気ままな日常を綴っています。 -2ページ目

気ままな日常を綴っています。

いつか静かに消える時まで。。
一人静かに思いのままに生きたい。。

(物語)

「さあ、終わったぞ。」と、最後の書類に署名をしながら、クトゥーゾフ は言いました、そして大儀そうに立ち上がると、晴れやかな顔をして扉口の方へ歩き出しました。

司祭の妻は、パッと顔を火照らせて急いで皿を掴みました。

さっきから待ち構えていたくせに、それでも彼女はここぞという瞬間に皿を差し出す事が出来ませんでした。

彼女は深々と頭を下げて、それをクトゥーゾフ に捧げました。

クトゥーゾフ の目は細められました、彼はにやりと笑うと、片手で主婦の顎をしゃくって言いました。

「ほう、これはお美しい❗️有り難う奥さん❗️」と、彼はズボンのポケットから何枚かの金貨をつまみ出して盆の上に乗せました。

 

「どうかな、楽しくお暮らしかな❓」と、クトゥーゾフ は用意された部屋の方へ向かいながら言いました。

司祭の妻は、えくぼを見せて微笑しながら、彼に続いて奥の間へ入って行きました。

副官は玄関の階段の所で待っていたアンドレイ公爵の所へ出て来て、朝食に誘いました。

30分程すると、アンドレイ公爵はクトゥーゾフ の部屋に呼ばれました。

クトゥーゾフ は軍服の襟をはだけたまま、ソファに深く腰掛けていました。

彼はフランスの小説を手にしていましたが、アンドレイ公爵が入って行くと、ペーパーナイフを挟んで本を閉じました。

アンドレイ公爵が表紙を見ると、それはマダム・ド・ジャンリの『白鳥の騎士』でした。

 

「さあ、かけたまえ、話そうじゃないか。」と、クトゥーゾフ は言いました。

「実に悲しい事だ。だが、忘れんでくれたまえ、君。わしが君の義父であることをな、もう1人の義父だよ。。」

アンドレイ公爵は、父の死について知っている限りの事と、後退の際に立ち寄って禿山で見た事を、クトゥーゾフ に語りました。

「どこまで。。どこまで落ちてしまったのか❗️」と、アンドレイ公爵の話から、ロシアが置かれた状態をまざまざと思い描いたらしく、クトゥーゾフ は怒りに震える声で言いました。

「時を与えてくれ、時を。」と、彼は険しい顔で付け加えました。

そして明らかに、この胸を真に立たせる話を続けたくないらしく、言いました。

 

「君を呼んだのは、わしの側に居てもらいたい体よ。」

「閣下のご好意に感謝します。」と、」アンドレイ公爵は答えました。

「でも私は、もう司令部の為にお役に立てないのではないか、と思うのです。」と、彼は苦笑しながら言いました。

クトゥーゾフは怪訝そうに彼を見ました。

「何よりも。。」と、アンドレイ公爵は言葉を次ました。「私は、連隊に慣れてしまって士官達を好いておりますし、部下の将兵も私を好いてくれているようです。連隊を去るに忍びないのです。閣下の下に勤めるのをご辞退致しますのは、決して。。」

 

聡明そうな、善良そうな、同時にかすかな愚弄するような表情がクトゥーゾフのぶよぶよした顔にさしました、彼はボルコンスキーの言葉をさえぎりました。

「残念だな、君はわしに必要な人間なのだが。だが、君が正しい。我々が人間を必要とするのはここでは無い。意見を述べる者はわんさと居るが、人間は居ない。立派な意見を吐く連中が、君のように連隊に勤めていたら、連隊はこんなザマにならなかっただろうよ。わしはアウステルリッツ以来、君を覚えとる。。覚えとるよ、軍旗を持った姿をな」と、クトゥーゾフは言いました。

この回想を語られると、アンドレイ公爵の顔が嬉しそうに紅潮しました。

 

