンネームの由来は、漫画家デビュー当時に好きだった人の名前からとったとあります。
僕は少女マンガは余り詳しくないので、持っていた「PEN 少女マンガ入門」を見てみました。
残念ながら、この中で、槇村は触れられていません。
ネットで見つけた「デビュー50周年 槇村さとるさんにインタビュー」でこんな話をしていました。
https://artexhibition.jp/topics/news/20240218-AEJ1841087/
ひと昔前、「一条ゆかりは叱ってくれる、くらもちふさこは寄り添ってくれる、槇村さとるは励ましてくれる」という三題噺があったそうです。
●『まみあな四重奏団』
この作品は集英社文庫で読みました。
週刊マーガレット(1988年3・4月合併号~10号)に掲載された『まみあな四重奏団』とマーガレット(1988年No.1~No.6)に掲載された続編の『まみあな四重奏団 カノン』の2作が収録されています。
作者は、上のインタビューで、「幼少期の生い立ちがテーマになっている作品は少なくありません。『まみあな四重奏団』」などもそのひとつ」と紹介しています。
●登場人物・ストーリー
ネタバレがありますのでご注意ください。
1. 『まみあな四重奏団』
〇登場人物
バイオリニストの父小泉楽太郎とピアニストの母君子
長男有人(アルト):武蔵音楽大学学生。エンタメ研で活動。
四重奏では、チェロを担当
次男拓人(タクト):武蔵音楽高校生。ヘビメタバンドのギタリスト。
四重奏では、ヴィオラ担当
三男和音(かずね):カリンと双子の中学生。
四重奏では、ヴァイオリン担当
長女花梨(カリン):主人公。和音と双子。
四重奏では、ヴァイオリン担当
なぜか自分だけ音楽の名前をつけれていないことに不信感を持っています。
花梨 「才能がないの・・・生まれた時からわかったのかな?」
母「女の子だから」
早乙女真弓 :花梨のクラスメート。和音に関心を持っている。
〇ストーリー
1970年。
麻布の「まみあな」 に住む、バイオリニストの父小泉楽太郎とピアニストの母君子には二人の男の息子がいました。
4月の雪の降る夜の三人目の子供が生まれた夜に、父楽太郎は家の前で赤ちゃんを拾います。
夫婦は二人の子供の娘「花梨」と息子「和音」を双子の子供として育てます。
冒頭ではどちらが、実の子で、どちらが拾い子かはわかりません。
15年後。
ジュニアコンクールで毎年優勝する和音に対して、ピアノの先生にその才能を疑われる花梨。
一方、和音のバイオリンは弦に触れた瞬間から歌いだします。
自由奔放な小泉家のルールは二つ。
1.各自の自由を絶対おかしてはならない
2.年に1度コンサート活動に家族全員で参加すること
国立の叔母のところに、二人の秘密を確かめにいく拓人タクト。
「やっぱりカリンはうちの子じゃない」
そんな中、父はM響のリハーサル中気分を害し、家で倒れます。
輸血が必要となり、カリンの血液型を心配する兄たち。
父はAB、和音は適合、カリンはB型。
本番に穴をあけないように、和音に代役を依頼する父。
父から預かったバイオリンの名器ダァルネリを使って、メンデルスゾーンの名曲『バイオリン協奏曲』を徹夜で練習する和音
〇参考動画:
メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 から第1楽章
https://www.youtube.com/watch?v=itFMCGqAU8k&t=2s
聴きながら、読んで頂ければ幸いです。
最初は15歳の和音の腕前を疑っていた指揮者宇都宮と楽団員も和音のソロが始まると、その演奏にどよめき立ちます。
「小さな楽太郎」とハグする指揮者。
無事本番も終わり、今日の代役だけでなく、2月4日に和音をデビューさせたいと言いだす指揮者。
推薦で既に武蔵音大付属に合格している和音だが、そのデビューの日に花梨は同じ高校の入試。
なんとか、補欠合格するカリン。
大成功する和音のデビューコンサート。
メディアには和音の記事が溢れる。
和音がアメリカに行く話がマネージャーから持ち上がります。
女性週刊誌が「和音」が実は、兄弟でないことをすっぱ抜く。
実は、和音は、小3の時に、親戚がうっかり話をしていたのを聞いてしまっていました。
それまでやらなかったバイオリンを和音は始めました。
和音
「家族っていう無条件の安心感が無くなった。」
「音楽で繋がらなければ・・・
音楽で望まれた子にならなければ・・・」
「でも今は、留学しても怖くはない」
●僕の感想
*いつもなら「僕の評価」などど、大それたサブタイトルで書くのですが、こと女性の作品です。
僕の感想とさせてください。
和音、花梨どちらが捨て子か最後まで分からない、ストーリー展開が読者の興味を引きます。
その結末は、最後に逆転する大波乱。
ストーリー展開的に楽しめました。
途中でその結果を知ることになる、和音の緩れ心境の描写は女性作家だなと感じました。
心の変化を巧に描く少女マンガは、ストーリーでぐいぐい話を引っ張る少年マンガと異なり、素敵です。
その表現方法も、会話はもちろん、絵でも素晴らしいものになっています。
指揮者と楽団のせめぎあいの描写が素晴らしい。
家族の絵がすばらし。
●コーヒーブレーク
「四重奏団」。
単純に「四重奏団」になっていますが、マンガの内容から言って「弦楽四重奏団」だと思います。
Jazzの「四重奏団(カルテット)」はご存じでも、クラシックの「弦楽四重奏団」には馴染みのない方も多いかと思います。
「弦楽四重奏団」はバイオリン2台(第一バイオリン、第二バイオリン)、ヴィオラ1台そしてチェロの4台で構成されます。
ハイドンがその形式を決め、ベートーベンが完成まで高めたものです。
この四台で、オーケストラに匹敵する音楽を奏でることができます。
ここでは、弦楽四重奏で、クラシックではなく、プログレを聴いてみましょう。
〇モルゴーア・クァルテット アルバム『原子心母の危機』
ダイジェスト試聴
https://www.youtube.com/watch?v=I0j-xVp5fg4
気に入った方はこちらもどうぞ。
〇モルゴーア・クァルテット プログレ名曲選
https://www.youtube.com/watch?v=kn5KUUFTzTg
僕は以前「キング・クリムゾン 50周年:モルゴーア・クァルテット」(リンク)を書いています。
こちらも読んで頂けると幸いです。
長くなってしましました、続きの『まみあな四重奏団 カノン』は次回に。