今から22年前。 マウリッツハイス王立美術館展でフェルメールの代表的作品「ターバンを巻いた少女」(1665年頃)をこの時初めて見ました。
ターバン

目がくりっと愛らしく。まだあどけなさが残る少女の頭に巻き付き、背中に垂れるターバンが印象的。画面中心からやや右寄り、影に埋没する空間の中から浮かび上がって銀色にきりっと光る、少女の年齢にはちょっと似つかわしくないと思える真珠の耳飾り。これは絶妙なアクセントです。笑おうとしているのか、はたまたこちらの問いに応えようとしたものか、わずかに開かれた唇と、そこから覗く小さく白い歯。そして、窓から漏れ入る太陽の優しく柔らかな光。でも、絵画に限らず色々と見続けてきた現代人である私が、どこがどうということはない、とも思える絵画であるのに、見れば見るほどミステリアスでエキゾチックな気分に見舞われる、不思議な美しさと魅力に富んだ絵画だったことを思い出します。

 この想い出の絵画をモチーフにした映画『真珠の耳飾りの少女 GIRL WITH A PEARL EARRING』が公開されるということで、楽しみにしていました。
真珠の耳飾りの少女

 主演のスカーレット・ヨハンソンは顔にちょっと現代的切れ味があり、色白過ぎるような印象がありました。私の中では「真珠の耳飾りの少女」はも少しぽっちゃりで、外で立ち働くので肌も少し焼けているように思えていたからです。でも、現在はみな都会的な顔立ちになってきているので、田舎の香を残す女優さんを捜すのは大変なのかも知れませんね。ちょっと辛口批評しましたが、これはあくまで外見のこと、演技はよかったですよ。のめり込みました。フェルメール役のコリン・ファースは、神経質で、ともするとメランコリーに陥りそうな画家の姿を見事に演じ切っていたと思います。
 監督のピーター・ウェーバー。私はこの作品でしか存じないのですが、素晴らしいと思いました。特に印象的だったのは映画全編を通して感じられた自然で柔らかな光です。もしかしたらこの作品は自然の光だけで撮られたものではないか、と思いました。そして、スタンリー・キューブリック監督作『バリー リンドン』を思い出しました。キューブリック監督は自然光とロウソクの光だけでこの作品を撮影しており、その柔らかな空気感は美事で、中世当時の雰囲気を再現することに成功していたのですが、この空気感に似ていたな。と思ったのです。

 最後にちょっと脱線。キューブリック監督、『バリー・リンドン』の前作はあの『時計じかけのオレンジ』で、ボカシの付け方まで指定した方ですから、悪名高き映倫もキューブリック監督作には甘い筈!、という人が、この『バリー・リンドン』でレディ・リンドン役:マリサ・ベレンソンのヘアが写っている。などと主張していました。私は何度も見てみましたが、そのようなものはとうとう見えませんでした。私には想像力が足りな過ぎるのでしょうか。

バリー・リンドン
このシーン前後がそうなのですあなたにはみえますか?