クトゥーゾフ は彼の手を握って引き寄せると、彼の接吻を受ける為に頬を差し出しました。

すると、アンドレイ公爵は彼の目に涙が滲んでいるのを見ました。

クトゥーゾフが涙もろい事も、父の死に同情を示そうとして、特に彼に優しく哀惜してくれている事も、アンドレイ公爵は知っていましたが、それでもアウステルリッツの回想を語られた事は、やはり嬉しく胸を快くくすぐられるのでした。。

 

「立派に自分の道を歩むが良い、わしにはわかっとる、君の道こそーー名誉を重んじる道だ。。ブカレストで君を手放すのは惜しかったが、君を派遣せねばならなかったのだ。」とクトゥーゾフ は言いました。

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(解説)

ここも、アンドレイ公爵とクトゥーゾフ との対話を通じて、クトゥーゾフの戦争観というものを表現している部分では無いかな。。と思っております。

まず、アンドレイ公爵がクトゥーゾフの部屋を訪れた時、彼はフランス小説の『白鳥の騎士』を読んでいます。

これ。。わざわざトルストイがクトゥーゾフに読ませているのですね。しかもフランス小説です。

この『白鳥の騎士』という物語の内容は、日本で言えば『鶴の恩返し』のような話と解釈しております。

 

『白鳥の騎士』は、いろんなバージョンで題材にされていますが、物語の大筋としては、ある国のお姫様が、お姫様を助けた正体がイマイチわからない男性と恋仲になり、この国を彼と統治したいなら、結婚しても良いが決して自分の素性を問うてはならない、という話です。

結局、お姫様は、側近の人から「そんな素性のわからない男と結婚して子供まで授かって」と嫌味を言われるんですね。

それで、お姫様は約束にもかかわらず「あなたは一体誰なのです❓」と聞いてしまい、結局彼は奥さんであるこのお姫様と子供を置いて去っていった。。という話ですね。

これは、お姫様が、彼はきちんと国を統治し、お互い仲睦まじく暮らしていた、という大事な事実をきちんと認識しないで、彼を信じずに無責任な他人の先入観に揺らいで彼との約束を破った、という話だと解釈します。

要するに『自分自身の目で見て、肌で感じたことだけを信じなさい。』という教訓ではないかと思っております。

(他には、例え夫婦間であっても相手方のプライバシーに立ち入ってはならない、っていうのもあると思います。)

 

結局、クトゥーゾフは、アンドレイとの話の中でも、『自分の目で戦時中の戦場』というものを見ていなければ、どんな幾何学的な知識や心理的な考察をしても何の役にも立たん、と言っているのだと思います。

自分の肌で感じた事実だけが大事なのであって、その経験で動く事が大事なのだ、と。

そしてね、クトゥーゾフは、涙もろい温かい人間として描かれており、アンドレイ公爵も連隊の部下を本当に可愛がっています。

かつて、アンドレイの戦争に対する考察で、アンドレ自身、戦争において『優しさとか慈悲の心』は無用だ、と言っていたと思いますが、やっぱりトルストイは、生身の人間が戦争に参加せざるを得ない訳ですから、『人間としての彼ら』を描くことによって、戦争をせざるを得ないそれぞれの人間のドラマがあるのだ、と訴えているように思いますね。(トルストイはこれを温かい血が流れるロシア人の気質と捉えているように思います。)

 

だから、クトゥーゾフは、アンドレイが連隊に属し、実戦に参加している事を高く評価しているのですね。

こういう人間が司令部にも連隊にもたくさん居れば、ロシアの連隊はもっとマシになったろうに。。という事を言っているのだと解釈します。

そして、クトゥーゾフ は、アンドレイ公爵のような人間と一緒に仕事をしたかったのですが、アンドレイは今の連隊に愛着があるのだ、と断ってしまいます。

しかし、クトゥーゾフ はアンドレイの気持ちを理解して優しく送り出すのでした。。

 

