戦争と平和 エピローグ(16ー3)最終回:ニコーレンカ・ボルコンスキー、自分は英雄になると夢を見 | 気ままな日常を綴っています。

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いつか静かに消える時まで。。
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(物語)

その頃、階下のニコーレンカ・ボルコンスキーは、今しがた恐ろしい夢から目が覚めたばかりでした。

彼はブルターク英雄伝の挿絵にあるような兜をかぶっている自分とピエールの夢を見ました、彼とピエールおじさんは大軍の先頭に立って進んでいました。

彼らは軽快に、嬉々として次第に目的に近づいて行きました。

ふいに2人を操っていた糸が緩み、もつれ始めました。

前進が困難になりました。。そして、ニコライ・イリイチ叔父が2人の前に恐ろしい厳しい格好で立ちはだかりました。

 

「これはお前らがやったのだな❓」と、彼はちぎれた封蝋と羽根ペンを指さしながら言いました。

「俺はお前らが好きだが、アラクチェーエフ の命令だ、先に前に出た者を斬るぞ❗️」

ニコーレンカはピエールを振り向きました、ところがピエールはもう居なくて、ピエールはーー父・アンドレイ公爵になっていました。

父は姿も形も持っていませんでしたが、確かにそこに居ました。

そして父を見ると、ニコーレンカは自分の愛の足りなさを感じました。

彼は全身の力が抜け、ぐにゃぐにゃなものになって行くのを覚えました。

父は彼を憐れみ、頭を撫でてくれましたが、だが、ニコライ・イリイチ叔父はいよいよ彼らの方へ迫って来ました。

 

ニコーレンカは恐怖に襲われて、はっと目が覚めました。

『お父様だ』と、彼は考えました。

『お父様が、僕と一緒に居て頭を撫でて下さった。お父様は僕を励まして下さった。ピエールおじさんを励まして下さった。お父様のおっしゃる事なら、どんな事でも僕はやるぞ。皆、僕が勉強する事を望んでいる。だから僕は勉強しよう。。だが、いつかは勉強など放ってしまう時が来る、その時こそ、僕はやって見せるぞ。ブルターク英雄伝の人々に起こったような事が、僕にも起こるように、それだけを神様にお願いしよう。。そして僕もああいう事をやるのだ。皆が僕を愛し、皆が僕に感激するようになるのだ。』

 

するとふいにニコーレンカは、涙が激しく胸から突き上げて来るのを感じて泣き出しました。

「どこか苦しいの❓」と、デサールの声が尋ねました。

「なんでも無いよ。」と、ニコーレンカは答えて、クッションの上に横になりました。

『優しい人だなあ。。デサールは。だが、ピエールおじさんは❗️おお、何という素晴らしい人だろう❗️ではお父様は❓お父様❗️そうだ、僕はお父様でさえ喜んで下さるような事を、きっとしてみせるぞ。。』    (完)

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(解説)

ああ。。こんな終わり方をするのか、というのが正直な感想です。

若いアンドレイ公爵が希望に燃えて『自分は英雄みたいにみんなに愛される存在になるのだ❗️』と、軍隊に入ったけれど、結局彼の夢は現実の前に木っ端微塵にされ、愛した女性から裏切られ、その傷をボグチャーロヴォに居ては癒えないと、再び戦場に赴き、結局は、つまんない見栄で命を落とした。。。

その人生の循環を、彼の息子、ニコーレンカも歩むのだろう。。という示唆的な終わり方のように思いました。

あたかも、また読者を第1巻に導くような感じさえしましたね。

 

ご覧の通り、最後は、アンドレイ公爵とリーザの息子のニコーレンカが、やっっぱり『英雄』を夢見る。。と言うのがラストです。

そしてね、ニコーレンカの目指す『英雄』は、全く民主化されていないロシアの民主化を率先して目指そう。。とする『ピエール』なのですね。

アンドレイ公爵の妹のマリヤ(=ニコライの妻)は、アンドレイ公爵の無鉄砲な所(『英雄』ナポレオンになろうと戦争に飛び出して行った)を熟知しているので、この子の人生が波乱万丈になるのではないか。。と苦悩するのですね。。

ニコーレンカの数奇な運命を予感させるような終わり方だったですね。。。そして、この第4巻からまた第1巻に戻る。。ニコーレンカは若いアンドレイ公爵となって登場して。。とストーリーがぐるぐる回っているような感じがしました。

 

人間は、生きていく為には希望を持つ事が大事です。

夢を希望を持って誰しもこの世に生を授かるのですね、そしてそれが全うできようがそうでなかろうが、いつかは、この世の全てが『神の意志』によって動かされているのに過ぎない事に気がつくのです。

実は、人はその『神の意志』に気付く為に、『生きる』を一生懸命する存在なんだろうと思います。

だから『生きる』を誰も邪魔してはならない、その人がこの世での役目を終えるまで、その人は生きなければならないのだから。。

そして『神の意志』に気付き、最後の一瞬でも神の意志に従って生き抜いたら、そこには素晴らしい『死』が待っているのだ、そこまで来て人は『死を恐れない』境地になれるのだ。。そういう事を言っているような気がしました。

(つまり。。アンドレイ公爵の人生は、ごく一般的な普通の人間が辿るような『普遍的な』運命だ、とでも言っているようにも思えますね、現代に置き換えても同じというか。。)

これで私のこの物語の考察は終わりです、長い間お付き合い頂きまして誠に有り難うございました。

 

※ブルターク英雄伝:英雄たちの行動を通じて、リーダーシップや正義、勇気といった倫理的なテーマが語られている。