戦争と平和 第3巻・第3部(6−2)エレン、カトリックの懺悔僧にピエールとの結婚の無効を訴えるも | 気ままな日常を綴っています。

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(物語)

この数日の間に、彼女の周囲や彼女の身に起こった事や、多くの聡明な人々から彼女に寄せられた関心や心遣いや、彼女が今包まれている白鳩のような清らかさなどーーこうした全てが彼女に満足を与えていました。

しかし、この満足に目が曇らされて、自分の目的を見失うような事は、彼女には絶対にあり得ませんでした。

そして常にある事ですが、騙しっこでは馬鹿な者の方が利口者の先手を取るもので、彼女は、こうした一切の美しい言葉や心遣いの目的が、主として、彼女をカトリックに改宗させてイエズス会の施設に金を出させる事に有る事は、ちゃんと見抜いていました。

 

それでエレンは、金を寄付する前に、彼女を夫から解放する為の必要な諸々の手続きを取ってくれる事を主張しました。

彼女の観念では、どんな宗教の意義も、人間が欲望を満たすに当たって、一定の体面を保つことしかありませんでした。

そして、彼女はある日、懺悔僧と話をしていた時、この目的を持って、彼女の結婚がどの程度まで彼女を束縛しているのか、という問題に対する答えを、執拗に求めました。

2人は室内の窓辺に座っていました、夕暮れでした。。窓から花の匂いが流れて来ていました。

しっかりした口元が見るからに気持ちの良い、美食の為に肌がツヤツヤした僧院長が、エレンのすぐ側に座り、その美しさに魅せられてとろけそうになった目で時々彼女の顔を見つめながら、2人の関心の的になっている自分の考えを述べていました。

 

エレンは、不安そうな微笑を浮かべながら、絶えず話が新しい方向を撮るのを心待ちにしていました。

ところが僧院長は、明らかにエレンの美しさに目を楽しませてはいましたが、それでも説教という自分の言葉の魔術にすっかり心を奪われていました。

 

良心の指導者の論法は次のようなものでした。

 ーーー

貴女は、自分の行為の意味もわからずに、ある男に結婚の神聖な誓いを与えた。

その男は結婚生活に入ったが、結婚の宗教的意義を信ぜずに、宗教侮蔑の罪を犯した。(※要するにエレンの言い分だと、ピエールがエレンを放ったらかした、愛してあげなかったということか❓)

この結婚は、結婚というものが持たねばならなかった二重の意義を持たなかった。

しかし、それにもかかわらず、貴女の誓いは貴女を束縛していた。

 

貴女はその男から離れた。

その事によってどんな過失を犯したのか❓許されるべき罪か、死に値する罪か❓

許されるべき罪である。

 

もし貴女が、今から子供を産む目的で新しい結婚生活に入るなら、貴女の罪は許されるはずである。

ところがここで、問題はまさに2つにわあkれる。

第1は。。

 ーーー

「でも、私はこう思うのですけれど。。」と、飽き飽きしていたエレンが、ふいに魅惑的な微笑を浮かべながら言いました。

「本当の宗教に入ったら(=カトリック教徒になったら)、嘘の宗教によって被せられたものに縛られなくてもいいのじゃないかしら❓。。」

『良心の監視者』は、コロンブスの卵のような単純明快さでこの命題を突き付けられて、唖然としてしまいました。

彼は、教え子の思いがけぬ感化の速さに喜びましたが、長年の知的労働によって築き上げた理論の拷問を否定する事は出来ませんでした。

「よく考えてみましょう。。伯爵夫人。」と、彼は微笑しながら言って、自分の懺悔者の判断を覆し始めるのでした。

ーーーーー

(解説)

カトリックへの改宗は、エレンにとって清々しいものではありましたが、世間ズレをしている彼女は、イエズス会が彼女の改宗を認めたのは、会の施設に金を出させる意図にある事は十分に承知していました。

それならば。。。と狡猾な彼女はイエズス会の弱み(❓)につけ込んで、なんとかして(ロシア正教の下で誓われた)ピエールとの結婚を無効に出来ないか。。と考える訳ですね。

 

それでエレンは、金を寄付する前に、彼女を夫から解放する為の必要な諸々の手続きを取ってくれる事を主張しました。

彼女にとって、宗教というものも社会的体面を保つ事は大事、もっといい男と結婚をするにも『自分が独身だ』という体面は大事だ、と考えている訳ですね。

 

彼女はある日、懺悔を受けていた懺悔僧に対し、今のピエールとの結婚がどんなに彼女を拘束し苦しめているか、という話をします。

そして彼女は、「本当の宗教に入ったら(=カトリック教徒になったら)、嘘の宗教によって被せられたものに縛られなくてもいいのじゃないかしら❓。。」と懺悔僧に率直に意見します。

ちょっとこの意見に驚いた僧侶は、このエレンの判断をなんとかして覆さねば。。と内心思うのでした。(当たり前ですな。)