(備考)聖杯王パルチヴァールの息子ローエングリン(白鳥の騎士):ウイキペディアより。

高貴な女性がブラバントという国を統治していたが、彼女は多くの求婚者の申し出を拒んでいた。神が送ってくれる者の到来を望んでいたのだ。そのとき、白鳥の曳く小舟に乗ってローエングリン[3]がアントウェルペン(アントワープ)に上陸し、女王はこの勇士を丁重に迎えた。勇士が「私をここのあるじと望まれるなら、・・・私が誰であるかを決して問うてはなりません」と言うと、女王はそれを守ると誓い、二人は結婚した。そして子供も二人生まれた。しかし、彼女は後に約束を破り彼の素性を問うのですね、ローエングリンは形見に剣一振り、角笛一本、指輪一個を残して聖杯城へと去って行った。

 

※グリム童話版では、ローエングリンが問題なくすぐれた政治的手腕を発揮し、二人は愛し合っていたにも関わらず、ちょっとした行き違いで、この女性(奥さん)の近くの者が「素性の知れない者」と嫌味を言ったのを気にして。。という理由づけが記載されています。

 

 

お早うございます♪  今朝は、令和8年2月5日の日記です♪

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こんばんはー♪  現在17時58分です♪

室温14.4度。湿度49%です。

ちょっとは暖かいのかな❓

 

昨夜は、20時半まで起きてたんですよ〜㊗️

ちょっと高度❓な小説を物色していたのです。

当たっていたのが『嵐が丘』『赤と黒』『心』。。。です。

 

で、『嵐が丘』は復讐の話でダメ❣️(私の中には、ここまで復讐するっていう非合理な考え方は有りませんの。これは原文を当たる気もしないですね。作者は、人間の正直な感情を押し出すという事に注力してるのかしら。。その感情を乗り越える話の方が好きなんですけどねー。)

『赤と黒』は、いくら好きだからって、相手を死刑にするまで復讐するんかい❓しかも、男の方は「彼女の自分への愛を感じたから喜んで死ぬ」みたいなセリフは絶対に支持できませんね、例え相手とは結ばれる事が不可能でも、もっと違う考え方があるんじゃないのかなー。。的な。。事を考えていました。(➡︎あ〜でも『赤と黒』は読むかもです、そのうち。ウイキペディアのあらすじは平板に記載しているのでね、『戦争と平和』もウイキとは違って原文はかなり深かったしね。)

 

『心』もねー。。だいたい漱石の小説は文語調で国語バカの私には無理無理👋

ま、『坊ちゃん』は本当に良いお話だったな〜って思いましたけれどね。

だから、漱石の心自体は純粋で宗教的なものがあるんじゃないのかな。。とは思いますね。

で、ウイキペディアであらすじを読んでいると、「う〜む。。」表面理解不能ですが(なんで自殺するんねん❓さっぱりわからんわ❓)、高校生の頃夏休みの課題で読んだ事はあるので、漱石にしては国語的にも優しい方かもね。。とか思ってちょっとかじる事にしました。

以上の理由で、昨夜は20時30分まで起きれていましたわ✨

 

で、今朝は5時6分ですね。

 

昨日の昼マックへの反省からか(美味しかったですけれどね(^。^))、朝からお料理を頑張っていました。

大根の煮付け、和風だしをごっそり取って、鍋の下ごしらえ。。。

昼はお鍋、夜は和風出汁を使ったお蕎麦にしようかな。。とか考えていました。

明日はね、茶碗蒸しも出来るな。。とか(^。^)

 

朝ごはんは作ったばかりの大根の煮付けとおにぎりにしました。

まだ暗いんですよね、今日はお天気では無いみたいです。

美味しかったですけれどね(^。^)

 

で、少し英字新聞をかじった後、『心』を青空文庫で読んでいました。

7チャプターくらいかな。。

主人公の『私』が海水浴場のお店で『先生』と初めて出会って、なんかこの人に惹かれるものがあったのでしょうかね。

『先生』にお近づきになろうとするのですけれど『先生』の方は自分の中の秘密に入って欲しく無い。。みたいな感じの所までですね。

当時の若い人達、書生をやるような人達は、知識人を嗅ぎ分ける能力が優れていたのだと思いますね、『先生』と読んで懐いていったのは、知らんけど。

ま。ここは導入部ですからね。

肝心な所が自分なりに理解出来たと思えるなら、ブログに別立てするかもです。

(でもね、個人的にはこういう奥深い心の暗部の話を高校生に必須で読ませるのはどうなのかな❓って思わないでも無いのですよね。本は量を読めば良いっていうものでも無いと思うんですよ、じゃ無いと読書=苦痛でしょう❓もっと解り易い本ってあると思うんですけれどね。武者小路とかの方が。。当時は武者小路=中学生レベルと思われてたんかな❓)

 

はい。9時から本業でしたが、これはびっくり仰天のチャートを描く銘柄が有ったので少しだけ仕事はしました。

しかし、後は暇だったので英単語を調べていたかな。。ノート整理も少しですね。

 

はい。実りの無い話で文字数費やしましたわ💦

11時頃、植木鉢に水遣りをしました。

お花も活け変えてね💞

外はちょっと春霞みっぽいです。

 

ちょっとフライング傾向(11時36分)ですが、午後から遊びたいので早めにお昼です♪

ビオラさん生け変えました✨✨ 

鶏肉と白菜とお豆腐のお鍋ですね。。めちゃくちゃ美味しかったです💞

 

もう、午後からは遊びの時間です。12時50分には脱出❣️

お堀の河津桜さん、2輪開花です✨

 

なんか春っぽい霞んだ空気ですね。。

 

今日は、ドトールバリューカードを使い切ってコーヒー♪

まあまあ楽しかったです♪

 

帰宅は15時30分頃。

少し家事をして、シャンプーもしました。

夕ご飯は、乾燥蕎麦の残りで温蕎麦。

美味しかったです。

デザートはリンゴ半分ですね♪

 

今日はこんな感じです。

 

今日も、良い一日をお過ごし下さいね💞

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(余談)

Japanese astronaut Makoto Suwa will make a long-term stay at the International Space Station around 2027, marking his first space mission, science minister Yohei Matsumoto told a press conference Friday.

金曜日(2026年1月9日)のプレスリリースによると、科学担当大臣である松本陽平氏が、日本人宇宙飛行士の諏訪理さんが2027年頃に国際宇宙ステーションに長期滞在する予定だと発表しました。これは諏訪さんにとって初めての宇宙ミッションとなります。

   the International Space Station:国際宇宙ステーションISS

  marking his first space mission:初めての宇宙ミッションを記念(❓)して

  science minister:科学大臣

  told a press conference:記者会見で語った

 

 Suwa, 49, a former World Bank employee, and former Japanese Red Cross Society doctor Ayu Yoneda, 30, were selected as astronaut candidates in 2023 in the first recruitment for the position by the Japan Aerospace Exploration Agency, or JAXA, in 13 years.

諏訪(49歳、元世界銀行職員)と米田あゆ(30歳、元日本赤十字社医師)は2023年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)による13年ぶりの宇宙飛行士募集で選ばれました。

  Japanese Red Cross Society:日本赤十字社

  candidate:…の)候補者、(…の)志願者、多分(…に)なりそうな人(加算)

  recruitment:募集、求人、採用(不可算)

  aerospace:航空宇宙、航空宇宙産業や航空宇宙に関わる事柄全般を指す

  exploration:探検、(実地)踏査、探究(可算又は不可算)

  the Japan Aerospace Exploration Agency :JAXA

  13年ぶりに:for the first time in 13 years(上記の表現はわかりにくい)

 

 They were certified as astronauts in October 2024 after completing basic training.

彼らは基礎訓練を終え、2024年10月に宇宙飛行士として認定されました。

  certify:(…が)証明する、認証する、保証する、証明書を交付する(他動詞)

 

A Tokyo native, Suwa studied at the University of Tokyo's Faculty of Science and graduated from the Department of Geosciences at Princeton University's graduate school in June 2007.

諏訪氏は東京出身で、東京大学理学部で学び、2007年6月にプリンストン大学大学院地学研究科を卒業しました。

  A Tokyo native:東京都出身の人

  faculty(ファカルティ):大学の学部、大学の教職員(教授陣)、能力や才能

  Faculty of Science:大学の理学部

  University's graduate school:大学の大学院

  Geosciences:地球科学

(物語)

クトゥーゾフ はぐったりした目でデニーソフを見守り、腹立たしげに両手をベンチから離すと、腹の上に組んで、相手の言葉を繰り返しました。

「祖国の安泰の為に❓何だね、そりゃ❓言ってみい。」

デニーソフは娘の様に顔を赤らめて、臆する気色も無く、スモーレンスクとヴャージマの間で敵の連絡線を分断するという自分の作戦計画を開陳し始めました。

デニーソフは、その地方に住んでいた事があり、地形に詳しかったのでした。

彼の計画は疑いも無く良いものに思われたし、特に彼の言葉にこもっている確信の強さによれば、それは間違いない様に思われました。

 

クトゥーゾフ は足元に視線を落とし、時折ちらと隣家の庭へ目をやりました。

彼はそちらから何か不快なものが現れるのを気にしていました。

果たして、彼が時々目をやっている隣家の陰から、デニーソフの弁舌の途中に、書類鞄を小脇に抱えた1人の将軍が現れました。

「どうした❓もうできたのかな❓」と、デニーソフの話の半ばにクトゥーゾフ は言いました。

「できました、閣下。」と、将軍は言いました。

クトゥーゾフ は、『こんな事がそんなに早く1人で出来る訳あるか』とでも言いたげに、頭を振りました、そしてそのままデニーソフの述べるのを聞いていました。

 

「ロシア士官の名誉にかけて誓います。」と、デニーソフは言いました。

「私がナポレオンの後方連絡を分断します。」

「主計長の木リール・アンドレーエヴィチ・デニーソフは、君の親戚かな❓」と、クトゥーゾフ は彼を遮りました。

「伯父であります、閣下。」

「ぼう❗️ありゃ、わしの仲間でな。」と、クトゥーゾフ は愉快そうに言いました。

「よし、よし、君、司令部に留まりたまえ、明日ゆっくり聞こうじゃないか。」

デニーソフに一つ顎をしゃくると、クトゥーゾフ は顔を回して、コノヴニーツィンが持って来た書類に手を伸ばしました。

「お部屋に入られた方がよろしくありませんか、大公爵閣下。」と、当直の将軍が不服そうな声で言いました。

「計画書を検討しなければなりませんし、署名を頂かねばならぬ書類もありますので。」

戸口から出て来た副官が、室内の用意が出来た事を伝えました。

しかしクトゥーゾフ は、部屋に入るのは仕事から解放されてからにしたいらしい様子でした、彼は渋い顔をしました。

「いや、君、テーブルをここへ持って来させてくれ、わしはここで見る、君は待っていたまえ」と、アンドレイ公爵を見ながら言いました。

アンドレイ公爵は、階段の所に残って、当直の将軍の話を聞いていました。

 

報告の間、アンドレイ公爵は、入り口の扉の内側に、ひそひそ囁いている女の声と、絹の衣装の鳴る音を聞きました。

扉の陰に、薔薇色の衣装をつけて、藤色の絹のプラトークで頭を包んだ頬の赤い、美しい、太った女が、総司令官を待っているらしく、盆を捧げて立っているのを認めました。

あれはこの家の主婦で、司祭の妻で、大公爵に歓迎の塩とパンを渡す事になっているのだ、とクトゥーゾフ の副官が小声でアンドレイ公爵に説明しました。

彼女の夫は十字架を捧げて寺院で大公爵を迎えましたが、彼女は家で。。「実に優しい女ですよ。」と、副官は笑いながら付け加えました。

 

クトゥーゾフ はこの言葉にじろりと振り向きました。

クトゥーゾフ が当直の将軍の報告(この報告の主要事項はツァリョーヴォ・ザイミンチェ付近の陣地に対する批判でありました)を聞いていた態度は、デニーソフの作戦計画を聞いていた時と同じであり、それは7年前にアウステルリッツで作戦会議を開いていた時のあの態度と同じでした、即ち、聞こえるから、というに過ぎないものでした。

当直の将軍の報告には、クトゥーゾフ の関心を引いたり出来るものは何も無いばかりか、もう聞くまでも無いすっかり承知している事でしたが、聞かねばならぬ事が明らかだったからでした。

 

デニーソフが述べた事は全て要を得ていて、賢明でした。

当直の将軍が報告した事は、それよりもさらに要を得て賢明でした。

しかし明らかに、クトゥーゾフ は知識も知力もべっ視して、事態を解決しなければならぬはずの何か他のものがある事を知っていました。

知力や知識とは関わりの無い何か他のものでした。

アンドレイ公爵は、総司令官の顔の表情を注意深く見守っていました。

そして、彼がそこに捉える事が出来た唯一の表情は、退屈と、扉の内側で女のささやきが何を言っているのか、という好奇心と、礼節を守らねばという慎みの表情でした。

 

また、クトゥーゾフ は、知力も、知識も、デニーソフが吐露した愛国的感情さえも蔑視していましたが、彼は自分の老練と人生経験によってそれらを蔑視していたのでした。

この報告に対して、クトゥーゾフ が与えた命令は、ロシアの略奪行為に関するものが1つだけでした。

当直の将軍が報告の終わりに1通の命令書に大公爵の署名を求めました。

それは、地主の要請により、刈り取った青い燕麦に対する料金を各部隊から徴収するという通信でした。

クトゥーゾフ はそれを聴き終えると口を尖らせて首を振りました。

「ペチカ行きだ。。火にくべたまえ❗️わしはそれを命令もせんし、許しもせんが、罰金も取れんな。仕方の無い事だ。薪を割ればーー木っ端は飛ぶものよ」彼はもう1度その通告を見ました。

「なるほど、ドイツ人の細かさか❗️」と、彼は首を振りながら、言いました。

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(解説)

はい。

総司令官になったクトゥーゾフの、周囲の者の言い分に対する反応を描きながら、彼の人となりを表現している部分だと思います。

まず、熱血漢で怖いもの知らずのデニーソフ軽騎兵大佐の作戦を聞いてあげます。

特に彼の作戦を良いとも悪いとも発言せずに、デニーソフの伯父とは仲間だった事を知り、司令部に留まるよう言います。

 

次に当直将軍の報告を聞きます。

その報告の内容は、クトゥーゾフがすっかり承知していたものなのでしたが、報告は聞かねばならないと眠そうに聞いています。

そして、彼は、報告者達が重要視している知力や知識ではなく、戦争というものは経験が物を言うのだと思っています。

そうです、アウステルリッツでも、『敵はこうあるはずだ』と言うあらかじめナポレオンからインプットされた知識に基づいた計画は何の役にも立ちませんでした。

「その瞬間」の経験による即効的で適切な判断とその判断の正確な伝達こそ全てだと、クトゥーゾフ は考えているようです。

 

そして、当直将校は最後に、1通の命令書にクトゥーゾフ の署名を求めます。

それは、地主の要請により、刈り取った青い燕麦に対する料金を各部隊から徴収するという通信でした。

この命令書は、おそらく先のドイツ人の総司令官(バルクライ・ド・トリー)の息がかかった命令書だったのでしょう。。

クトゥーゾフ は、この命令書がナンセンスで火にくべよ、と怒ります。

そうです、戦時中という緊急下に於いて、有償で徴収している場合では無いだろう。。という事だと解釈します。

命を捧げている兵士達や巻き添えを食った住民達が大勢居て、その人達が何の見返りもなく国家に捧げているのに、兵士達の食料として麦を供出するに際して金をよこせ、は無いだろう。。そんなスケールで物を考えているドイツ人なんかとやっとられん❗️、と解釈します。